2016年6月29日

RuneQuest Classic Edition 到着

RuneQuest Classic Edition (ルーンクエスト第2版の再販版)が、続々と日本にも到着しているようです。私の所にも到着しましたので簡単に紹介します。


世界中から入手方向が上がっていて羨しく思っていたのですが、ようやく私のところにも RuneQuest Classic 版が到着しました。昨年末に kickstarter で募集してから半年で到着なので kickstarter としては例外的に早いのですが 3月頃には入手可能との期待もあったためかなり待たされた気分です。

輸送用の箱詰めは以下のようにダンボール箱が二重になっていてとても頑丈で痛み難いようになっていました。私は全部入りを頼んだのですが今回は一般的なもののセットが届いたようです。

 


まずはハードカーバー版とGMスクリーンとプレイヤーハンド冊子のセットです。


ハードカーバー版はかなりしっかりした製本で実用的なつくりですが、GMスクリーン(黄色)は昔の復刻を優先したらしく、かなりペラペラの紙なので実用にするにはちょっと物足りない感じ。


次はハードカーバー(皮革風表紙、ダストジャケット付き)版、GMスクリーン、プレイヤー冊子のセットです。写真は中身がわかりやすい用にダストジャケットを外したところです。GMスクリーンは色違いですね。


中身的には同じものなのですが、ハードカバー(通常)版は少し安くて実用的、ハードカバー(合皮)版はちょっと高くて格好良いです(見せびらかすのに最適?)。
(もっとも最近は iPad Pro に入れたPDF版が一番実用的という話しがありますが)


そして、これらが Old School Source Pack の5冊です。


一番下にあるのはRuneQuest最初のシナリオ本(単純なダンジョンもの)、赤青橙はモンスターなどの能力値を振っただけの本(意外と実用的)の復刻ですが、一番上の緑色、The Sea Cave は新作、といっても当時作成中だったシナリオで未発売だったものを発掘したものです。ダンジョン・シナリオですが未完成のままで前半しかありません。いずれもコレクターアイテムですかね。


新版と旧版のハードカバー版を比較してみました。さすがに30年以上の差は一目瞭然ですね。


今回の Classic 版は単純な再販ではなくエラッタ適用済みの再編集版です。グローランサ的な意味での新情報はほぼないのですが、年表だけは 1613年から 1627年のアーグラス戴冠にまで進んでいます。


写真わかり難いかな? クリックして拡大して見てください。
それではまた

2016年6月22日

RQ2 紹介 - 最終回 精霊とシャーマン

今回でRQ2紹介の連載記事も最終回です。最後は精霊とシャーマンのルールについて説明します。


●生命と精霊

グローランサにおいて生命は「肉体(Body)」と「精霊(Spirit)」より構成されているとされています。この「肉体」と「精霊」が切り離された状態が死とされます。この離れた精霊に肉体に戻るよう説得するのが《蘇生》魔術だったりします。

精霊が切り離されたの肉体はただの物質に戻るのでやがて腐っていきます。何らかの魔術により精霊が離れたにもかかわらず活動を停止せず動き続けている肉体が「アンデッド(Undead)」です。

一方で肉体を離れた精霊は地界へと引きよせられて死後の世界へと旅立って行きます。この死者の精霊が地界へ行かず強い感情や魔術などによってこの世に留まり続けているのが「幽霊(Ghost)」です。そういう意味でグローランサでは幽霊(Ghost)は精霊の一種でありアンデッドではありません。それで幽霊は《精霊探知》に反応しますが《アンデッド探知》には反応しません。

この死者の霊以外にも精霊界には最初から肉体を持たない半生命である精霊たちが多数棲息しており魔術や契約などによりこの世界に召喚されます。


●精霊の能力値

精霊は肉体を持たないため STR, CON, SIZ, DEX の能力値を持たず能力値としては INT と POW を持ちます。精霊の中には CHA を持つものもいます。平均的な精霊は INT 3D6、POW 3D6+6 を持っています。精霊の DEX が必要となった場合は計算の上 20 とみなします。精霊も POW を成長させることができますが、その確率は固定で 5% しかありません。


●精霊の知覚

精霊は視覚や聴覚を持たないため物質界を感知することができませんが、独自の感覚を持っています。精霊は自分の POW×10メートル以内にいる他の精霊(生命)の POW の存在を感じ取ることができます。

POW×1メートル以内の近づけば、POWの大きさを10ポイント単位で知ることができます。さらに対象の POWが精神結合(Mind Link)しているかとか、どのルーン(Rune)と関連を持っているかなども知ることができます(カルトまではわかりません)。この距離ならば《精霊の言葉(Spirit Speech)》を使用して会話することもできます。

対象の精霊(生命)に接触することにより、その POW, INT, CHA の値を正確に知ることができ、所属するカルトなども知ることができ、対象に精霊戦闘(Spirit Combat)をしかけることも可能です。

精霊知覚は肉体を持たない精霊状態の時にのみ使用でき、クリスタルや動物に呪縛された精霊は精霊知覚を用いることはできません。


●精霊戦闘(Spirit Combat)

精霊は対象の精霊(生命)に接触することにより精霊戦闘をしかけることができます。肉体を持つ者が精霊戦闘をしたい場合には何らかの方法により精霊の正確な位置を知っている必要があります(通常はは司祭やシャーマンに見つけてもらいます)。そしてその位置に対して挑戦の意志を示せば、多くの精霊はそのオーラを読み取って精霊戦闘に乗ってきます。

精霊戦闘が始まると一時的に精神結合(Mind Link)等のつがなりは使えない状態になり、呪縛している精霊等も使用できなくなります。このため自分自身の生の POW だけで戦わなければなりません。

精霊戦闘中でも自分の精霊攻撃をあきらめて一方的に攻撃されることを受け入れるのならば、通常の戦闘行動や移動などを行なうこともできます。もし何らかの方法(テレポートなど)で精霊から遠くに逃げたり、精霊を制御しているシャーマンを殺すことができれば精霊戦闘は終了します。

精霊戦闘は同時にそれぞれが POW対POWの対抗ロールでを攻撃を行ないます。それぞれ対抗ロールに勝利すれば以下のうちから、いずれかの効果を選択できます。効果のうち番号の小さいものが先に効果を発揮します。

1. 離脱
精霊は対抗ロールに成功すれば精霊戦闘を終了して安全に離脱することができます。肉体を持つ者は移動速度が精霊に比べて遅いため逃げ切ることができず、この選択はできません。

2. ダメージ
対抗ロールに成功すれば相手の精神(POW)にダメージを与えて弱らすことができます。D100 を振って以下の表の値だけ相手の POW を減少させます。この POW ダメージは呪文の時と同じく一時的なもので時間がたてば回復しますが、もし POW がゼロになったらこの世から消滅します。

D100 POW減少     
01-103 point
11-402 point
41-001 point

3. 捕縛
肉体を持つ者と精霊が戦闘している場合に、相手よりも自分の現在の POW が大きければ相手を捕縛する試みが行なえます。再度 POW対POW の対抗ロールを行って勝利するれば以下の効果を適用できます。

精霊が肉体を持つ者の捕縛に成功した場合は、相手の魂を肉体から追い出して精霊がその肉体に憑依することができます。その後精霊は肉体を持った完全な生物として行動できます(レフリーがNPCとして行動させます)。追い出された方は精霊になります。

肉体を持たった者が精霊に捕縛に成功した場合には《精霊呪縛(Spirit Binding)》を使用して精霊をクリスタル等に呪縛することができます。


★ランタスの冒険

シャーマンのバリ=ダの手掛りを探して廃墟を冒険中だったランタスは、バリ=ダの仕掛けたブービートラップの精霊に襲われます。襲ってきた精霊の POW は 20、ランタスの現在の POW は 13 ですが、このような事態を想定していたランタスは予め《精霊盾(Spirit Shield) 3》 の呪文を自分にかけていました。このおかげで精霊の POW は 6ダメージを受けて 14 に減少します。

最初のラウンドはランタスの攻撃成功率は 45%、精霊の攻撃成功率は 55% です。両方が攻撃成功してランタスの POW が 1、精霊の POW が 1 それぞれ減少しました。

次のラウンドもランタスの攻撃成功率は 45%、精霊の攻撃成功率は 55% です。うまくランタスのみが攻撃成功しダメージのダイス目も 08、精霊の POW が 3 減少しました。これでランタスの POWが 12、精霊の POW が 10 になり逆転しました。

次のラウンドは双方失敗、その次のラウンドはまた両方が成功しランタスはの POW はまた 1減少しましたが、ランタスは精霊の POW を減らすかわりに捕縛を試みることにしました。再度 POW vs POW ロールを行ない 55%以下を出して勝利し、精霊をクリスタルの中に呪縛することに成功しました。


●精霊の呪縛(Bound Spirit)

上記のように精霊戦闘に勝利して精霊を捕縛すれば戦闘呪文の《精霊呪縛(Spirit Binding)》を使用して精霊をクリスタルやカルトで特別に育てられた聖なる動物の中に呪縛できます。

この精霊は術者の生命力で物質界に留められており、術者が死亡したり他の精霊に憑依された場合には精霊はただちに解放され精霊界に帰ってしまいます。例え神性介入などでただちに生き返ったとしても間に合いません。ただしシャーマンのみは死から自力復活できなかった場合にのみ精霊が解放されます。

一人が安全に呪縛可能な精霊の数は CHA÷3(端数切捨て)までです。それを超えた場合や何らかの理由で CHA が下がって足りなくなった場合には、最初にそれぞれの精霊を使用する際に CHA×5 ロールをする必要があり失敗すると精霊は術者を攻撃してきたり、術者より POW が少なければ逃げ出したりします。


●呪縛した精霊の能力

呪縛した精霊は術者とテレパシー的につながっていて、その接続は 5km まで保たれます。それを超えると切断され精霊は解放されてしまいます。この接続は術者か精霊のどちらかが精霊戦闘中は一時的に使えなくなります。

呪縛した精霊の INT を使って記憶できる呪文の数を増すことができます。誰でも自分の知っている呪文をテレパシー経由で呪縛している精霊に自由に教えることができ、教えた呪文は自分が記憶しているのと同様に使用できます。

呪縛した精霊の POW を呪文を唱える際の魔力として使用することができます。呪縛された精霊自身に呪文を使用させることはできませんし、呪縛された精霊は自ら精霊戦闘をしかけることもできません。

クリスタルに呪縛された精霊は外界を感知することはできませんが、動物に呪縛した精霊は使い魔(Familiar)として使用でき、呪縛者はその耳や目を通して知覚したり、命令して戦わせたりすることができます。呪縛した動物が死亡した場合には精霊は解放されます。


●シャーマンの弟子

シャーマン(Shaman)になるためにはまずその弟子(Apprentice)になって学ぶ必要があります。

シャーマンの弟子になる

シャーマンは自分の所属する部族やカルトのメンバーのみを弟子として受け入れます。弟子として受け入れてもらえるか抽象的に判定するのならば D100 で CHA×5 以下を出せば成功です。

シャーマンの弟子の義務

弟子は全ての時間をシャーマンに仕えて過ごさなければなりません。シャーマンに従って精霊の種類を学んだり、儀式を行なって精霊界に行ったり、部族やカルトでのシャーマンの役割を学ぶことに全ての時間を費やします。このため弟子はスキルや能力値を訓練する時間は一切取れません。


●シャーマン

シャーマンはフェッチ(fetch)という特別な精霊を持っている精霊使いの専門家です。

シャーマンになる

シャーマンに 1年以上仕えた弟子は、その価値があることを示せばフェッチを獲得してシャーマンになる試練に挑戦できます。価値があることを抽象的に判定する場合には D100で (CHA + POW)÷2×5 以下を出せば成功です。失敗した場合にはさらに 1年間弟子として訓練しなければなりません。

フェッチを獲得するにはシャーマンと部族の聖地に行って儀式を行ない精霊を召喚して同盟を試みます。召喚された精霊は INT 3D6 と以下の表の POW を持っています。

D100 POW
01-102d6
11-353d6
36-853d6+6
86-954d6+6
96-005d6+6

さらにもう一度 D100 をして召喚した精霊の友好度を決めます。

D100
01-50友好(friendly)
51-90中立(neutral)
91-00敵対(malign)

