●ルーン魔術の基本的な仕組み
基本魔術(戦闘魔術)は個人の知識と精神力を使って世界を変容させるのに対して、ルーン魔術(Rune Magic)では神々の助けを借りることにより、個人の限界を超えるルーン(Rune)の深淵な秘密に基いた魔術を行使できます。システム的にも原理的にも RQ3 の神性呪文(Divine Magic)とほぼ同じですが、ルーンクエストというゲームのタイトルに関連した「ルーン魔術」という格好良い名前にで呼ばれています。
●ルーン(Rune)
グローランサ(Glorantha)においてルーン(Rune)は単なる文字や記号ではなく大きなパワーを内在しており、世界や神々と深いつながり持つとされており、グローランサにおけるお馴染の主要ルーン(major rune)が紹介されています。RQ2 では主要なルーンを以下の四種類に分類しています。元素(Elemet)のルーン
形態(Form)のルーン
状態(Condition)のルーン
力(Power)のルーン
Guide to Glorantha に記載されている新しい主要ルーンの分類とと比較すると「幸運」と「宿命」が力(Power)のルーンに含まれている点が大きな違いでしょうか。「月」がエレメントのルーンに明示的に含まれている点にも注目です。
「光」「法」「交易」「竜」「不死」「力」「永遠の戦い」などのルーンなどはこの時点では存在していませんでした。RQ2 ではランカー・マイは「法」のかわりに「静止」のルーンを持っており、イェルマリオは「光」ではなく「火」のルーンを持っていました。「交易」のルーンは Cult of Prax で追加されイサリーズ専用で「イサリーズ」のルーンと呼ばれていました。
●ルーン呪文の獲得
ルーンカルトの司祭は神殿において儀式を行って神からルーン呪文を受け取ることができます。獲得には神に呪文のポイントに等しい POW を永久的に支払う必要があります。支払いは POW のみで金銭を支払う必要はありません。ルーン呪文を保持できる数には上限はありません。ルーンカルトの入信者もカルト・ミッションに向う場合や、長年評判の良い入信者であった場合の報酬としてルーン呪文を取得する許可をもらえる場合がありますが、司祭と違って呪文は一回限りとなり再使用できません。また元から再使用不可(Non-Reusable)と指定された呪文の取得は入信者には許可されません。
●ルーン呪文の使用
ルーン呪文はその呪文のキーワードを叫ぶか心に思い浮べるだけでも発動できます。そのため戦闘ラウンド中に使用する場合 は術者の DEX 等にかかわらず必ず SR 1 で使用することができます。呪文に必要な POW は事前に支払っているため使用する際に POW の消費はありませんが、呪文を強化して《抵抗魔術(Countermagic)》などを突破しやすくするために任意で一時的な POW の消費を追加することはできます。その場合はその分だけ投射のタイミングが遅くなります。ルーン呪文は戦闘呪文(Battle Magic)と同じく相手が抵抗しない場合には 95% で成功します。相手が抵抗する場合には一般に POW どうしで対抗ロールを行ないますが、呪文によっては抵抗されても一定の効果があるものもあります。ルーン呪文の投射はポイントごとに一回のみで、一度使用したルーン呪文は神殿に戻って再獲得するまでは再度使用ることはできません。
呪文は 1ラウンドに 1回までの制限があるためルーン呪文を使用したラウンドには他のルーン呪文や戦闘呪文を投射することはできません。《延長(Exrtension)》呪文のみ例外です。
★ランタスの冒険
ランタスはカイガー・リートールのトロウル女祭ギージャへ贈物を届ける仕事を引き受けましたが、トロウルのことをよく知らなかったため、彼女の前で恐るべき無礼を働いてしまいました。女祭はこの無知な若者を懲らしめるためにルーン呪文を使うことにしました。
ランタスは誤ちに気付いてあわてて謝ろうとしますが、ルーン呪文はあっという間に発動します。女祭の POW は 18、ランラスの POW は 14 なので成功率は 70% です。レフリーのダイス目は 22、呪文は難無く成功し、ランタスの目は全く見えなくなってしまいました。彼女の使用した呪文は《盲目(Blinding》だったのです。
幸いにも女祭の機嫌はそこまで悪くなく、そのまま 15分間で呪文の効果が切れて視覚は戻りましたが、ランタスは今後はトロウル女祭の前では行動に気をつけようと心に誓うのでした。
●ルーン呪文の再獲得
司祭(Priest)階級以上であれば一度使用したルーン魔術の呪文を POW を支払わずに再度入手することができます。再獲得のためにはカルトの神殿や聖地で呪文のポイントごとに 1日間瞑想しなければなりません。《神性介入(Divine Intervention)》や《マトリクス作成(Matrix Creation)》のような再使用不可(Non-Reusable)と指定された一部の呪文は再獲得できず、獲得には再度永久的な POW を支払う必要があります。入信者はルーン呪文の再獲得はできずルーン呪文を獲得するためには再度 POWを永久的に支払う必要があります。
