2014年6月10日

HeroQuest紹介(4) - キャラクター作成

●ルールではない?
第4回です。 さっそく HeroQuest Core Rule の紹介に入りたいと思います。 と言いながらどうかと思いますが最初に一番大事な点として、 これはルールではないという話をします。 HeroQuest Core Rule はルールではありません。

普通のゲームならばルール(規則)を無視するとゲームとしての公平性が失われます。 もしシミュレーションならばシステムを無視して気ままな介入をしていては、 せっかくの実験が台無しになってしまいます。 しかし、 この HeroQuest はナラティブを目的としているので本質的な意味で規則は必要ないのです。  HeroQuest Core Rule では名前に反して 「これはルール(規則)ではなくツールキット(工具箱)」 であると本の最初に書いてあります。

あくまで工具なので必要な時に必要なものだけ取り出して使えば良く、 目的に合わなければ使う必要がないわです。 ご都合主義で勝手に変更してしまっても、 新しいツールを勝手に創り出してもかまわないということです。


●準備するもの
基本的に他の TRPG と準備するものは変りません。 ルールブック以外には筆記具とメモ用紙を準備し、 キャラクターシートをプレイヤーの人数分印刷(またはコピー)しておいてください。 その他にもちろんダイスが必要です。 ダイスは一人につき20面ダイスが1個づつあれば十分です。 他の種類のダイスは使いません。

あとは必須ではないですがポーカーチップのようなカウンターとして使えるものがあると便利です。 敵と味方用に二色(赤と緑とか)のチップがそれなりの枚数あると状況が一目でわかって楽です。 なければメモ用紙か何かに書きとめるだけなので、 ないならないで困ることはないのですが、

他の RPG と違ってミニチュア・フィギュアとかその辺はゲーム上は特に必要ありません。 フレイバー/飾りとして準備しておけば盛り上がるかもしれません。 情報共有用にホワイトボードとかも勧めです。


●ナレーター
HeroQuest ではゲームマスター(GM)のことをナレーター(narrator)と呼びます。 通常の RPG ならばゲームマスターは審判として絶対的な権限を持っていますが HeroQuest においてはナレーターは議論がもめた時や結論が出ない時に裁定を行う司会者もしくは議長のような立ち場になります。基本話し合いで決めていき、 各PCの行動はその担当のプレイヤーが、 それ以外の全てはナレーターが最終決定権を持つことになります。

普通のRPGのゲームマスターには審判役以外にも、 世界や設定を準備し、 敵や物語を準備して参加者に提供し、 ゲームバランスを取るなどホスト役として多くのことが求められていましたが、HeroQuest では物語を考えたり、 世界を詳細化したり、 バランスを取ったりする作業はプレイヤー側にも移譲されておりナレーター単独の仕事ではなくなっています。 ナレーターの仕事はゲーム(物語の進行)が破綻したり停滞したりしないようにする調整役に近いものです。

●キャラクター作成のコツ
具体的なキャラクター作成に入る前に、 ナラティブRPGのキャラクター作成のコツについて伝えたいと思います(といっても私もまだまだなので、 あまり鵜呑みにせずに色々試してみてください)。

普通のRPGでのキャラクター作成の際にはいかに強いキャラクターを作るかとか、 制限の中で色々なことができる効率的なキャラクターにするかとか、 キャラクターの来歴を詳細に決めるかといった点を重視しているかと思います。

ナラティブRPGでキャラクターを作成する際には重視するべきは主人公を創るという点で す。 当たり前の話だと思うかもしれませんが知らず知らずに脇役を作ってしまう人が少なからずいるようです。 脇役はNPCでいくらでも補えますので脇役を創らないでください。

主人公に最も必要なのは強いことではなく読者/視聴者の共感を得ることです。 完璧なキ ャラクターでは駄目で人間味がなければなりません。 かといって無能も問題で時々は活躍してその不可欠性を示さなければなりません。 物語を進めるためには冷めた人物より情熱や信念を持った人物が好ましいです。 皮肉だったり無関心だったりといったキャラクターは創らないでくさい。 そういうのは脇役の属性です。 皮肉ぶってるだけとか無関心なふりをしている程度なら問題ありませんが、 主人公の役目は人々の輪の中に入って視聴者と一緒に怒ったり喜んだりすることだと心得ておいてください。

ゲーム効率や詳細設定には気を配る必要はありませんと説明すると、 ゲーム的な RPG に馴れた人の中には作成の手掛りが無くなって困ってしまう人がいます。 そのような場合には、あまり難しく考えずに映画の脚本家になったつもりで映画の主人公の簡易設定を作るような感じで進めてみてください。 物語が進行してから明かされるような詳細設定は必要なく、 最初から小説やコミックの登場人物紹介や映画のパンフレットに書いてあるような初期設定だけを作る感じです。 色々な方面で活躍し過ぎないように注意するくらいで丁度良いです。

他の参加者からそのキャラクターの活躍場面がイメージできるとか、 その冒険を見てみたいと思わせるのが最高のキャラクターです。 馴れないと難しい部分もあるかもしれませんが、 義務ではなく遊びですのでその試行錯誤を楽しんでください。 キャラクター作成もゲームの一部ですので楽しむことが最も重要です。


●キャラクター作成手順
それではキャラクター作成に入りましょう。 具体的なキャラクター作成手順はだいたい以下のよう流れになっています。
  1. 物語のパラメータを学ぶ
  2. キャラクターのコンセプトを決める
  3. 名前をつける
  4. 外見を説明する
  5. 物語フックを加える
  6. アビリティを選択する
  7. アビリティに数値を配分する
以下順次説明していきます。