召喚した精霊が敵対的だった場合にはただちに精霊戦闘で攻撃してくるため同盟はできません。友好的か中立だった場合には同盟してフェッチにする試みができます。候補者の POW+CHA と精霊の POW+INT で対抗ロールを行ない勝利すれば同盟してフェッチにできます。失敗し場合には友好的な精霊は立ち去りますが、中立の精霊は候補者の POW より大きければ精霊戦闘で攻撃してきます。どちらにしろ挑戦は一年に一度しかできず再挑戦のためにはもう一年弟子を続けなければなりません。

シャーマンの責務

1. 部族やカルトの職務
シャーマンは部族やカルトの職務を行なう義務があり、訓練をする時間を取ることができません。職務を放棄した場合には部族やカルトの神々はからフェッチと精霊界の POW を取り上げてしまいます。

それでシャーマンは訓練時間がないため戦闘スキルなどの DEXベースのスキルは DEX×5% まで低下します。訓練で上昇させることができず、経験によってのみ成長させることができます。能力値の訓練もできないので POW と CHA 以外の能力値は上昇できません。

2. 外見
シャーマン儀式用の派手な粧飾を身につけねばならず、魔術的にも強いオーラを放っているため、どこにいても非常に目立ってしまいます。

3. 部族やカルトへの献身
一度シャーマンになって精霊界と結びつけられると、部族やカルトから追放されて能力を失う以外の方法で辞めることはできません。

シャーマンの特典

1. フェッチ(Fetch)
シャーマンはフェッチという特別な精霊を持っており、その能力を使って精霊界を旅することができます。

2. POW の蓄積
シャーマンは POWを精霊界に蓄積しておくことができます。精霊界の POWはスキル修正値や HP などを計算する場合には無視します。

精霊界にある POWは 1ポイントにつき 5分間瞑想することで肉体に戻すことができます。呪文などで消費した一時的な POW は 「肉体のPOW + 精霊界の POW」 の速度でまず肉体、その後に精霊界の順に回復します。シャーマンが精霊戦闘をする場合や精霊と対抗ロールする場合は肉体のPOW と精霊界のPOW の合計使用することができます。

3. POW の成長
シャーマンは (25 - (肉体のPOW + 精霊界のPOW))×5 で POWの成長ロールを行なうことができます。さらに POW合計が 25 以上ある場合でも 5% の確率で成長させることができます。フェッチの POW も同じ確率で成長します。

4. 病気の治療
シャーマンは適切な儀式を行なって手をかざすことにより病気の治療を行なうことができます。シャーマンが D100 で(肉体のPOW + 精霊界のPOW)×5 以下に成功すればその病気を治すことができます(必ず 5%の失敗の可能性は残ります)。失敗した場合はシャーマン自身が病気に曝されることになります。

5. 死からの帰還
シャーマンは死後 1時間以内ならば自分の死体に《治癒(Healing)》呪文をかけて HP をプラスにまで回復できれば生き返ることができます。この時に呪文に使用した POWは永久的に消費され回復することはできません。死んでいる間にできるのは《治癒》呪文の使用だけであり、死体が焼かれたり食べられたりして治癒できない場合には復活することはできません。

6. 精霊と契約
シャーマンは精霊界に出掛けて行って精霊と取引して自分に従うようにすることができます。精霊界は非常に危険な場所ですがフェッチの能力により精霊戦闘中以外ならば、シャーマンはいつでも肉体に戻ることがきます。

どのような精霊と出会うかは以下の表で D100 をして決めます。

D100 POWINT
01-101d6 1d3
11-202d6 1d6
21-353d6 2d6+3
36-753d6+6 3d6
76-904d6+6 3d6+3
91-955d6+6 3d6+6
96 6d6+6 3d6+6
97 7d6+6 3d6+6
98 8d6+6 3d6+6
99 10d6+63d6+6
00 無限

さらにD100をして 96-00 が出た場合は敵対的なカルトや部族の精霊であり、精霊がシャーマンより大きな POWを持っていた場合はただちに攻撃してきます。精霊が敵対的でない場合は精霊の POW÷10(端数切上げ)以上の POW を与えることにより契約することができます。与えた分の POW は永久的に失われ、その分だけ精霊の POW が増加します。

シャーマンが契約して制御下におくことのできる精霊の数は精霊界に貯めている POW のポイント数までです。何らかの理由で精霊界の POW が減少した場合には足りない分の精霊は解放しなければなりません。シャーマンが死亡して復活できなかった場合には全ての契約している精霊が解放されます。

7. 部族やカルトからの援助
シャーマンは部族やカルトから全面的な支援を受けており、族長の次に尊敬されています。敵に捕えられれば救出や身代金などの手配をしてもらえます。


●契約した精霊の能力

取引して制御下においている精霊は呪縛した精霊と同様に、精霊の POW を呪文を唱える際の魔力として使用できますが、精霊の INT を呪文を覚えさせるために使用することはできません。

制御下にある精霊に呪文を使用させることはできませんが、精霊はクリスタル等に封じられているわけではないので命令して精霊戦闘をさせるこができます。

シャーマンが呪文に使用したり精霊戦闘でダメージを受けたりして制御している精霊の現在の POW が 3以下に減少すると取引が終了し精霊界へと帰って行きます。精霊戦闘で相手よりも POW が 5以上少なくなってしまった場合も同様です。


●フェッチの能力

シャーマンは呪縛した精霊と同様にフェッチの INT や POW を呪文を記憶したり呪文のための魔力として使用することができますが、それだけでなくフェッチ自身がシャーマンの感覚を使って物質界に呪文を投射したり、自ら精霊戦闘をしかけることもできます。

シャーマンが精霊界に出掛けている間、フェッチシャーマンの肉体を護るためにそれに宿って使用します。フェッチはスキル等も完全にシャーマンと同じように行動することができますが、呪文を唱える場合などの POW はフェッチ自身のものを使用しなければなりません。フェッチの POW がシャーマンの種族上限を超えている場合は肉体に宿っている間は種族上限までしか使用できません。


●フェッチの名前について

「フェッチ(fetch)」はホビージャパンの RQ3 の翻訳では「魔精」と訳されていました。魔精という日本語は一般的ではないと思うので訳者の造語なのでしょう。"fetch" を辞書で引いても簡単な辞書だと「取って来る」のような意味しかないため「魔術の精霊」くらいの意味で意訳したのではないかと思われます。

大きな辞書には載っているのですが、実際にはこの fetch はイギリスやアイルランドの民間伝承にある妖怪の名前です。より古い本来の呼び方では  fetch life  らしく「生命を奪って行く者」のような意味です。伝承ではこの妖怪は「自分とそっくりな外見をしており出会うと死んでしまう」と伝えられています。そうですね。これはよく知られているドイツのドペルゲンガー(Doppelganger)と同様の妖怪です。

グローランサの fetch はシャーマン本人と瓜二つの外見をした精霊なのでこのような名前で呼ばれているのだと思います。元が妖怪の名前なので、この連載ではカタカナで「フェッチ」としておきました。


●終りにあたって

今更ながらに RuneQuest 2版を紹介するという企画でしたが、どうにか予定していた最後まで書くことができました。どこまで詳しく書くか少し悩んだのですが古いゲームなので、かなり詳細に解説しても問題ないだろうと考え、プレイヤーとして遊ぶのに必要なルールのほぼ全てを紹介したつもりです。敢データ類や、モンスターや財宝などのゲームマスター向けのルールは書いていませんので、レフリーをする場合には是非ルールブックを買って読んでもらえればと思います。

今回は RQ2 の基本ルールブックにあるもののみの紹介でしたが、グローランサの楽しさを満喫するためには Cults of Prax が必須だと思います。レフリーなら Cults of Terror もあった方が良いでしょう。どちらもこれを書いている時点で入手困難なのが難点ですが、近々復刊されることが決まっているのでもう少し待つと入手可能になると思います。

それでは長い記事にお付き合いありがとうございました。良ければ感想など聞かせてください。

--
以上、RQ2 やその他 RuneQuest や Glorantha が盛り上がることを願っています。

2016年6月21日

RQ2 紹介 - 第12回 カルト(ルーン司祭、大司祭)

前回に続いてルーンカルトについて説明します。今回はルーン司祭や大司祭などの位階について説明します。


●ルーン司祭(Rune Priest)

ルーン司祭(Rune Priest)はカルトの霊的な指導者です。またカルトの持つ魔術の力の担い手でもあります。

ルーン司祭になる
ルーン司祭になるためには以下の3つの条件を満たす必要があります。
  • そのカルトの評判の良い入信者であること
  • POW が 18 以上あること
  • 母国語の読み書きができること
さらに試験に合格してカルトの試験官を納得させる必要があります。試験の内容はレフリーが作成しますが、抽象的に済ませたい場合には入信の際と同じ以下の判定を使用します。

   D100 で (POW + CHA + [寄付金 / 100L])÷3×5 以下を出す。

母国語の読み書きという条件ですが、グローランサには文字文化を持たないカルトも多数あり、その場合にはかわりにカルトの特別な言葉のスキルが一定以上あることが求められるのが普通です。例えばストーム・ブルの司祭〈獣の言葉(Beast Speech)〉80% 以上、冒険神オーランスの司祭風の声ならば〈嵐の言葉(Storm Speech)〉90% 以上が要求されます。

ルーン司祭の責務

1. カルトへの責任
ルーン司祭は神とカルトに責任を負っており、ある程度の自由はあるものの、緊急の場合には個人よりもカルトを優先して行動し、招集に応じなければなりません。

2. カルトへの援助
ルーン司祭もルーンロードと同様に収入の九割をカルトに寄付しなければなりません。また発見した魔法の道具などのうち自分で使用しないものはカルトに納めなければなりません。

3. カルトの日常職務
ルーン司祭は自分の神殿の大司祭の命令に従う義務があり、神殿の日常の業務を行なうためにほとんどの時間を費やさなければなりません。

このため司祭には戦闘スキルなどの DEX ベースのスキル訓練を行なう時間が取れないため、それらのスキルは DEX×5% まで低下します。またそれらのスキルを訓練で成長させることができず、司祭になった後は経験によってしか長させることができません。同様に能力値も STR, CON, DEX を訓練することができず、POW と CHA しか成長しません。

4. 魔力(POW)の維持
ルーン司祭は魔術の力を維持する義務があり、自主的に POW を 18未満に下げることは許されません。このため入信者と同じ方式の神性介入を求めることもできません。もし何らかの理由て強制的に POW が 18未満に下げられた場合は休職中の扱いになり、再び POW が 18以上になるまではルーン魔術の再取得ができなくなります。

ルーン司祭の特典

1. ルーン魔術の使用
ルーン司祭はルーン魔術の呪文を再使用することができます。入信者の時に覚えた呪文でも司祭になった時点で再使用可能になります。司祭は POW を 18未満に下げられないため POW 19 以上なければ新しい呪文を取得できません。

2. ルーン魔術による神性介入
ルーン司祭は一回限りのルーン呪文の形であらかじめ準備しておくことにより、高い成功率で神性介入を求めることができます。

3. POW の成長
ルーン司祭は通常の (21 - POW)×5 ではなく (25 - POW)×5で POWの成長ロールを行なうことができます(つまり成長ロールに +20% ということです)。ただし種族上限値(人間なら21)を超えることはできないので、成長した分は全てルーン呪文の獲得に当てるのが普通です。

4. 同盟精霊
ルーン司祭にもルーンロードと同様にカルトが同盟精霊(Allied Spirit)を与えてくれる可能性があります。同盟精霊に関しては前回のルーンロードの記事を参照ください。

5. 追加の訓練
カルトはルーン司祭がその職務を遂行できるように知識(Knowledge)系のスキルと〈雄弁(Oratory)〉スキルの訓練費用を肩代わりしてくれます。この費用は後から返済することが期待されています。

6. 食事と救援
カルトはルーン司祭に対してルーンロードと同様に食事と部屋と提供してくれますし、必要ならば装備なども提供してくれます。また捕虜になった場合には身代金は救援の手配を行なってくれます。

ルーン司祭の退任

誓いを破ったりカルトへの義務を放棄したルーン司祭はカルトから追放され持っているルーン魔術呪文を全て失います。罪状によっては神がさらなる神罰を与えるかもしれません。一度追放されるとカルトに戻ることはできません。

カルトを離れるのでなく、戦闘スキルの訓練する目的などで一時的な活動休止を願い出ることもできます。大司祭が休暇の許可を出すかを抽象的に判定する場合には入信試験と同じ以下の判定を使用します。