●ルーン呪文のスタック
戦闘呪文は重ねがけしても効果は増しませんが、「スタック可能(stackable)」と記載されたルーン呪文は複数の呪文を重ねることにより効果を増加させることができます。持続時間のある呪文ならば既存の呪文に後からでも同じ呪文を重ねがけして強化することもできます。例えば《盾(Shield) 2》を使用中の対象に《盾 1》を重ねがけすると 《盾 3》と同じ効果になります。ただし一部のルーン呪文(主に戦闘系の呪文)は最大で 4ポイントまでしかスタックできません。●ルーン魔術の持続時間
ルーン魔術の持続時間は特に指定がなければ 15分(75ラウンド)です。これは戦闘魔術の 7.5倍にあたります。もちろん呪文によっては瞬間のものや永遠のものや特殊な持続時間を持つものもあります。●ルーン呪文の到達距離
ルーン呪文の到達距離は特に指定されていない限り 160メートルです。これは一般的な戦闘呪文の 2倍にあたります。もちろん呪文によっては接触が必要な
ものや特殊な距離を持つものなどもあります。
●エレメンタル(Elemental)
エレメント(元素)系のルーンカルトでは《エレメンタル召喚(Summon Elemental)》というエレンタルを召喚する強力なルーン呪文を持っています。この呪文は召喚するエレメンタルの種類ごとに《シルフ召喚》、《シェイド召喚》、《サラマンダー召喚》などのように分かれています。さらに 1ポイント、2ポイント、3ポイント呪文の種別があり、それぞれ小、中、大のエレメタルを召喚することができます。この呪文は基本的に再使用可で、使用する度に同じエレメンタルを召喚しますが、エレメンタルの POW がゼロになって消滅した場合に再使用不可になます。新しいエレメンタルを召喚するためには POWを支払って新しい呪文を取得しなおす必要があります。
エレメンタルは物質的な性質と精霊的な性質の両方を持つ生物とされており、召喚者の念話(mindspeech)による命令に従います。ただし INT は 1D6 しかないので複雑な命令を出すことはできず、敵味方かまわず接触した者を自動的に攻撃します。エレメンタルには以下のような種類があり、それぞれ独特の攻撃を持っていますが、いずれも強力なので注意が必要です。
シェイド(Shade)
闇のエレメンタルです。闇の塊の中に立つマントを着た人のような姿をしています。攻撃に成功すると闇で包んで対象の CON とシェイドの POW で対抗ロールを行ない勝利した場合には恐怖を与えます。対象は運が悪いと死んだり昏倒したりします。そうでなくても恐怖で逃走します。シルフ(Sylphs)
風のエレメンタルです。シルフは包んだ対象と STR対STR で抵抗ロールして成功すれば自分の身長まで持ち上げて落とすことにより落下ダメージを与えることができます(落下ダメージに鎧は有効です)。また抵抗しない相手を連れて空を飛ぶことができます。サラマンダー(Salamander)
火のエレメンタルです。サラマンダーは熱により包み込んだ対象の CON を直接攻撃して減少させます。毒に抵抗する時のように CON でダメージに対抗できれば半分で済みます。このダメージに鎧は無効ですし、CON ダメージは《治癒(Healing)》呪文では治せません。ウンディーネ(Undine)
水のエレメンタルです。包み込んだ対象を溺れさせ、対象は毎ラウンド INT×5に失敗すると HP にダメージを受けます。抜け出すには INT×5 と DEX×5 の両方に成功すると必要があります。ノーム(Gnome)
大地のエレメンタルです。普段は地中に潜っており対象が上に乗ると深さ 1メートルの落とし穴を開いて対象を落として、すぐに穴を閉じることにより両脚に大ダメージを与えます。片脚ならまだしも両脚なので即死もありえます(鎧は有効なので脚に鎧をつけましょう)。★ランタスの冒険
ランタスが冒険者の大先輩で冒険神オーランスの司祭であるオーランドと森を旅をしていた時のこと、ミノタウルスの盗賊に遭遇します。ランタスは剣を抜いてたち向かおうとしますが、相手のグレートアクスのダメージは 4D6+2 でランタスを一撃で殺してしまうかもしれません。
危ういと見た司祭オーランドは奥の手である《シルフ召喚(Summon Sylph) 3》を使用して大型シルフの召喚を行なうことにしました。抵抗はないので成功率は95% で難なく成功します。
この大型シルフの STR 32 で、ミノタウルスの STR 25 と対抗ロールを行ない成功すればシルフの身長9メートルまでミノタウルスを持ち上げて地面へ落下させることにより 5D6 のダメージを与えることができます。さすがのミノタウルスもこの攻撃には長く耐えることはできないでしょう。
