2018年7月10日

RQG 戦闘ルール解説 (暫定版) 第1回 ラウンド進行

最新版 RuneQuest: Roleplaying in Gloratha (以下 RQG) の PDF版が発売になっており、近々印刷版も発売されると思います。もう遊んでいる人もいると思いますがルールブックに少し読み難い部分があるため悩んでいる人もいるかもしれません。

今回から 4回に分けてルーンクエストの戦闘ルールにつてまとめてみようかと思います。英語ルールを読み解くのに少しでも参考になれば幸いです。

[始めに] 暫定版

何で「暫定版」かというと、もちろん現時点で私が完全にルールを把握し切れていないというのが大きいのですが、ルールブック自体に曖昧な部分、説明が足りない部分、一貫性のない部分、特に同じ処理に対して複数の異なるルールが存在している所などがあって決定的な結論が出せない部分が多々あるからです。公式発表でも現在ルール改訂や FAQ 作成作業が行なわれているので、これから修正が入る部分もあるかと思います。

とりあえず、この暫定版では以下の基準でルールを選定してます。

  1. 作者がフォーラムなどの Q&A で解説したもの
  2. 他の部分とルールの整合性が高いもの
  3. ルールがよりシンプルなもの
  4. 上記が前部同じ程度なら RQ2 に近いもの

所々に [検討] と題した挿入があり、マウスを載せるとポップアップしますが、これは上記のようなルールの疑問点や不一致やがある部分のうち、特に混乱しそうな部分についての個人的なメモですので基本無視してもらって大丈夫です。ルールの解釈について考察したい場合やハウスルールについて検討したい場合には参考にしてください。

今回、第1回ではラウンド進行および行動順序についてのルールについて説明します。基本的に RQG のラウンド進行は RuneQusst 第二版(以下 RQ2) と全く一緒なので、以前に書いた記事を読んでもらっても良いのですが、整理を兼ねて再度説明します。

●接敵状態(engaged)

RQG の戦闘ルールを理解する上で最も重要な概念が接敵(engage)です。これは互いに近接武器による攻撃が届く範囲に近寄ることを意味します。相手の近接武器の間合いに入っている間は危険なため、相手の動向に常に注意を払う必要があるため、移動や行動が制限されます。この状態を「接敵状態(engaged)」といいます。

●フルターン(Full Turn)

何かスキルを使用したり、ダンジョン内を移動したりするのに使用する時間の単位で「5分」にあたります。ほとんどの戦闘は 1フルターン以内に完了します。

●戦闘ラウンド(Melee Round)

戦闘の際にはさらに細かい、「戦闘ラウンド」という時間単位を使用します。RQG の 1戦闘ラウンドは 12秒です。1フルターンは 25戦闘ラウンドに相当します。戦闘ラウンドの処理はフェイズごと、ストライク・ランクごとに順番に処理されますが、あくまで処理上であり実際には同時進行で行なわれていることに注意してください。

各戦闘ラウンドは以下の 4つのフェイズよりなっています。

  • 第1フェイズ 意図の宣言
  • 第2フェイズ 接敵していないキャラクターの移動
  • 第3フェイズ 近接戦闘、遠隔攻撃、呪文などの解決
  • 第4フェイズ 記録

1. 意図宣言フェイズ

プレイヤーとゲームマスターはそのラウンドに何をするかの意図を宣言します。基本的には行動宣言ですが、詳細な行動を宣言する必要はなく何をしようといているかの意図を明確にします。

例えば「女祭を守りたいので、彼女の前に移動し最初に接近して来た敵に対して剣で攻撃する」とか「魔術が怖いので、呪文を唱えようとしている敵がいればそいつを射撃する。いなければ弓を構えたまま待機」のような、直接の攻撃対象を指定していなくても、その意図が明確ならば大丈夫です。このラウンド中に意図に従って行動しているものとみなして対象が選ばれます。