   D100 で (POW + CHA + [寄付金 / 100L])÷3×5 以下を出す。

この時の寄付金は自分の 10% の収入の中から出さなければなりません。活動休止の期間は最長で 1年を超えてはなりません。活動休止期間中でもルーン呪文の再使用はできますが POW 成長の特典は失われます。

★ランタスの冒険

ランタスは友人のグリカにも力をつけるためルーンロードを目指すよう進言しますが、グリカは生まれながらに高い魔力(POW 16)を生かすために、ブルのルーン司祭を目指すことにします。2年間の冒険でグリカの POW は 18 に成長しているため、あとは〈獣の言葉〉を 80%以上に成長させれば司祭の条件を満たすことができます。彼の上司や先輩たちは言葉を教えるのに熱心ではないため、グリカはアイリーサの女祭の所に通ってそのスキルを学ぶことにしました。〈獣の言葉〉を覚えたならば、一人で混沌の怪物たちと戦うという司祭になるための試練が待っています。


●ルーンロード司祭(Rune Lord-Priest)

条件を満たせばルーンロードはからルーン司祭に転身することもできます。ルーンロードから司祭に転身した人はルーンロード司祭(Rune Lord-Priest)と呼ばれます。

ロード司祭になる

ルーンロードが POW を 18 以上に成長させ、その他のルーン司祭の条件も満たして希望すればルーンロード司祭になれます。

ロード司祭の責務

ロード司祭は基本的に司祭なのでルーン司祭と同じ責務を持ちます。例外として戦闘スキルなどの DEX ベースのスキルは現在の値から低下しなくて済みます。ただしそれ以後は通常のルーン司祭と同じく時間がないため DEXベーススキルや能力値を訓練することができなくなり、経験でしか成長させることができません。

ロード司祭の特典

1. ルーンロードの能力
神の加護によりルーンロード時代に成長させたスキルはそのまま高い値をすることができます。また神性介入以外のルーンロードの特典を維持することができます(神性介入は司祭方式になります)。

2. ルーン司祭の能力
新たにルーン司祭の全ての能力を獲得できます。ただし同盟精霊は 1人につき1体までなので、ルーンロード時代に同盟精霊を獲得していた場合にはさらなる同盟精霊を獲得することはできません。


●主任司祭(Chief Priest)

以下の条件を満たしたルーン司祭は大司祭の元を離れて独立する権利を得ます。
  • 再使用可能なルーン呪文を15ポイント以上持っている
  • 《神託(Divination)》の呪文が 5ポイント以上ある
  • カルトの知識系(Knowledge)スキルのうち 3つが 90%以上ある

主任司祭になる

上記の条件を満たしているにもかかわらず神殿に残って大司祭の権威の元に留まり続けているルーン司祭は(空席があれば)特別な地位が与えられ主任司祭(Chief Priest)と呼ばれます。

主任司祭という用語は RQ3 では使用されないので耳慣れない人も多いかもしれませんが、例えばイェルマリオのカルトの説明にある「光の将(Light Captain)」や「光の導き手(Light Guide)」などの大司祭を補佐する役職付き司祭がこの主任司祭にあたります。

主任司祭の特典

主任司祭になると他のルーン司祭に命令する権限が与えられ、カルトの日常的な職務から解放されます。このためある程度時間が自由になるようになり望むならば DEXベースのスキルや能力値などを訓練で成長させることができるようになります。他にもカルトによっては主任司祭以上の者にのみ使用可能なルーン呪文が存在していたりします。


●ルーン司祭ロード(Rune Priest-Lord)

主任司祭などの日常業務を免除された司祭がスキルを成長させてルーンロードの条件を満たした場合には「ルーン司祭ロード(Rune Priest-Lord)」になれます。司祭ロードはルーン司祭とルーンロードの兼務であり両方の能力を同時に獲得できます。前述のロード司祭(Lord-Priest)と名前や能力が似ていますが微妙に別物なので注意してください。


●大司祭(High Priest)

神殿(Temple)の指揮を執っている最上位の司祭は「大司祭(High Priest)」と呼ばれています。大司祭は各神殿ごとに一人だけ存在します。

大司祭になる

大司祭になるには以下の二つの方法があります。

1. 前任の大司祭の跡を嗣ぐ
神殿の大司祭が死亡したり隠退した場合には、残された(主任)司祭の中で最も経験を積んだ者が跡を継いで次の大司祭になります。多くの場合は順番を何十年も待つことになります。

2. 新しい神殿を建立する
上記の主任司祭の条件を満たしたルーン司祭は大司祭の許可を得て独立することができ、信者を集めて新しい神殿を建てることができればその神殿の大司祭になれます。

大司祭の特典

1. 権限
大司祭は神殿の最上位の存在で神にのみ責任を負い誰の命令にも従う必要はありません。信者を入信させて独自の信者や司祭を持つことができます。

2. 資産
大司祭はカルトに収入の九割を納める必要はありません(大司祭は実質神殿の所有者です)。

3. 自由
大司祭は自分の裁量で時間を自由に使うことができます。DEX ベースのスキルや能力値の訓練も可能です。このためルーンロードの条件も満たしてルーンロードを兼務していることも一般的です。


●昇進パス

カルトの位階と昇進パスをまとめて図にする以下のようになります。小さなカルトではルーンロードや主任司祭は空席の場合もあります。



●多重入信

カルトへの入信は原則として一つだけですが、それぞれのカルトの大司祭の許可を得ることができれば複数のカルトに入信することができます。許可を抽象的に判定する場合には入信試験と同じく以下の判定を使用します。

   D100 で (POW + CHA + [寄付金 / 100L])÷3×5 以下を出す。

司祭が多重入信した場合には、二つ目以降のカルトでは助司祭(AssociatePriest)として扱われます。助司祭は食事や部屋は提供してもらえますが、身代金や救出の手配はしてもらえません。助司祭は収入の九割を納める義務がないかわりに、ルーン呪文を学ぶ場合には 1ポイントあたり 1000ルナーの寄付金が必要になります。

--
以上、今回はルーン司祭とさらに上位の役職について説明しました。次回は最終回の予定で、精霊とシャーマンについて説明します。

2016年6月20日

RQ2 紹介 - 第11回 カルト(入信者、ルーンロード)

今回はルーンカルト(Rune Cult)について説明します。長くなったので2回に分割して、今回は平信者、入信者、ルーンロードについて説明します。RQ2 のルーンロードは RQ3 のようにルーン呪文の再利用はできませんが、それ以外の特典が満載で非常に強力なキャラクターになっています。


●ルーンカルト(Rune Cult)

グローランサにはオーランス(Orlanth)のような大神から、家族の先祖神のような小さな神まで様々な神を信仰する宗教集団が存在しており、これをルーンカルト(Rune Cult)と呼びます。神々の信仰を通してルーンカルト内で昇進し、ルーンの力を身につけることが人生の目的の一つとされます。ルーンクエスト(RuneQuest)というゲームのタイトルも元々はここから来ています。


●平信者(Lay Member)

各カルトにおいて最下層の参加者は平信者(Lay Member)と呼ばれます。平信者は基本的にカルトの構成員ではなく外部メンバーとみなされます。平信者は有料でカルトからのサービスを受けたり、カルトの一般的な礼拝に参加したりできます。

平信者になる

多くのカルトでは、特定の年齢に達しており出生地や種族などカルトごとに決められた緩い条件を満たす者は誰でも平信者として受け入れてもらます。通常はカルトから何らかのサービスを受けるごとに少額の寄付金を支払って一時的な平信者となります。

継続的な平信者

サービスを受ける毎に寄付金を支払って平信者になるのではなく、カルトごとに決められた特定の条件を満たすことにより「継続的な平信者」になることもできます。典型的な条件は毎週の礼拝に参加して一時的な POW を 1ポイント支払うことです。

継続的な平信者になると毎回の寄付が必要なくなります。この地位は入信者になるための準備段階とみなされ、カルトによってはカルトスキルやカルト戦闘呪文を教えてもらえたり、スキルの訓練費用が減額されるなどより深いサービスが得られることもあります。

★ランタスの冒険

ランタスは司祭オーランドの誘われて「冒険を愛する者オーランス」の聖日に儀式に参加して講話を聞き、オーランス神の平信者となりました。オーランス神は空気を呼吸する者なら誰でも平信者として認めてくれます。


●入信者(Initiate)

特定のカルトの神に信仰を捧げることによりカルトの入信者(Initiate)になれます。入信者はカルトの内部メンバーとみなされカルトの秘密を教えてもらえるようになります。

入信者になる

入信者になるために評判の良い平信者であること。そのカルトの入信者以上に推薦人がいることに加えて、カルトごとに定める特定の入信試験(または試練)に合格する必要があります。試験の内容はカルトごとに決まっていたり、レフリーが考えて決めますが、簡単に済ませたい場合には以下の一般判定を使用します。

  試験: D100 で (POW + CHA + [寄付金 / 100L])÷3×5 以下を出す。

RQ3 のように入信者になる際に永久的な POW を支払う必要はありません。

入信者の責務

ルーンカルトの入信者には以下のような責務があります。
  • カルトの神を信仰し神の威光を高めること
  • カルトのルーン司祭の指示に従うこと
  • 週ごとの礼拝に参加し一時的な POW 2ポイントを支払うこと
  • カルトに十分の一税を支払うこと
  • 時折カルトの業務に呼び出されて奉仕すること

入信者の特典

1. 神性介入
入信者は最大で1週間に一度、神に祈って神性介入(Divine Intervention)を要請することができます。D100 を振って POW 以下をロールすることにより神に助けてもらえますが、その時のダイス目と同じ POW を永久的に失ってしまいます。現在の POW と同じ数を振った場合には神性介入には成功しますが、信者の魂はこの世を去り神のもとへと召されます。

2. 制限付きのルーン魔術の使用
カルトの任務に行く場合の支援や、長年の間評判の良い入信者であった者への報酬として特別にカルトのルーン呪文を 1回限りで伝授してもらえます。元から再使用不可の呪文は教えてもらえません。

3. 特殊な訓練
入信者になるとカルトで教えるスキルの訓練費用が減額されたり無料になることがあります。さらにカルトによっては入信者以外に秘密にしている特殊なスキルやカルト戦闘呪文が存在しています。入信者になるとそのようスキルや呪文を教えてもらうことができます。

4. 食事と保護
多くのカルトでは入信者に対して食事と治療を提供してくれます。カルトによっては入信者が捕虜になった時の身代金を立て替えてくれる場合もあります。

★ランタスの冒険

ランタスはオーランス神の勇壮な神話を聞けば聞くほど、自分の守護神はオーランス以外にないと考えるようになって行きました、1年後オーランドが推薦人になってくれることもあってオーランスのカルトに正式に入信する決心をしました。レフリーは入信試験を簡単な判定ですませることにしました。ランタスはありったけの所持金 1100ルナーをカルトに寄付したおかげか入信試験に成功しました。ランタスの久し振りに会った友人グリカはなんとストーム・ブルの入信者になっていました。


●神性介入の制限

神性介入(Divine Intervention)は原則的に信者を救援することのみ可能で、敵を倒すために使用することはできません。また同じ神の信者に対抗するために神性介入を求めることはできません。神々は信者に頼まれたからといって自分の信者以外を助けることはめったにありません。

グローランサの神々は全知全能ではなくできることに限りがあるため、神性介入の効果にも制限があります。風の神が地震を起こすことはできませんし、いかなる神も正確に未来を予言したり、過去を改変することはできません。

神性介入は信者を通して発動するので神託と違って敵の領域の中にいる時でも使用できます。テレポートで10人程度が敵地から脱出することもできますが、敵の領域に人々を送り込むのに使用することはできません。

神性介入の一般的な使用法に傷の治癒や死からの蘇生があります。一回の神性介入で蘇生できるのは一人だけです。一方で傷の治療ならばパーティ全員の傷を癒すことができます。

神性介入は神の魔術のような効果を再現することもできますが、神性介入により新種の魔術を作成して入手することはできません。新しい魔術を創造するためにはヒーロークエストが必要になります。

神性介入により能力値を上昇させることもできますが、上昇できるのは 1回の神性介入につき 1ポイントだけであり種族の上限を超えて上昇させることはできません。

★ランタスの冒険

ランタスは親友のグリカ、ヒューマクト信者のアーネ、盗賊神ランブリルの信者でお調子者のフロンポットととある洞窟を探索している時、病の女神マリアのシャーマンであるバリ=ダとその部下のブルーたちと戦いになりました。