●標準ルーン呪文の例
ルーン呪文はルーンカルトごとに独特のものを提供していますが、一部のルーン呪文は多くのカルトに共通で使用されています。このような呪文を標準ルーン呪文(Standard Rune Spell)と言います。ここではこの標準ルーン呪文のうち RQ3 では登場しないものや効果が大きく違うものについて簡単に説明します。《潜伏(Concealment)》
この 2ポイント呪文は戦闘呪文の《透明(Invisibility)》と《静寂(Silence)》の両方の効果をもち目にも見えず音にも聞こえなくなります。また《透明》と違って受動呪文扱いなのでダメージ等を受けても切れません。自分から攻撃したり呪文を使用した場合には攻撃や呪文を使っているラウンドだけ姿を現わしますが、次のラウンドにまた消えることができます。
《霊体化(Discorporation)》
肉体から抜け出して精霊(Spirit)として活動できてます。精霊状態の間も戦闘呪文を使用することができ、精霊戦闘をしかけることもできます。通常は肉体の近くから離れられませんが、呪文を 1ポイントスタックすることに 5km まで離れることができるようになります。残さられた肉体は昏睡状態になり無防備となるので注意が必要です(肉体が破壊されると肉体の戻れなくなります)。
《エレメルンタル退散(Dismiss Elemental)》
文字どおりエレメンタルを退散させます。この呪文には 1ポイント、2ポイント、3ポイントの三種類の呪文があり、それぞれ小、中、大のエレメンタルまで退散できます。退散するには POW 対抗ロールでエレメンタルに勝利する必要があります。
《神性介入(Divine Intervention)》
司祭用の特別な呪文で 1ポイントスタックするごとに 10% の確率で神性介入を求めることができます。もちろん再使用不可で取得するには再度 POW を支払う必要があります。神性介入に失敗した場合には呪文は消費されず、そのまま再使用できますが、同じ内容の神性介入を続けて試みることはできません。
《延長(Extension)》
RQ3 にも同名の呪文がありますが少し効果が違います。この呪文には 1ポイント、2ポイント、3ポイントの三種類があります。1ポイントの呪文は持続中の戦闘呪文 1つの持続時間を 1時間に延ばすことができます。2ポイントの呪文は戦闘呪文を 6時間に延ばすか、ルーン呪文の持続時間を 1時間に延ばすことができます。3ポイントの呪文は強力で戦闘呪文の持続時間を1週間に延ばすか、ルーン呪文の持続時間を6時間に延ばすことができます。
《マトリック作成(Matrix Creation)》
RQ3 の Spell Matrix Enchantment (HJ訳の呪文封印呪付)にあたる呪文です。込めることができるのは戦闘呪文だけで、スタックしたポイント分までの戦闘呪文を込めたマトリック(魔方陣)を物体に刻むことができます。この呪文は再使用不可で呪文の POW が消費されるため RQ3 のような追加の POW は必要ありません。
《数多の呪文(Multispell)》
1ラウンドに呪文は1回までという制限を超えて持続時間(15分)中は戦闘魔術を同時に複数使用できるようになります。この呪文には1ポイント、2ポイント、3ポイントの三種類が存在し、それぞれ2個、3個、4個まで戦闘呪文を同時に使用できます。同時に使用する呪文の種類や対象はバラバラでも構いません。それぞれの呪文に一時的な POW 消費は必要ですが、呪文は同時詠唱できるので単独で使用したのと同じ SR にそれぞれ発動します。
《呪文伝授(Spell Teaching)
この呪文により自分の知っている戦闘呪文を他人に教えることができます。呪文を教えるには一週間かかり、その間は生徒と特殊な精神結合(Mind Link)状態にあります。。呪文伝授はカルトの主な収入原なので呪文を教える際には必ず料金を取ってカルトに収めなければなりません。
《視界(Vision)》
この 2ポイント呪文の対象者は自分の視界を最大で 240メートル離れた場所に設定することができます。その位置から 180度の視界を持つことができます。視界は 1ラウンドに3メートルづつゆっくりと移動させたり、180度向きを変えることができます。
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今回はルーン呪文のルールについて説明しました。ルーン呪文は今回紹介したような標準呪文ではなく、カルトごとの独特の呪文が楽しいので是非カルト本を読んでみてください。次回はルーンカルトの位階について書きたいと思います。
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