2. 移動フェイズ

RQG の戦闘において接敵しているキャラクターは移動できません。接敵していないキャラクターは、行動の前、行動の後、行動と行動の間に自由に移動できます。そのうち行動の前の移動をこのフェイズに処理します。

RQG の戦闘では一般にヘックスやスクエアのよな詳細なマップ移動は使用せず、お互いのだいたいの距離を使って抽象的に処理します。そのため移動の順番のようなものは存在せず、全員が同時に移動します。

移動距離は種族ごとに移動速度によって決まります。人間の移動速度は 8 なので、1戦闘ラウンドに 8単位(1単位は3メートル)なので、最大で24メートル移動できます。移動の途中で接敵した場合には、それ以上移動できずそこで移動を終了しなければなりません。

この移動フェイズに最大移動距離の半分(人間なら12メートル)を超えて移動した場合には、次の解決フェイズで攻撃や呪文を行なうことができず防御のみしかできません。移動が半分以下の場合には攻撃や魔術の使用ができますが、移動した距離 1単位(3メートル)につき行動の SR に +1 されます。

3. 行動解決フェイズ

武器攻撃や呪文などの行動をストライク・ランクが小さい順に解決していきます。ストライク・ランクが同じ場合には DEX が大きい順に解決します。DEX も同じ場合には同時に解決します。

受け流し(パリィ)や回避などの防御行動はストライク・ランクに関係なく準備さえできていれば任意のタイミングで可能です。

4. 記録フェイズ

ラウンドの最後に、このラウンドにあった変化をキャラクターシートに記録します。この時点で全身 HP が 0 以下になっていれば死亡します。呪文の持続時間切れや毒の効果などラウンドごとの効果もこのタイミングで判定します。

●ストラインク・ランク(Strike Rank)

ストライク・ランク(SR)は 1 から 12 の値をとり、文字通り「打撃の順序」で誰が先に攻撃判定するかを決めるもので、他の RPG でいう「イニシアティブ」や「行動順」にあたります。

特に素早いキャラクターや魔術などの効果により、稀にストライク・ランクがゼロ以下になることがありますが、この場合はストライク・ランク 1 として処理します。

ルーンクエストのストライク・ランクは互いの有利/不利によって決まります。ストライク・ランクが小さいというのは「早い」ことではなく「有利」なことを意味します。早いと有利は多くの場合は同じようなものですが厳密には別物なので注意してください。ストライク・ランクは時間の単位ではなく 1SR が 1秒というわけでありません。

●ストライク・ランクの計算

以下の全てを足した値が戦闘におけるストライク・ランク(打撃順序)になります。近接攻撃ならば主に最初の 3つ「DEX」と「SIZ」と「武器の長さ」によってストライク・ランクが決まるので、武器ごとに合計をあらかじめ計算してキャラクターシートに記入しておきます。

1. DEX SR

素早さは最も重要な値です。多くの RPG で素早さ順で行動を解決するのと同じように、RQG でも DEX の影響が最も大きい仕組になっています。

DEXSR
19+0
16-181
13-152
9-123
6-84
1-55

2. SIZ SR

近接戦闘において身体が大きい(背が高い)方がリーチが長くて有利です。これを表現するために SIZ を基準に以下のような修正値が与えられます。遠隔攻撃や呪文は身体の大きさは関係ないため加算しません。

SIZSR
22++0
15-21+1
7-14+2
1-6+3

3. 武器の長さ

近接戦闘では相手より長い武器を持つ側は有利です。これを表現するために武器の長さの修正が与えられます。拳などの身体武器は長さ 0m とみなすため SR +4 になります。逆に弓などの遠隔武器や呪文は近接武器に比べて十分に射程が長いため SR は 0 とみなし加算しません。

武器の長さSR
2.0m++0
1.5-1.9m+1
1.0-1.4m+2
0.5-0.9m+3
0.0-0.4m+4

4. 呪文の消費 MP

強力な呪文を使用する場合、エネルギーを集めるのに時間がかかるので、その分だけ不利になります。使用するマジック・ポイント(MP)の値が SR に加算されます。これは精霊呪文とルーン呪文には当てはまりますが、魔道呪文はさらに時間がかかるため個別のルールを参照してください。