バリ=ダが繰り出してくる多数の邪悪な精霊たちにより大変な苦戦を強いられます。病の精霊とブルーに追いつめられたランタスは死を覚悟し、オーランス神に脱出を助けてくれるよう祈りを捧げます。神性介入ロールの出目はなんと02、オーランス神は愛すべき冒険者たちを洞窟の入口までテレポートさせました。たった 2ポイントの POW でランタスと仲間たちは絶対の死地からの脱出できたのでした。


●ルーンロード(Rune Lord)

ルーンロード(Rune Lord)はカルトの世俗的な指導者です。魔術の力ではなく高いスキルをもって人々導きます。RQ2 では全てのカルトがルーンロードの位階を持っていますが、条件を満たす候補者が常にいるわけではないので空席になっていることも多々あります。

ルーンロードになる

ルーンロードになるために以下の3つの条件を満たす必要があります。
  • 少なくとも 1年間評判の良い入信者であったこと
  • POW が 15 以上あること
  • カルトの指定した 5つのスキルが 90%以上あること。
さらに試練に合格してカルトの試験官を納得させる必要があります。ルーンロードになるための試練はカルトによって決まっている場合もありますが、一般にはレフリーが作成します。

ルーンロードの責務

1. カルトへの責任
ルーンロードはカルトに責任を負っており、独立して行動している場合でも、もしカルトから招集された場合には万難を拝して駆けつけ、カルトのための探索(クエスト)に赴かなければなりません。

2. カルトへの援助
ルーンロードは収入の九割をカルトに寄付しなければなりません。また発見した魔法の道具などのうち自分の使用しないものは全てカルトに納めなければなりません。このようにして寄付した金額はカルトからの訓練や呪文の獲得料金に当てることができ、余剰金は積み立てと考えて捕虜になった場合の身代金の支払いなどに当ててもらえます。

ルーンロードの特典

1. スキルの成長
ルーンロードは経験による成長ロールで  INT 以下を出すことによりスキルを100% を超えて成長させることができます(ルーンロード以外は100%が上限です)。100% を超えるスキルには以下のような利点があります。
  • 攻撃スキルが防御値(DEF)などによって減少させられても高い成功率を維持できる。
  • クリティカル命中や貫通などの発生確率が上昇する。
  • 〈攻撃〉スキルの 100% を超える分を相手の〈受け〉スキルから引くことができる。戦闘以外のスキルでも同様で例えば〈物を隠す〉が100%超えていればその分が〈隠れたもの発見〉へのペナルティになる。
  • それぞれに50%以上割振ることができれば、スキルを複数の敵に分割して多人数を同時に相手にできる(同じ敵に2回攻撃はできない)。

2. 魔術への抵抗
ルーンロードは呪文に対して抵抗する時、一時的に POW が減少していたとしても POW 最大値で抵抗することができます。精霊戦闘で防御する時にも POW 最大値で抵抗できます。あくまでも防御目的だけで呪文をかける場合や精霊戦闘で攻撃する場合には現在の POW を使用します。

3. 神性介入の確実化
ルーンロードはほぼ確実に(95%で)神性介入に成功します。その際に永久的に失う POW は以下の表により決まります。

D100 POW消費
01-050 point
06-101 point
11-202 point
21-303 point
31-404 point
41-505 point
51-606 point
61-707 point
71-808 point
81-909 point
91-9510 point
96-00失敗、POW消費はない

POW が足りない場合でも神性介入には成功しますが、そのルーンロードの魂は神の元に召されることになります。ルーンロードは死亡した場合でも死亡したすぐ次のラウンドになら神性介入を試みることができます。

4. 同盟精霊
カルトはルーンロードに同盟精霊(Allied Spirit)を与えてくる可能性があります。ルーン司祭が POW 3D6+6, INT 3D6 のカルト精霊を召喚し、ルーンロードは POW + CHA で精霊の POW + INT に対抗ロールを行ない勝利すればその精霊と同盟できます。

5. 鉄の武具
ルーンロードはそのステータスとして呪鍛された鉄やルーン金属の武具を使うことが許されます。大きくて古いカルトでは新しいルーンロードが誕生した時のために鉄やルーン金属でできた武器や鎧を在庫していますが、そうでない場合にはルーンロード自身がそのような武具を探してこなければなりません。

カルトはルーンロードのために鉄やルーン金属を呪鍛してくれます。呪鍛するためには POW 1ポイントの《神性介入》が必要なのですが、このポイントはルーンロード自身が提供しなければなりません。1 ポイントで武器1つと盾1つと鎧1式までの武具を呪鍛することができます。この呪鍛は使用者に結びついており、使用者のルーンロードが死亡すると呪鍛は失われます。

6. 食事と救援
ルーンロードはとても尊敬されており、カルトの全ての神殿はルーンロードに対して食事と部屋を提供してくれます。また必要に応じて馬や装備の提供もしてくれます。ルーンロードが捕虜になった場合にはカルトが身代金や救出の手配をしてくれます。

ルーンロードの退任

ルーンロードがカルトを離れた場合、神性介入の特典と同盟精霊は失われますが、鉄の武具と 100% を超えるスキルは維持することができます。もちろん神がそれらを奪ったり、何らかの神罰を与えるかもしれません。

カルトを離れるのでなく、大司祭に申し出て一時的な休暇の許可を求めることもできます。大司祭が許可を出すかを抽象的に判定する場合には入信試験と同じ以下の判定を使用します。

    D100 で (POW + CHA + [寄付金 / 100L])÷3×5 以下を出す。

この際の寄付金は自分の 10% の収入の中から出さなければなりません。

★ランタスの冒険

邪悪なシャーマンのバリ=ダに圧倒されたことにより、ランタスはもっと力をつける必要を感じます。ランタスは冒険神オーランスのルーンロード「風の王(Wind Lord)」を目指すことにします。風の王の条件は〈剣攻撃〉90%以上と、次の技能のうちどれか4つを90%以上で持っていることです。〈武器攻撃〉、〈雄弁〉、〈騎乗〉、〈登攀〉、〈盾受け〉、〈地図作成〉、〈隠れたもの発見〉、〈物影に隱れる〉、〈忍び歩き〉、〈嵐の言葉〉。

さらに神性介入で減ってしまった POW を再び 15 以上に戻さなければなりません。先は長そうですが、ランタスはまずはカルトの司祭たちから〈雄弁〉と〈嵐の言葉〉を学ぶとことから始めることにしました。


●鉄の利点

鉄は硬いため鉄製の武器の HP は青銅製の 1.5倍になり、さらにクリティカル以外では傷つかなくなります。鉄製の鎧や鉄製の盾は青銅製の 1.5倍のダメージを吸収します。鉄製の武器や鎧は硬いだけでなく軽くすることができ、青銅製のものに比べて荷重(ENC) 1個分軽くなります(ただし 1個未満にはなりません)。鉄は通常は魔術を妨害しますが呪鍛することで妨害しなくなります。


●同盟精霊の能力

同盟精霊(Allied Spirit)は呪縛された精霊と同様に、そのルーンロードやルーン司祭が呪文を唱える際に POW を提供してくれたり、その INT に呪文を記憶させることができますが、単にそれだけではなく同盟精霊は常にルーンロードやルーン司祭と精神結合(Mind Link)された状態にありルーンロードやルーン司祭の感覚を通して自から呪文を投射することができます。同盟精霊は通常は武器や道具や動物に宿っているため自ら精霊戦闘をしかけることはできません。

同盟精霊は魔術的にはカルトの入信者と同等であり、入信者と同じ手順で神性介入を求めることができます。同盟精霊の POW の成長の可能性は他の精霊と同じく 5% しかありませんが、同盟精霊の POW が 18 以上になるとルーン司祭と同様にルーン呪文が再使用可で使用できるようになります。

ルーンロードの同盟精霊は多くの場合はその武器に宿りますが、盾や鎧などに宿らせることもできます。同盟精霊の宿った武器が壊れた場合には同盟精霊は物質界に対して呪文を投射することができなくなりますが、精神結合を通してその POW や INT を提供することはできます。同盟精霊を新しい武具に宿らせるには一週間の儀式が必要になります。

ルーン司祭の同盟精霊は武具ではなく魔術のための杖やその他の身の回りの物に宿ります。カルトが特別に育てた動物に宿らせることもできます。動物に宿らせた場合には動物の知覚を使用したり、動物自身に移動させたりすることができます。動物が死亡した場合は別の肉体へと宿らせる儀式が必要になります。

--
今回は入信者とルーンロードについて説明しました。次回はカルトの続きとし
てルーン司祭と大司祭などについては次回に説明する予定です。

2016年6月18日

RQ2 紹介 - 第10回 ルーン魔術

今回は上位魔術であるルーン呪文について説明します。



●ルーン魔術の基本的な仕組み

基本魔術(戦闘魔術)は個人の知識と精神力を使って世界を変容させるのに対して、ルーン魔術(Rune Magic)では神々の助けを借りることにより、個人の限界を超えるルーン(Rune)の深淵な秘密に基いた魔術を行使できます。

システム的にも原理的にも RQ3 の神性呪文(Divine Magic)とほぼ同じですが、ルーンクエストというゲームのタイトルに関連した「ルーン魔術」という格好良い名前にで呼ばれています。

●ルーン(Rune)

グローランサ(Glorantha)においてルーン(Rune)は単なる文字や記号ではなく大きなパワーを内在しており、世界や神々と深いつながり持つとされており、グローランサにおけるお馴染の主要ルーン(major rune)が紹介されています。RQ2 では主要なルーンを以下の四種類に分類しています。

元素(Elemet)のルーン


形態(Form)のルーン


状態(Condition)のルーン


力(Power)のルーン


Guide to Glorantha に記載されている新しい主要ルーンの分類とと比較すると「幸運」と「宿命」が力(Power)のルーンに含まれている点が大きな違いでしょうか。「月」がエレメントのルーンに明示的に含まれている点にも注目です。

「光」「法」「交易」「竜」「不死」「力」「永遠の戦い」などのルーンなどはこの時点では存在していませんでした。RQ2 ではランカー・マイは「法」のかわりに「静止」のルーンを持っており、イェルマリオは「光」ではなく「火」のルーンを持っていました。「交易」のルーンは Cult of Prax で追加されイサリーズ専用で「イサリーズ」のルーンと呼ばれていました。


●ルーン呪文の獲得

ルーンカルトの司祭は神殿において儀式を行って神からルーン呪文を受け取ることができます。獲得には神に呪文のポイントに等しい POW を永久的に支払う必要があります。支払いは POW のみで金銭を支払う必要はありません。ルーン呪文を保持できる数には上限はありません。

ルーンカルトの入信者もカルト・ミッションに向う場合や、長年評判の良い入信者であった場合の報酬としてルーン呪文を取得する許可をもらえる場合がありますが、司祭と違って呪文は一回限りとなり再使用できません。また元から再使用不可(Non-Reusable)と指定された呪文の取得は入信者には許可されません。


●ルーン呪文の使用

ルーン呪文はその呪文のキーワードを叫ぶか心に思い浮べるだけでも発動できます。そのため戦闘ラウンド中に使用する場合 は術者の DEX 等にかかわらず必ず SR 1 で使用することができます。呪文に必要な POW は事前に支払っているため使用する際に POW の消費はありませんが、呪文を強化して《抵抗魔術(Countermagic)》などを突破しやすくするために任意で一時的な POW の消費を追加することはできます。その場合はその分だけ投射のタイミングが遅くなります。

ルーン呪文は戦闘呪文(Battle Magic)と同じく相手が抵抗しない場合には 95% で成功します。相手が抵抗する場合には一般に POW どうしで対抗ロールを行ないますが、呪文によっては抵抗されても一定の効果があるものもあります。ルーン呪文の投射はポイントごとに一回のみで、一度使用したルーン呪文は神殿に戻って再獲得するまでは再度使用ることはできません。

呪文は 1ラウンドに 1回までの制限があるためルーン呪文を使用したラウンドには他のルーン呪文や戦闘呪文を投射することはできません。《延長(Exrtension)》呪文のみ例外です。

★ランタスの冒険

ランタスはカイガー・リートールのトロウル女祭ギージャへ贈物を届ける仕事を引き受けましたが、トロウルのことをよく知らなかったため、彼女の前で恐るべき無礼を働いてしまいました。女祭はこの無知な若者を懲らしめるためにルーン呪文を使うことにしました。

ランタスは誤ちに気付いてあわてて謝ろうとしますが、ルーン呪文はあっという間に発動します。女祭の POW は 18、ランラスの POW は 14 なので成功率は 70% です。レフリーのダイス目は 22、呪文は難無く成功し、ランタスの目は全く見えなくなってしまいました。彼女の使用した呪文は《盲目(Blinding》だったのです。