●作成手順1. 物語のパラメータを学ぶ
キャラクターを作成する前に物語のパラメータ(Parameter:要素)がナレーターから伝えられます。パラメーターには以下のようなものがあります。

ジャンル(Genre:分野): 今から遊ぶ物語のジャンルを宣言します。 SFなのか、 ファンタジーなのか、 ホラーなのか、 歴史物なのか、 現代スパイ物なのかなどの物語の種類です。 場合によって18世紀のロンドンでSFを遊ぶとか、 未来のサイバーパンク社会でゾンビホラーを遊ぶなどの混合ジャンルのこともあるかもしれません。

セッティング(Setting:背景): 物語の舞台なとなる場所を説明します。 現代の都市なのか、 未来の別惑星なのか、 国や地域はどこかなど、 オリジナルのファンタジー世界などプレイヤーに馴染みのない場所の場合には少し詳しい説明が行われるでしょう。

モード(Mode:話法): 話の種類を決めます。 英雄物語なのか、 パロディなのか、 年代記なのか、悪漢物なのか、 サバイバルなのか、 コメディなのか、 などなどです。 馴れてきたら複数のモードの組み合わせや、 話の途中でモードが変化していくなどの変則的な遊び方もできます。

プレミス(Premise:前提): PCたちに共通の条件や目標を指定します。 特定の部族出身のキャラクターで遊ぶだとか、 特定の組織に復讐しようとしているキャラクターだとか、 オーガは禁止だとかを指定します。 これがPC作成の前提条件になります。 最初から詳細に決まっているというより実際はナレーターとプレイヤーで話し合って細かい前提を調整します。


●作成手順2. コンセプト
どんな物語を展開するかわかった所で、 プレイヤーキャラクターを作成します。 まずは今回作成しようとするキャラクターのコンセプト(Concept:着想)を決めてください。 ここで言うコンセプトというのはそのキャラクターを短い2, 3単語のフレーズで表したものと思ってください。

といっても難しく考える必要はありません。 他の RPG ならば種族と職業を決めたり、 テンプレートから選んだりする作業に似ています。 馴れなていない最初は 「性格を示す形容詞+専門分野」 として作成することが推奨されています。 例えば 「寡黙な暗殺者」 とか 「怠惰な元傭兵」 のようなステレオタイプでも良いですし、 「高貴な盗賊」 とか 「好色な老執事」 などチョット変った面白そうなものを考てみるのも良いでしょう。


●作成手順3. 名前
名前は大事です。 この時点で名前を決めてください。 その舞台での適切な名前が良くわからない場合にはナレーターや他のプレイヤーに相談しましょう。 名前を決める際には物語の舞台だけでなく、 そのキャラクターのコンセプトや物語のモード(話法)に対して適切なものになるよう努力してください。 本名ではなくてあだ名やコードネームなどでも構いません。


●作成手順4. 外見
キャラクターの外見を決めてください。 といっても詳細に決定する必要はなくて、 他の人とは違う最も目立つ特徴を幾つか挙げれば十分でしょう。 映画やドラマの主人公たちは視聴者の目を引くために際だった特徴を持っているものです。 人混みでそのキャラクターを探す時に何を手掛りに探すのかとかを考えてみてください。

もちろん絵心があるならばキャラクターのイラストを書いても良いですし、 ネットや雑誌から挿絵や写真を探してキャラクターの説明に使うこともできます。


●作成手順5. 物語フック
次に物語フック(Narrative Hooks)を決めます。 RPG のキャラクターたちばトラブルや危険な冒険に身を投じますが、 普通の物語の主役たちの多くは危険を遠ざけようとし、 自ら進んでトラブルに近寄ることはありません。 しかし主人公たちは望むと望まないとにかかわらず危険を冒さざるを得ない事情を抱えているのものです。

このような事情を物語フックと言います。 そのキャラクターは通常の方法では達成することが困難な大きな望みを持っているのかもしれませんし、 自分の生活や大事な人を守るために戦わなくてはならない事情があるのかもしれません。 個人としてではなくそのキャラクターの所属する組織/集団が既に危険に巻き込まれているかもしれません。 他人の問題を見過ごせない勇敢なキャラクターなのかもしれません。

そのキャラクターの持っている問題を考えて、 ナレーターと相談してより舞台や設定に合った物語フックとなるよう修正してください。 それがキャラクターが危険に立ち向う動機にもなります。


《続く》
キャラクター作成の途中ですが、 次のアビリティの説明は少し長くなりそうなので、 一旦ここで切りたいと思います。

3 件のコメント:

  1. シナリオやハンドアウトを自分たちで考えるようなゲームなのですね。かなり時間がかかりそうです。そういうのを考えるのが楽しい人たち・・・ってそもそもそんな人じゃないと、この手のゲームはやらないか。

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    1. シナリオの大枠はGMが準備するのだけど、詳細や展開は自分たちで考えて行く感じです。かかる時間はさまざまですが戦闘とかにはあまり時間をかけない分で時間配分は取りやすいです。

      感覚的ですが前の版のHeroQuestやHeroWarsはシステム的に時間配分し難かったのだけど、この版で非常に遊びやすくなりました。

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    2. 大枠をGMが考えて、詳細や展開は自分たち・・・Aの魔法陣の第二版がそんな感じでしたな・・・

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