MPSR
1+1
2+2
3+3
4+4
5+5
[検討] 消費MPによるSR

RQG の消費 MP によるストライク・ランクには曖昧さが残っています。過去の RQ2 では最初の 1ポイントは SR に加算されず、2ポイント目以降 1 SR づつ加算される仕組みでした。一方で RQ3 では最初の 1ポイントから全て加算される仕組みでした。

RPG はというと p.193 にある表では RQ3 と同じになっていますし、p.254 の精霊呪文の SR 計算式でも消費 MP をそのまま全て加算していて RQ3 方式です。ところが p.194 本文の説明では「複数ポイント呪文には時間が必要です」とか「マジックポイントの最初の 1ポイントには SR 修正がないことを覚えておくこと」と RQ2 方式であるとを補足していて、ルールが一貫していません。

どちらでも問題ないのですが、この解説ではシンプルな方の RQ3 方式としておきました。

5. 不意打ち

敵から至近距離で不意打ちを受けた場合、その不利を表現するために、以下の修正が SR に加算されます。

不意打ちの距離SR
3メートル以内+3
10メートル以内+1
10メートル超え+0

6. 武器や呪文の準備

武器の準備ができていなかったり、攻撃の前に新しい武器に持ち変えたり、新たな矢を弓に番えたりしたりする場合には、準備 1つにつき SR に +5 を加算します。

剣を落として斧を抜くならば 1行動ですが、剣を鞘に納めて斧を抜くとか、剣と盾を準備するなどの場合には 2行動とみなして SR に +10 されます。

同様に呪文の準備にも 5 SR かかります。準備が必要かどうかも含めて詳細は魔術の種類ごとに異なるので、各魔術の説明を参照ください。

7. 移動

二人が互いに近接戦闘を行なっている場合には移動による SR 修正は必要ありません。最初から接敵していた場合にはそもそも移動できませんし、このラウンドに接敵した場合には、どちらから近づいたかは有利不利には関係ないからです。

それ以外の場合(二人が戦っている所に三人目以降として参加する場合や、敵味方どちらかが呪文や射撃をする場合など)は、1単位(3メートル)の移動につき、その後の行動のストライク・ランクが +1 されます。これには移動フェイズにおける移動の分も含まれます。

8. 同時準備

ゲームマスターの許可があれば、一部の準備や移動は並行して実行することができます。例えば移動しながら剣を抜くとか、ベルトから左右の両手に一本づつダガーを抜くとかです。この場合は二つ行動のうち時間がかかる方のみを SR に加算します。ただし盾のように準備に手間のかかる行動は同時に実行することはできず、盾と剣を並行して準備することはできません。

●ストライク・ランクの上限

ストライク・ランクは最大で 12 です。12を超えるような行動および行動の組み合わせは実行できません。ストライク・ランクは時間ではないので部分的に実行して、残りを次のラウンドに持ち越すようなこともできません。

このルールの唯一の例外が呪文の使用です。呪文の準備と詠唱に専念している場合に限り、行動の残りを次のラウンドに持ち越すことができます。例えば準備と詠唱に合計で 27 SR かかる呪文は、3ラウンドの間呪文に専念する必要があり、3ラウンド目の SR 3 に判定します。複数ラウンドかかる呪文を実行している間は、他には防御しか実行できません。

●複数行動(Multiple Action)

各キャラクターは 1ラウンドに複数の行動ができますが、どのような行動が可能かは接敵状態によって異なります。

接敵している場合

接敵しているキャラクターはラウンドの最初から最後まで、武器を振るったり防御を行なったりしているとみなされ、原則として近接攻撃と防御しか実行できません。望むならば近接攻撃のかわりに呪文を選択できますが、近接攻撃と呪文の使用を同じ戦闘ラウンドに行なうことはできません。