幸いにも女祭の機嫌はそこまで悪くなく、そのまま 15分間で呪文の効果が切れて視覚は戻りましたが、ランタスは今後はトロウル女祭の前では行動に気をつけようと心に誓うのでした。



●ルーン呪文の再獲得

司祭(Priest)階級以上であれば一度使用したルーン魔術の呪文を POW を支払わずに再度入手することができます。再獲得のためにはカルトの神殿や聖地で呪文のポイントごとに 1日間瞑想しなければなりません。《神性介入(Divine Intervention)》や《マトリクス作成(Matrix Creation)》のような再使用不可(Non-Reusable)と指定された一部の呪文は再獲得できず、獲得には再度永久的な POW を支払う必要があります。

入信者はルーン呪文の再獲得はできずルーン呪文を獲得するためには再度 POWを永久的に支払う必要があります。


●ルーン呪文のスタック

戦闘呪文は重ねがけしても効果は増しませんが、「スタック可能(stackable)」と記載されたルーン呪文は複数の呪文を重ねることにより効果を増加させることができます。持続時間のある呪文ならば既存の呪文に後からでも同じ呪文を重ねがけして強化することもできます。例えば《盾(Shield) 2》を使用中の対象に《盾 1》を重ねがけすると 《盾 3》と同じ効果になります。ただし一部のルーン呪文(主に戦闘系の呪文)は最大で 4ポイントまでしかスタックできません。


●ルーン魔術の持続時間

ルーン魔術の持続時間は特に指定がなければ 15分(75ラウンド)です。これは戦闘魔術の 7.5倍にあたります。もちろん呪文によっては瞬間のものや永遠のものや特殊な持続時間を持つものもあります。


●ルーン呪文の到達距離

ルーン呪文の到達距離は特に指定されていない限り 160メートルです。これは
一般的な戦闘呪文の 2倍にあたります。もちろん呪文によっては接触が必要な
ものや特殊な距離を持つものなどもあります。


●エレメンタル(Elemental)

エレメント(元素)系のルーンカルトでは《エレメンタル召喚(Summon Elemental)》というエレンタルを召喚する強力なルーン呪文を持っています。この呪文は召喚するエレメンタルの種類ごとに《シルフ召喚》、《シェイド召喚》、《サラマンダー召喚》などのように分かれています。さらに 1ポイント、2ポイント、3ポイント呪文の種別があり、それぞれ小、中、大のエレメタルを召喚することができます。

この呪文は基本的に再使用可で、使用する度に同じエレメンタルを召喚しますが、エレメンタルの POW がゼロになって消滅した場合に再使用不可になます。新しいエレメンタルを召喚するためには POWを支払って新しい呪文を取得しなおす必要があります。

エレメンタルは物質的な性質と精霊的な性質の両方を持つ生物とされており、召喚者の念話(mindspeech)による命令に従います。ただし INT は 1D6 しかないので複雑な命令を出すことはできず、敵味方かまわず接触した者を自動的に攻撃します。エレメンタルには以下のような種類があり、それぞれ独特の攻撃を持っていますが、いずれも強力なので注意が必要です。


シェイド(Shade)

闇のエレメンタルです。闇の塊の中に立つマントを着た人のような姿をしています。攻撃に成功すると闇で包んで対象の CON とシェイドの POW で対抗ロールを行ない勝利した場合には恐怖を与えます。対象は運が悪いと死んだり昏倒したりします。そうでなくても恐怖で逃走します。

シルフ(Sylphs)

風のエレメンタルです。シルフは包んだ対象と STR対STR で抵抗ロールして成功すれば自分の身長まで持ち上げて落とすことにより落下ダメージを与えることができます(落下ダメージに鎧は有効です)。また抵抗しない相手を連れて空を飛ぶことができます。

サラマンダー(Salamander)

火のエレメンタルです。サラマンダーは熱により包み込んだ対象の CON を直接攻撃して減少させます。毒に抵抗する時のように CON でダメージに対抗できれば半分で済みます。このダメージに鎧は無効ですし、CON ダメージは《治癒(Healing)》呪文では治せません。

ウンディーネ(Undine)

水のエレメンタルです。包み込んだ対象を溺れさせ、対象は毎ラウンド INT×5に失敗すると HP にダメージを受けます。抜け出すには INT×5 と DEX×5 の両方に成功すると必要があります。

ノーム(Gnome)

大地のエレメンタルです。普段は地中に潜っており対象が上に乗ると深さ 1メートルの落とし穴を開いて対象を落として、すぐに穴を閉じることにより両脚に大ダメージを与えます。片脚ならまだしも両脚なので即死もありえます(鎧は有効なので脚に鎧をつけましょう)。

★ランタスの冒険

ランタスが冒険者の大先輩で冒険神オーランスの司祭であるオーランドと森を旅をしていた時のこと、ミノタウルスの盗賊に遭遇します。ランタスは剣を抜いてたち向かおうとしますが、相手のグレートアクスのダメージは 4D6+2 でランタスを一撃で殺してしまうかもしれません。

危ういと見た司祭オーランドは奥の手である《シルフ召喚(Summon Sylph) 3》を使用して大型シルフの召喚を行なうことにしました。抵抗はないので成功率は95% で難なく成功します。

この大型シルフの STR  32 で、ミノタウルスの STR 25 と対抗ロールを行ない成功すればシルフの身長9メートルまでミノタウルスを持ち上げて地面へ落下させることにより 5D6 のダメージを与えることができます。さすがのミノタウルスもこの攻撃には長く耐えることはできないでしょう。


●標準ルーン呪文の例

ルーン呪文はルーンカルトごとに独特のものを提供していますが、一部のルーン呪文は多くのカルトに共通で使用されています。このような呪文を標準ルーン呪文(Standard Rune Spell)と言います。ここではこの標準ルーン呪文のうち RQ3 では登場しないものや効果が大きく違うものについて簡単に説明します。

《潜伏(Concealment)》
この 2ポイント呪文は戦闘呪文の《透明(Invisibility)》と《静寂(Silence)》の両方の効果をもち目にも見えず音にも聞こえなくなります。また《透明》と違って受動呪文扱いなのでダメージ等を受けても切れません。自分から攻撃したり呪文を使用した場合には攻撃や呪文を使っているラウンドだけ姿を現わしますが、次のラウンドにまた消えることができます。

《霊体化(Discorporation)》
肉体から抜け出して精霊(Spirit)として活動できてます。精霊状態の間も戦闘呪文を使用することができ、精霊戦闘をしかけることもできます。通常は肉体の近くから離れられませんが、呪文を 1ポイントスタックすることに 5km まで離れることができるようになります。残さられた肉体は昏睡状態になり無防備となるので注意が必要です(肉体が破壊されると肉体の戻れなくなります)。

《エレメルンタル退散(Dismiss Elemental)》
文字どおりエレメンタルを退散させます。この呪文には 1ポイント、2ポイント、3ポイントの三種類の呪文があり、それぞれ小、中、大のエレメンタルまで退散できます。退散するには POW 対抗ロールでエレメンタルに勝利する必要があります。

《神性介入(Divine Intervention)》
司祭用の特別な呪文で 1ポイントスタックするごとに 10% の確率で神性介入を求めることができます。もちろん再使用不可で取得するには再度 POW を支払う必要があります。神性介入に失敗した場合には呪文は消費されず、そのまま再使用できますが、同じ内容の神性介入を続けて試みることはできません。

《延長(Extension)》
RQ3 にも同名の呪文がありますが少し効果が違います。この呪文には 1ポイント、2ポイント、3ポイントの三種類があります。1ポイントの呪文は持続中の戦闘呪文 1つの持続時間を 1時間に延ばすことができます。2ポイントの呪文は戦闘呪文を 6時間に延ばすか、ルーン呪文の持続時間を 1時間に延ばすことができます。3ポイントの呪文は強力で戦闘呪文の持続時間を1週間に延ばすか、ルーン呪文の持続時間を6時間に延ばすことができます。

《マトリック作成(Matrix Creation)》
RQ3 の Spell Matrix Enchantment (HJ訳の呪文封印呪付)にあたる呪文です。込めることができるのは戦闘呪文だけで、スタックしたポイント分までの戦闘呪文を込めたマトリック(魔方陣)を物体に刻むことができます。この呪文は再使用不可で呪文の POW が消費されるため RQ3 のような追加の POW は必要ありません。

《数多の呪文(Multispell)》
1ラウンドに呪文は1回までという制限を超えて持続時間(15分)中は戦闘魔術を同時に複数使用できるようになります。この呪文には1ポイント、2ポイント、3ポイントの三種類が存在し、それぞれ2個、3個、4個まで戦闘呪文を同時に使用できます。同時に使用する呪文の種類や対象はバラバラでも構いません。それぞれの呪文に一時的な POW 消費は必要ですが、呪文は同時詠唱できるので単独で使用したのと同じ SR にそれぞれ発動します。

《呪文伝授(Spell Teaching)
この呪文により自分の知っている戦闘呪文を他人に教えることができます。呪文を教えるには一週間かかり、その間は生徒と特殊な精神結合(Mind Link)状態にあります。。呪文伝授はカルトの主な収入原なので呪文を教える際には必ず料金を取ってカルトに収めなければなりません。

《視界(Vision)》
この 2ポイント呪文の対象者は自分の視界を最大で 240メートル離れた場所に設定することができます。その位置から 180度の視界を持つことができます。視界は 1ラウンドに3メートルづつゆっくりと移動させたり、180度向きを変えることができます。

--
今回はルーン呪文のルールについて説明しました。ルーン呪文は今回紹介したような標準呪文ではなく、カルトごとの独特の呪文が楽しいので是非カルト本を読んでみてください。次回はルーンカルトの位階について書きたいと思います。

2016年6月17日

RQ2 紹介 - 第09回 基本魔術(戦闘魔術)

今回から魔術関係のルールについて説明します。まずは誰でも使える基本魔術(Basic Magic)について説明します。この魔術は戦闘の際に使用することが多いため、一般の人々には「戦闘魔術(Battle Magic)」と呼ばれています。


●戦闘魔術の基本的な仕組み

RQ2 の戦闘魔術は「術者の個人の精神の力(POW)を使用して、意志で現実という織物を一時的に改変する。自然には復元力があるため短かい時間で元に戻る」というのが基本的な仕組みになっています。RQ3 の精霊魔術(Spirit Magic)とシステム的にほぼ同じなのですが原理の部分が異なっており精霊は関係していません。


●POW の一時的な消費

RQ2 の戦闘魔術の使用には一時的な POW の消費を伴ないます。POW は魂の強さであり魔力を格納する許容量とされています。 RQ2 では魔術は魂を削りながら唱えることになります。

実際の運用的には RQ3 のマジック・ポイント(MP)の消費と同じなのですが、マジック・ポイント(MP)という用語が発明される前のゲームなので「一時的な POW」の消費という用語で説明されています。

RQ3 のシステムとの最も大きな違いは、MP ならばゼロになっても気絶するだけですが、RQ2 の POW は魂なので一時的にでもゼロになってしまえばこの世から存在が消滅してしまいます(肉体は残るのですが魂が消えて無くなります)。 そのため少なくとも 1ポイント POW は絶対に残しておかなければなりません。


●使用した POW の回復

呪文などに消費した一時的な POW は 6時間ごとに 1/4 づつ回復していきます。だいたい一晩寝れば 1/4 回復、一日経てば全回復といったペースです。


●戦闘魔術の呪文の学習

戦闘魔術の呪文を学習するには、その呪文を知っているルーン司祭から《呪文伝授(Spell Teaching)》というルーン魔術を使って教えてもらう必要があります。

基本ルールブックに記載されている戦闘魔術の呪文は全てのカルトが知っており、どのカルトからでも教えてもらえます。敵対カルトの信者でなければ部外者でも料金さえ払えば呪文を教えてくれます。呪文を教えてもらうには呪文ごとに決まった金額を支払う必要があり、どのカルトでも原則として呪文の値段は同じです。一方で呪文の教示はカルトの主要な収入源となっているため、たとえ身内やパーティーの仲間だからと言って無料で教えてはいけません(破ると神罰が下ります)。

呪文の学習には 1つにつき 1週間かかり、この間は呪文の学習に専念する必要があります。可変呪文を覚えるためには 1ポイントの呪文から順番に覚えてゆく必要があります。例えば《治癒(Healing) 3》を覚えるためにはその前に《治癒 1》と《治癒 2》を修得する必要があり料金も個別に支払う必要があります。


●戦闘呪文の記憶の上限

学習することのできる呪文の数に上限は存在していませんが、即座に使用できるよう心に記憶できる呪文のポイント数は INT の値までに制限されます。記憶している呪文を別の学習済みの呪文と入れ換えるためには呪文のポイントごとに 1時間かかります。

可変呪文は学習している以下のポイント数で記憶することもできますし、記憶している以下のポイント数で使用することもできます。


●焦点具(focus)

多くの戦闘呪文では素早く集中するために焦点具(foucs)が必要となります。一般に自分自身の身体に呪文をかける場合には焦点具は必要ありませんが、それ以外を対象とした呪文は焦点具が必要です。

焦点具は一般的には長さ 50cm 程度の魔法杖(ワンド)にルーンを刻んだものを使用します。呪文ごとに個別のルーンを刻み、このルーンを見ることによって魔力を集めます。それから魔法杖(ワンド)を呪文の対象に向けることにより、対象に呪文を正確に照準できるようになります。

1本の魔法杖(ワンド)には最大で20個のルーンを刻める大きさがあり、個人の覚えている呪文全て刻むのに大抵は十分です。長い杖(スタッフ)ならばルールブックにある全ての呪文を刻んでも余裕があります。焦点具を準備する手間を省略するため緊急用の呪文の一つを指輪に刻んでおくようなこともできますし、《鋭き刃(Bladesharp)》のような武器にかける呪文の焦点を対象となる武器に直接刻んでおくこともよく行なわれています。個々の焦点の作成方法に関する知識も呪文の学習費用の中に含まれています。

いざという時は焦点具無しでも呪文をかけることができますが、その場合には心の中に呪文の焦点となるルーンと呪文の対象をを思い浮かべるために 1ラウンドの時間集中して準備しなければならず、2ラウンド目にようやく呪文をかけることができます。


●呪文の強化

戦闘呪文の投射には呪文のポイント分の一時的な POW の消費します。その際にその呪文に必要な POW を超えて、一時的な POW を費やすことができます。これにより投射時に相手の《対抗魔術(Countermagic)》などを突破しやすくなります。呪文の効果には変化がなく投射後には強化は残りません。あくまでも投射の瞬間のみの強化となります。


●戦闘呪文の投射

呪文に抵抗されない場合の成功率は固定で 95% です(96-00 以外は成功)。自分に投射する場合、意志のない物体に投射する場合、対象が気絶している場合、対象が呪文を受け入れる積極的な意志を持っている場合には抵抗はないものとみなします。RQ3 に比べて呪文の成功率が高いので、いざという時に治癒呪文に失敗して死亡などいうことはあまり起きません(まあ稀には有ります)。

一方で対象が呪文に積極的に対抗している場合や、対象が呪文に気付いておらず無意識に抵抗してしまう場合には、呪文の成功率は使用者と対象の POW の能力値の対抗ロールによって決まります。POW が同じならば成功率 50% で、POW が 1違うごとに成功率が 5%上下します。この場合の術者側の POW はこの呪文によって消費する直前の値を使用します。

呪文に失敗した場合(相手が抵抗した場合など)には呪文に使用した POW は減少しますが、呪文の効果は一切現われません。


●戦闘中の呪文投射

1戦闘ラウンドにつき呪文は一回しか投射できません。ルーン呪文の《数多の呪文(Multispell)》を使用中のみ例外です。

戦闘呪文は前に書いたように 「DEX SR」 + 「呪文のポイント数 - 1」 の SR に使用します。焦点具の準備が必要な場合にはさらに +5 SR されます。

呪文をかけている最中(呪文使用の SR より前)にダメージを受けたり、予期しない出来事により集中が途切れた場合、呪文の詠唱は中断してしまいます。この場合 POW は消費されませんが、呪文は次のラウンドに最初からやりなおさなければなりません。

★ランタスの冒険

ランタスはトロウルキン 2体と戦闘になりました。2対1では分が悪いため、接敵前にまず 1体を戦闘呪文で無害化したいと考え、知っている呪文の中で最も有効そうな《惑い(Befuddle)》の呪文を使うことにしました。

《惑い(Befuddle)》は 1ポイント呪文なのでランタスの DEX SR である SR 2 に使用可能ですが、今回は焦点具としてワンドを準備しなければならないため、+5 SR されて SR 7 になります。トロウルキンが防御魔術を使っていることはなさそうなので追加 POW での強化は行なわないことにしました。

もちろんトロウルキンは呪文に抵抗するため呪文の成功率は POW対POW の対抗ロールになります。レフリーは目標のトロウルキンの POW は 7 だと宣言しましした(トロウルキンの POW は 2D6 なのでこれが平均値です)。ランタスの POW は 13 なので呪文の成功率は 50 + (13 - 7)×5 = 80% になります。

ランタスは 63 を振って見事に成功、そのトロウルキンは混乱して敵味方が分らなくなり攻撃して来なくなりました。呪文で POW を消費したのでランタスの POW は現在 12 に減少しています。これ以上 POW を減らしたくなかったので、ランタスはその後は剣を抜いて1体づつ順番にトロウルキンを倒しました。


●POWの成長

POW は訓練で成長させることはできませんが、冒険において呪文や精霊戦闘のPOW 抵抗ロールで相手を打ち破った場合にはシナリオ終了後、POW の最大値が増加する可能性があります。ただし相手が弱過ぎて抵抗ロールの成功率が 95% 以上の場合には成長しません。

抵抗ロールに勝利したら、冒険が終った後に 1週間静かに過ごすことにより POW獲得ロールが行なえます。D100 をロールして (種族上限 - 最大POW)×5 以下をロールすると POW が成長します。POW が成長する量は再度 D100 をロールして以下の表で決定します。POW は種族上限(人間ならば 21)を超えることはできず超えた分は無駄になります。

D100 POW増加
01-103 point
11-402 point
41-001 point

★ランタスの冒険

前回トロウルキンの抵抗を破って呪文を成功させたことで、冒険の終了後ランタスは POW の成長を試みることができます。ランタスの現在の POW は 13 なので、成功率は (21 - 13)×5 = 40% です。ダイス目は 39 でギリギリ成功しました。 
再度 D100を振り次は 84 だったので 1ポイント成長し、ランタスの POW は 14 になりました。トロウルキンは呪文に弱いという知恵をつけたランタスは、次にトロウルキンを見かけたらまた呪文をかけておいしく POW を成長させようと目論むのでした。


●戦闘魔術のタイプ

戦闘魔術の呪文には以下の2種類があります。

受動(passive)

ほとんどの呪文がこれになります。呪文の投射後は術者が意識しなくても呪文は効果を発揮し続け、解呪(Dispell)されるか持続時間が切れるまで残り続けます。

能動(active)

基本ルールブック記載の呪文の中では《火の刃(Fireblade)》と《透明(Inbisibility)》のみがこれに相当します。この二つの強力な呪文は術者が意識を呪文に集中している間のみ効果が持続します。呪文に集中しながらでも戦闘したり移動したりできますが、他の呪文を唱えたり、ダメージを受けたり、驚いたりすると、持続時間内であっても呪文の効果が切れます。ルーン呪文の《延長(Extension)》を併用すると受動呪文に変えることができます。


●戦闘魔術の持続時間

戦闘魔術の呪文の持続時間には以下のものがあります。

瞬間(instant)

主として検知(Detect)呪文がこれに当ります。呪文を唱えたラウンドの間のみ効果があり、すぐに効果が消えます。

永久(permanent)

治癒(Healing)呪文などがこれに当ります。呪文の発動は一瞬ですがその結果は永遠に残り続け解呪(Dispell)できません。

一時的(temporal)

多くの呪文がこれに当り、呪文の効果は2分間(10ラウンド)の間だけ持続します。10ラウンド目の記録フェイズに効果が消滅します。戦闘にはたいてい十分ですが、それ以外の用途には以外と短かいので要注意です。ルーン呪文の《延長(Extension)》を併用することにより持続時間が延ばせます。

その他

基本ルールブックに載っている呪文の中では《彼方見(Farsee)》呪文のみが 4時間という特殊な持続時間を持っています。


●戦闘呪文の到達距離

戦闘呪文の到達距離は呪文ごとに決まっています。主なもには以下のような距離があります。あくまでも呪文発動時の距離であり、一旦呪文がかかったら効果範囲外に移動しても呪文の効果は残り続けます。

接触(touch)

《治癒(Healing)》呪文や《修復(Repair)》呪文のような一部の呪文は術者が対象に触れている必要があります。

40メートル

《探知(Detect)》呪文や《発火(Ignite)》や《消火(Extinguish)》などの呪文がこれに当ります。他の呪文より少し距離が短いですが気にしている人はほとんどいないと思います。

80メートル

ほとんどの呪文がこの距離になります。飛び道具の射程よりは少し短いですが、通常の使用にあたって距離が問題になることはほとんどありません。

160メートル

基本ルールブックに載っている呪文の中では、《念話(Mindspeech)》のみがこの距離になります。何故これだけ距離が長いのか理由はよくわかりません。


●戦闘呪文のサンプル

多くの戦闘魔術の呪文の効果は RQ3 の精霊呪文とほぼ同じですが微妙に効果や制限が異っている場合があります。例えば多くの戦闘用の可変呪文は最大で 4ポイントまでしか修得できません。

全部の呪文を紹介するのは何なので、ここでは RQ3 には無くて RQ2 にしか存在しない独特な呪文を簡単に紹介します。

《探知の探知(Detect Detection)》
物や人にかけて、対象が探知呪文によって探知されたら、術者はそれを知ることができます。持続時間が短いせいもあって使いどころが難しい呪文です。PC にはあまり人気がないようです。

《生命探知(Detect Life)》
付近にいる生命体を探知します。対象のだいたいの SIZ もわかります。RQ2 には便利な《第二の眼(Second Sight)》の呪文がないので、これが基本の呪文の一つです。

《精霊探知(Detect Spirit)》
付近にいる精霊を探知します。対象のだいたいの POW もわかります。精霊は RQ2 でも強敵なので、これもある意味、必須呪文です。

《アンデッド探知(Detect Undead)》
近辺にいるアンデッドを探知します。対象のだいたいの SIZ もわかります。アンデッドは上記の《生命探知》や《精霊探知》には反応しないのでこの呪文が必要になります。

《罠探知(Detect Traps)》
意図的に設置された罠を探知します。物理的な罠だけでなく魔法の罠や待ち伏せすらも探知でき大変便利ですが、自然にできた落し穴のような悪意のないものは探知できないので要注意です。

《探知空白化(Detection Blank)》
人や物にかけてこの呪文のポイント以下の探知呪文で探知できなくします。隠密行動の時にかけておけば魔法的にも探知されなくなれます。マジック・アイテムを《魔術探知》で検知されないように隠す時などにも使えます。

《ハーモナイズ(Harmonize)》
この呪文にかかった対象はできるだけ術者と同じ行動をするようになります。自分と同じ形態の生物にしか対象にできません。要はジャカベアの能力の呪文版ですが、使い方次第で転倒させたり崖から落としたり結構凶悪です(だからRQ3 では削除されたのかも)。

《透明(Invisibility)》
他人の注意を引かなくなり透明のように行動できます。呪文を使用したり戦闘したら呪文の効果は終了します。戦闘魔術の呪文としてはかなり有効な呪文で偵察などに最適です。

《精霊呪縛(Spirit Binding)》
精霊戦闘で倒した精霊をクリスタルや動物の中に呪縛します。動物は使い魔として特別に育てたものでないと駄目なので、通常はクリスタルの中に呪縛することになります。シャーマンでなくても精霊を呪縛できるので PC には大人気の呪文の一つです。

《異種族治癒(Xenohealing)》
《治癒(Healing)呪文》は自分と同じ形態の生物しか癒すことができないため、他の生物を治癒するのに必要になります。主に馬などの乗騎を治療するのに使用されます。徒歩のパーティーだと誰も持っていなくて友好的なニュートリング(しっぽがあるので異形扱い)が治せなくて困ったことも。

--
以上、戦闘魔術の説明でした。RQ3 との違いで一番大きいのは成功率が 95%とかなり信頼がおける点ですかね? 次回はルーン魔術について説明します。

2016年6月15日

RQ2 紹介 - 第08回 戦闘 (遠距離攻撃、身体ダメージ)