近接攻撃は原則 1回ですが、左右に別々の武器を持っている場合には、SR の条件さえ満たしていれば両方で攻撃できます(2回攻撃したうえで複数回の防御が実行できます)。また武器スキルが 100% 以上の場合は攻撃の分割が可能になります。第4回の「攻撃の分割」を参照してください。

RQ2/RQ3 と違って防御は 1ラウンドに何度でも実行できます。事前に宣言しておく必要は無く、打撃を受けるごとに、その場で受け流し(パリィ)をするか、回避をするかを選択できます。また複数の武器や盾を持っている場合はどの武器を使って受け流しをするかについてもその場で選択できます。同じ打撃に対して受け流しと回避を同時に実行することはできません。1ラウンドに複数回の防御をする場合には、2回目の防御には -20%、3回目の防御には -40%, 4回目の防御には -60% という具合に -20% づつの累積ペナルティが課されます。このペナルティは防御手段によらず一律に増加します。

[検討] 複数の武器の使用

持っている武器の数だけ攻撃できるというルールと、防御に使う武器はその場で選択できるというルールは、過去の RQ2/RQ3 とは大きく異なっており。ルールブックの記述とも一部で矛盾していて、もにょもにょするのですが、作者の一人である Jason Durall 氏がフォーラムで上記のように解説しています。その上でルールブックが一部間違っており、矛盾する部分については今後の改訂および FAQ で対応予定だそうです。同じく Jason Duall 氏が作者である金本こと Basic Roleplaying 2008年版で似たようなルールになっていましたので、その影響が強いものと思われます。

接敵しなていない場合

接敵していないキャラクターはストライク・ランクの範囲内で、「遠隔攻撃」「呪文」「移動」などの行動を自由に組み合わせて実行できます。これらの行動の順番は自由に選べます。ラウンド内に納まれば射撃を複数回実行することも可能です。ただし呪文は 1戦闘ラウンドに一回だけしか実行できません。

またこれらの行動と合わせて任意に防御を実行できます、複数回の防御を行なう場合には同じく累積ペナルティが適用されます。ジャベリン(投げ槍)のような投擲武器に対してはその攻撃に気付いていれば普通に受け流しや回避ができますが、矢やスリング弾のような射出武器を受け流すことはできず、回避するためには他の行動をせずにそのラウンド回避に専念する必要があります。遠隔武器に対しては受け流しのかわりに盾を構えて身体の一部を防御する方法があります。

[検討] 呪文の回数

RQ2 では呪文は 1戦闘ラウンドに 1回だけという制限があり、複数回の精霊呪文を使用するためには Multispell(多重呪文)というルーン呪文が必要でした。一方で RQ3 では 1ラウンドに複数の呪文を使用でき Multispell 呪文は存在していませんでした。

RQG はというとルーン呪文の記載には「ルーン呪文を使用したラウンドには精霊呪文も魔道呪文もルーン呪文も使用できない」というルールが明記さており、魔道呪文はそもそも使用に 2ラウンド以上かかるので最初から 1回しか使えないのは明らかなのですが、精霊呪文については 1回しか使用できないというルールも、複数回使用できるというルールも明記されいません。

RQG にも Multispell 呪文が存在していることから、RQ2 と同じく各ラウンドに精霊呪文は 1回しか使用できないが Multispell を使用した場合のみ複数回使用できるという風に解釈しましたが、精霊呪文どうしの場合に限り準備も含めて 12 SR 内に納まれば 1ラウンドに複数回使用できるという解釈もありえます。

ラウンドの途中に接敵した場合

接敵前は自由に行動できますが、接敵したい時点でそれ以上移動できなくなり、接敵中のルールに切り替わります。接敵前に何をしていたかによらず接敵したストライク・ランク以降は近接攻撃と呪文のどちらか片方しか実行できなくなります。

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第1回は以上です。次回は攻撃、受け流し、回避について説明します。

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