戦闘の続きということで、今回は遠距離攻撃について説明します。
その後、身体部位とダメージについて説明します。


●遠距離武器の攻撃

射撃武器(弓やスリング)や投擲武器(ジャベリンや投げ斧)などによる攻撃は有利なため近接武器よりも早いタイミングで判定可能です。準備ができてさえいれば DEX SR に 〈武器攻撃〉スキルをロールして成功すれば命中したことになります。


●遠距離武器使用時の受け

射撃攻撃には通常両手が必要なため盾などと併用することができず受けはできません。スリングのみが例外で〈スリング攻撃〉は〈小型盾受け〉と同時に実行できます。投擲武器(ジャベリン等)は任意の盾と組み合わせて使用することができます。

非常時には攻撃をあきらめて弓やクロスボウなどを使用して相手の近接攻撃を受け流したいと思うかもしれません。この場合にはスタッフ等と同じ扱いで〈モール受け〉スキル(持っていない場合は基本値の20%)を使用します。もちろんそのラウンドにはその武器を射撃攻撃に使用することはできません。あと射撃武器は HP が少なく簡単に壊れてしまうので要注意です。


●射撃武器の準備

射撃武器や投擲武器は武器の種類によってその準備にかかる時間が異なります。射撃速度が S/MR と書かれている武器は準備(弓に矢を番えたり)するのに、通常の 5 SR で済み、ストライクランクさえ足りていれば、同じ戦闘ラウンドに準備して射撃を繰り返して複数回攻撃することもできます。

射撃速度が 1/MR となっている武器は 1ラウンドに1回しか攻撃できず、発射した後のラウンドの残り時間全てを次弾の準備に使用しなければなりません。射撃速度が 1/2MR とか 1/3MR とかになっている場合には、2ラウンドに1回とか 3ラウンドに1回しか攻撃できません。残りの時間は全て次の弾の準備をしているとみなします。

★ランタスの冒険

冒険生活の中でランタスは弓射撃と呪文をいくらか覚えて遠隔戦闘も可能になりました。ブルーと戦闘になったランタスは接近する前にできるだけ多く連射したいと考えています(彼はブルーと接近戦をしたくないのです)。前のラウンドに弓を準備して矢を番えている場合には彼の DEX は 13 なので DEX SR の 2 に射撃判定できます。そこから次の矢を番えるのに固定 5 SRかかり、さらに射撃に DEX SR が必要になるため二射目は 2 + 5 + 2 で SR 9 に判定します。さらに次の矢を番えたいところですが、9 + 5 で 12 を超えるのでそれはできません。
                          
1234567 89101112
射撃 矢を準備して射撃

2ラウンド目は矢を番えていない状態から始まるので 5 + 2 で SR 7 に射撃が実行できます。そして矢を番えるのに 5 SR 使って 7 + 5 で 12 SR 内に何とか次の矢の準備まで終ります。
                          
1234567 89101112
矢を準備して射撃 矢の準備

3ラウンド目はまた SR 2 に普通に射撃することもできますが、目前にブルーが接近してきているためランタスは覚えたばかりの呪文を使ってみることにしました。彼は《数多の矢(Multimissile) 2》の呪文を使用して射撃することにします。彼はこの呪文の焦点(focus)を自分の弓自体に刻んでいるため特別な準備は必要ありません。2ポイントの呪文なので DEX SR に +1 されて SR 3 に呪文がかかります。矢は既に準備してあるので、そこから DEX SR 後の SR 5 に 1本の本物の矢と 2本の魔法の矢が発射されます。これでもブルーを倒せなければ、残りの SR を使って弓を落として盾を準備することができます(剣の準備は間に合わないので次のラウンドになります)。
                          
1234567 89101112
呪文 射撃 盾の準備



●遠距離攻撃の射程

投擲武器(ジャベリンや投げ斧)の射程は最大20メートル固定でそれ以上は届きません。射撃武器(弓やクロスボウス)は武器表に書いてある射程が有効射程で複合弓(コンポジットボウ)なら 100m です。そこまではスキルの値でそのままで命中します。有効射程の 1.5倍まではスキル 1/2、有効射程の 2倍まではスキル 1/4 で判定できます。それ以上遠い場合は命中しません。


●遠距離攻撃に対する追加ダメージ

投擲武器(ジャベリンや投げ斧)は STR と SIZ による追加ダメージを半分(端数切上げ)だけ適用できます。射出武器(弓やクロスボウ)には追加ダメージは適用できません。


●遠距離攻撃に対する避け

RQ2 には《回避(dodge)》スキルはありませんが、遠距離攻撃をされそうな場合に「遠距離攻撃に対する避け」を宣言することができます。「遠距離攻撃に対する避け」をしているラウンドは、通常の半分の速度で移動すること以外は何もでません(受けや防御値も使用できません)が、相手の遠距離攻撃の命中率が半分になります。


●遠距離攻撃と移動

自分が移動している間は(馬などに乗って移動しているのでない限り)遠距離攻撃を行うことができません。攻撃の対象が移動している場合には移動の方向によって射撃に以下のような修正を受けます。
  • 相手が真っ直ぐ近づいて来る場合: 修正無し
  • 相手が真っ直ぐに離れていっている場合: 修正無し
  • 相手が射線を横切るように移動している場合: 命中率1/2
この修正は前述の「遠距離攻撃に対する避け」や「射程による修正」などと重複するので、命中率が 1/4 や 1/8 になることもあります。


●身体部位HPと全体HP

キャラクター作成の所で紹介したように RQ2 では身体部位ごとの HP と全身の総合 HP の二種類があります。総合HPが 2 以下になると意識を失い、ゼロになると死亡します。

武器による攻撃の命中を受けた場合には、(人間ならば)以下の表で D20 をロールして命中した部位を決定します。RQ3 と違って近接用と遠隔用で分かれておらず、どちらもこの表を使用します。

D20 部位
01-04右脚(Right Leg)
05-08左脚(Left Leg)
09-11腹(Abdomen)
12 胸(Chest)
13-15右腕(Right Arm)
16-18左腕(Left Arm)
19-20頭(head)               

これは RQ3 の近接用と同じ表で、体幹(頭胸腹)には当り難く(30%)、腕や脚に命中しやすく(70%)なっています。このおかげで一撃で即死する可能性が低くなっています(死ぬ時は死にますが)

武器のダメージは命中部位に着けている鎧で軽減された後、命中部位の部位HPと、総合HPの両方を同じ量だけ減らします。ただし腕や脚に一撃でその部位の HP の 2倍を超えるダメージを受けたとしても、その腕や脚の HP の 2倍までしか総合HPから引かれません。RQ3 と違ってあくまでも一撃で受けた場合のみで、二撃以上同じ部位に受けた場合の累積に上限はないので死亡することもあります。


●遮蔽(Protection)

物陰などに隱れていて身体の一部のみが見えている敵に対して射撃を行なうような場合、通常の成功率で命中判定を行なって、命中した身体部位が隠れている部位だった場合には身体ではなく遮蔽物に命中したと判定します。このルールは遠距離攻撃だけでなく近接攻撃にも適用可能です。


●部位HPがゼロになった場合の効果

各部位の HP がゼロになった時には以下のような影響を受けます。RQ3 と違って HP がマイナスになることはありません。

脚(LEG)

その脚が使用不能になり転倒します。そのラウンドの残りの行動はキャンセルされます。続くラウンドは地面に倒れたまま戦闘を継続できます。

腹(ABDOMEN)

出血し両脚が使用不能になり転倒します。そのラウンドの残りの行動はキャンセルされ、その後のラウンドは自分自身を治癒する以外には何もできません。2フルターン(10分)以内に治療できなければ出血により死亡します。

胸(CHEST)

転倒し出血による咳込みで何もできなくなります。自分自身を治癒すことすらできません。 2フルターン(10分)以内に誰かに治癒してもらえなければ出血により死亡します。

腕(ARM)

その腕が使用不能になり腕に留めているのでない限り持っている物は落としてしまいます。立ち続けることはでき残った腕で戦闘を続けることもできます。

頭(HEAD)

意識を失ない転倒します。 2フルターン(10分)以内に治癒してもらえなければ死亡します。


●一撃で大きなダメージを受けた場合の効果

RQ2 では部位HPはマイナスになりませんが、一撃で大きなダメージを受けた場合には追加効果が発生します。


腕や脚のHPの2倍を超えるダメージを受けた場合:

一撃で四肢に部位HPの 2倍を超えるダメージを受けた場合、その部位の HP の2倍を超える分のダメージは総合HPには影響を与えません。その部位は使用不能になり、そのショックにより治療されるまでは戦闘はできなくなります。自分を治癒することのみが可能です。

腕や脚のHPより 6ポイント以上のダメージの場合: 
さらに一撃で四肢に部位HPより 6ポイント以上のダメージを受けた場合は上記に加えて、その部位は切断されるか治癒不能の不具になります。 2フルターン(10分)以内に 6ポイント以上の《治癒(Healing)》呪文(もしくはルーン呪文)で治療した場合のみ再接合することができます。

頭、胸、腹のHPより 6ポイント以上のダメージの場合: 
一撃で頭、胸、腹に部位HPより 6ポイント以上のダメージを受けた場合は即死します。神性介入を願う時間すらありません(ルーンロードなら死んだ後からでも神性介入を願うことができますが)。


●ダメージの治療

基本的に身体部位ごとに治療を行ないます。部位HPが回復した場合には同じ量だけ総合HPも回復します。

治癒呪文(Healing Spell):
《治癒(Healing)呪文》は治療者の選んだ一つの部位に対してのみ効果を持ちます。出血を止めるには 2ポイント以上の《治癒(Healing)》呪文が必要となり、切断されたり不具化された四肢を回復するには 6ポイントの呪文が必要となります。また通常の《治癒》呪文は同じ部位への連続使用が制限されおり、同じ身体部位へは 5ラウンド(1分間)間をあけなければ効果がありません。

治療薬(Healing Potion):
軟膏などの塗り薬(外用薬)はそれを塗布した一つの部位のみ対してのみ効果があります。飲み薬(内服薬)は傷を負った部位からランダムに選んで治癒し、ポイントが余れば次の部位をランダムに選んで順次ポイントがなくなるまで治癒します。

自然治癒(Natural Healing):
1週間ごとにそれぞれの部位が 1 HP ずつ回復します。

毒や一部の呪文(《精霊切断》や《太陽槍》)などによる CON へのダメージは上記のような通常の治療法では回復しないので注意ください。《CON回復》のルーン呪文を使用するか再訓練が必要です。

 --
今回で戦闘関連のルールは終了です。次回から魔術関連のルールについて説明する予定です。

2016年6月13日

RQ2 紹介 - 第07回 戦闘 (攻撃、受け、防御)

今回は戦闘のメインとなる近接武器による攻撃、受け、防御について説明します。


●攻撃(Attack)

近接武器の攻撃の判定は「DEX SR + SIZ SR + 武器 SR」に行ないます。武器を抜いたり、不意打ちを受けた場合にはその分が SR に加算されます。使用した〈武器攻撃〉スキルを振って成功失敗を判定します。相手が〈受け〉に失敗したり〈受け〉をしなかった場合には命中部位をロールして相手の身体にダメージを与えることができます。その部位に着けている鎧の分だけダメージが減少します。

攻撃ロールに対して以下のような状況修正が適用されます。
  • 相手が地面に倒れていたり、移動不能な場合は攻撃に +20%
  • 相手がこちらの攻撃に気付いていない場合には攻撃に +20%
  • 攻撃側が地面に倒れている場合には攻撃成功率が 1/2 になり、身体武器以外では STRと SIZ による追加ダメージを足せない。
  • 相手が完全に防御不能な場合には D100 で 96-00 以外なら相手を即死させられる(ファンブルは通常の武器攻撃スキルの確率で発生する)

●受け(Parry)

相手の攻撃を盾で受け止めたり武器や受け流したりできます。武器や盾の準備さえできていればラウンド中のいつでも対応できます(自分の DEX SR より前でも構いません)。使用した〈武器受け〉スキルを振って成功失敗を判定します。盾で受けた場合と、武器で受けた場合で以下のように処理が異なります。

盾による受けに成功した場合
相手の武器のダメージを盾の吸収点(Absorbs)の分だけ減少させることができます。ダメージがゼロ以下になればダメージを受けません。ダメージを全部止められなかった場合には残りは命中した身体部位へと適用されます。もちろん鎧は有効です。

武器による受けに成功した場合
相手の攻撃が成功している場合には、攻撃した武器のダメージは身体ではなく受け流しに使用した武器に適用されその分だけ武器の HP が減少します。相手の攻撃が失敗している場合には、受けに使用した武器のダメージをロールして攻撃側の武器の HP を減少させます。

ただし小さな突き刺し武器(ダガー、ショートソード、レイピア)は質量が十分でないため、長柄の武器(槍、ポールアクス、モール)は柄の部分を使用して受けたり受けられたりしているとみなすため、相手の武器にダメージを与えることはできません。


●攻撃と受け結果

ちょっと分かり難いので整理すると、盾を使って受けに成功した場合には、盾が追加の鎧のように働きダメージを減少させます。盾は鎧と同じく壊れませんが止められなかった残りのダメージは身体に適用されます。これは RQ3 の受けの処理と同じです。

攻撃成功 攻撃失敗
盾受け成功 盾の分ダメージが減少する
残りは身体部位にダメージ
効果無し
盾受け失敗 身体部位にダメージ 効果無し      

一方で武器を使って受けに成功した場合には RQ3 と異なり武器が追加の身体部位のように働き、ダメージは武器の HP を減少させます。ダメージが武器の残り HP を超えていたとしても武器が壊れるだけで、身体にはダメージは及びません。

攻撃成功 攻撃失敗
武器受け成功受けた武器にダメージ  攻撃した武器にダメージ
武器受け失敗身体部位にダメージ 効果無し

武器受けに成功した場合には自分の武器か相手の武器、どちらかの HP が減ることになるので武器破壊がしばしば発生します。特に相手がグレートソードとかを使ってるようなら、それはもうポキポキ折れます。予備の武器を持ち歩くかとか《修復(Repair)》呪文を覚えるとか考慮した方が良いかもしれません。


●防御値(DEF)の使用

RQ2 には RQ3 やクトゥルフなどでおなじの〈回避(Dodge)〉スキルがありません。かわりに防御値(ディフェンス)という属性値があります。この属性値はスキルと同じようにパーセントで表記されますが直接ロールすることはなく、その数値分だけ相手の攻撃スキルを減らして命中を難しくしてくれます。

複数の敵を同時に相手にする場合や、複数回攻撃してくる相手の場合にはどの攻撃に対して防御値を適用するかを予め宣言する必要があります。また防御値を 5% 単位で自由に分割して複数の攻撃に適用することもできます。防御値が十分に大きいのでない限り分割するのはあまり得策ではないことが多いです。

★ランタスの冒険

トロウキンとの戦いは続いてます。次はトロウキンの攻撃です。トロウキンの〈両手槍攻撃〉スキルは 30% ですが、ランタスの防御値 10% が適用されため、成功率は 20% になります。レフリーのロールは 28、防御がなければ命中していた所ですが外れです。ランタスの方も盾受けに失敗してしまいますが事無きを得ました。次のラウンドのランタスの攻撃がトロウルキンの頭に命中してトロウキンは倒れました。

●防御値の成長

防御値(DEF)もスキルと同じように成長しますが、スキルに比べて成長は難しく、非常にゆっくりとしか成長しません。防御値がゼロ以下の場合にはまずは能力値を訓練して防御値をプラスにする必要があります。ディフェンスは訓練では成長させることができず経験によってのみ成長します。実戦で防御値が無ければ本来命中したはずだが、防御値のおかげで助かった場合に経験チェックを得ることができます。そしてシナリオ終了後に D100 で INT 以下(現在の値によらずINT以下です)をロールできれば +5% 成長します。

★ランタスの冒険

先のトロウキンの戦いでランタスは防御値で命中を防いだので経験チェックを得ました。シナリオ終了後、街に帰って今回のできごとを考察したランタスは防御値の成長ロールを行います。ランタスの INT は 15 なので D100 をして15 以下が出れば成功です。出目は 83、残念ながら今回の成長はありませんでした。

●クリティカル命中(Critical Hit)

攻撃がクリティカル命中した場合に、相手の受けがなければ相手の鎧や魔法による防御を無視して、そのままのダメージを身体部位に与えることができます。

クリティカル命中に対して相手が〈盾受け〉を成功した場合には、攻撃武器のダメージを 2倍して処理します。盾で吸収し切れなかった分は身体に適用しますが、このダメージには鎧は有効です。

クリティカル命中に対して相手の〈武器受け〉を成功した場合には、攻撃武器のダメージを 2倍してを受けをした武器の HP に適用します。(小さな突き刺し武器や、長柄武器の場合にはクリティカルでも相手の武器にダメージを与えることはできません)


●クリティカル受け(Critical Parry)

受けでクリティカルの出目を出した場合にはクリティカル受けになります。厳密に言えば受けのクリティカルはオプションルールとなっていますので使用しない選択もできます(使用しない人いるのかな?)

盾による受けがクリティカルした場合には盾の吸収点によらず全てのダメージを止めることができます。貫通攻撃でも盾に刺さらすに弾き返します。

武器による受けがクリティカルした場合には相手の攻撃を受け流して無効化できます。自分の武器を傷つくこともありません。

クリティカル命中に対してクリティカル受けをした場合には、通常の命中成功と通常の受け成功として処理します。


●ファンブル(Fumble)

攻撃がファンブルになった場合には「攻撃ファンブル表」でロールして結果を適用しなればなりません。受けがファンブルになった場合にも「受けファンブル表」でロールします。厳密にいえば受けファンブルもオプションルールです。

★ランタスの冒険

ランタスと彼の友人のグリカはスケルトン 1体と戦っています。スケルトンはスケイルメイルを着てショートスピアとラウンドシールドを装備しています。初心者冒険者にとってスケルトンはそこそこ強敵ですが、二人がかかりならば何ということはないはずです。

ランタスは余裕の笑みを浮かべながら攻撃しますが、なんと出目は 98、ファンブルです。攻撃を外したのみならずファンブル表でロールしなければなりません。出目は 61、「足首を捻って転倒、このラウンド受けはできない。起き上がるのに D3ラウンド、5D10ラウンドの間移動速度半分」となりました。いきなりピンチです。ここはグリカに頑張ってもらうしかありません。


●貫通(Impaling)

小さな突き刺し武器(ダガー、レイピア、ショートソード)、突き刺し武器(槍やパイク)、射出武器(弓やクロスボウ)などの攻撃ロールが攻撃成功率の 1/5(端数切捨て)以下だった場合には貫通(Impaling)が発生します。

貫通した場合にはダメージが「その武器の可能な最大ダメージ + 武器ダメージロール + 追加ダメージ」になります。貫通は威力が RQ3 に比べても大きいのでとても危険です。

貫通した武器は相手の身体に突き刺ささり、その場で抜いて取り戻すには攻撃スキルをロールして成功率の 2/5以上を出さなければなりません。抜けかなった場合には相手の身体に刺さったままになり、手を離さなければ次のラウンドからラウンドの最後に抜く試みができ、通常の武器攻撃スキルに成功すれば抜くことができますが、ファンブルすると武器が壊れてしまいます。

★ランタスの冒険

次はグリカの攻撃です。グリカの斧よる一撃はスケルトンの左腕を砕いて盾を落とすことに成功しました。

スケルトンの攻撃の番です。このスケルトンの攻撃命中率は本来 45% ですが、ランタスは転倒しているので +20% して 65% になります。レフリーの振った命中判定の出目は無情にも 10、貫通です。ランタスは受けができないのでそのまま命中部位の左脚に当ります。貫通のダメージは (6+1) + (1D6+1)、ロールは3だったので、11 ダメージです。ランタスは脚に5ポイントの脛当てをつけていますが、実ダメージ 6をくらって左脚の HP がゼロになりました(ランタスは既に転倒していますが、これで起き上がれなくなりました)、総合HPも 5 しか残っておらず大ピンチです。

スケルトンは刺さったショートスピアをすぐに引き抜こうとします。成功率は 45% の 2/5 なので 18% です。レフリーの出目は 43 で抜くことができませんでした。この後、盾も槍も無くしたスケルトンをグリカが難なく叩き壊しました。なんとか逃げ帰ったランタスは油断大敵という貴重な教訓を学んだのでした。

●貫通に対する受け

貫通攻撃に対して武器による受け流しが成功した場合には受けた武器や身体は何のダメージも受けません。突き刺し武器では相手の武器にダメージを与えることができないためです。

貫通攻撃に対して盾による受けに成功した場合は盾で吸収できなかったダメージは身体に到達しますが、武器は身体ではなく盾を貫通したことになり、盾に刺さったままになります。盾に刺さた武器は簡単には抜くことができず、戦闘終了後に 5戦闘ラウンドかけなければ抜けません。もしくは刺さった武器を攻撃して壊すことはできます。盾に武器が刺さったままでは盾の使用が困難になります。

  • 盾に ENC 2 以上の武器が刺さっている場合、その盾は使用不能になる
  • 盾に ENC 1 の武器が刺さっている場合には盾受けの成功率が 1/2 になる
  • 盾に ENC 0 の武器(矢とか)は合計で5本刺さると ENC 1と同様に扱う


●身体に貫通した武器(オプションルール)

身体に武器が貫通したままだと傷の治癒ができません。《治癒(Healing) 2》呪文や〈応急手当て(First Aid)〉スキルを使って出血を止めることは可能ですが HP を回復させることはできません。

武器が身体に突き刺さったまま移動した場合には、その武器のダメージの半分(端数切り捨て)を刺さっている部位に被ります。移動せずにその場で戦い続けるだけならダメージは受けません。

刺さっている武器を自分で抜く場合には D100 で (STR+CON)×2 以上をロールしなければなりません。抜いているラウンドは受け(Parry)も防御値(DEF)も使用できません。



●スラッシュ(オプションルール)

槍の貫通と同じように、剣や斧などの切断武器で攻撃命中率の 1/5(端数切捨て)以下をロールするとスラッシュ(slash)になります。スラッシュが発生すると武器のダメージを 2回分ロールして合計を適用します。貫通よりはダメージは少な目ですが、それでもかなりの威力になります。

貫通と同じくスラッシュした武器は相手の身体や盾に喰い込みます。即座に抜くためには武器攻撃スキルの 1/2 以下をロールしなければなりません。失敗した場合には次のラウンドから通常の攻撃の SR に再度試みることができます。抜くのにファンブルした場合には武器が手から離れてしまいます。


●クラッシュ(オプションルール)

貫通やスラッシュと同様に、メイスやモールのなどの打僕武器で攻撃命中率の1/5(端数切捨て)以下をロールするとクラッシュ(crush)になります。クラッシュが発生した場合、武器のダメージは変わりませんが、STR と SIZ による追加ダメージが「最大値 + ロールした値」になります。

人間ならばたいしたことなく、追加ダメージが 1D4 の戦士ならば 1D4+4 になるだけです(そこそこ痛いです)が、大型生物、例えば馬の蹴りとかがクラッシュすると 2D6+12 という悪夢のような追加ダメージになります。巨人の棍棒とかだともはや考えたくもない事態です。

--
今回は攻撃と受けの処理でした。次回は遠隔武器とダメージについての予定です。

2016年6月11日

RQ2 紹介 - 第06回 戦闘 (戦闘ラウンドとストライクランク)

今回から戦闘ルールについて説明して行きたいと思います。まずは時間および行動順序に関するルールについて説明します。


●フルターン(Full Turn)

大きな行動を決めるための時間単位で「5分」に当たります。あまり使用する機会はありませんが、ダンジョン内での移動時間を数える時などに使用します。注意深く歩くならば 1フルターンに 120m、散歩程度の速度ならば 240m、駆け足ならば 1000m 移動することができます。訓練された馬に乗っていればその2倍の速度で移動することができます。


●戦闘ラウンド(Melee Round)

戦闘において 1回の行動をする時間単位で 12秒にあたります。1フルターンは25戦闘ラウンドに相当します。ルーンクエストの戦闘はラウンド単位で進行し、各ラウンドは以下の 4つのフェイズよりなります。
 
        第1フェイズ     意図の宣言
        第2フェイズ     接敵していないキャラクターの移動
        第3フェイズ     近接戦闘、射撃、呪文などの解決
        第4フェイズ     記録

1. 宣言フェイズ

プレイヤーとレフリーは担当するキャラクターがそのラウンドに何をするか行動宣言をします。ラウンド進行中に宣言した行動を中断することはできますが、RQ3 と違ってラウンドの途中で行動変更はできません。

2. 移動フェイズ

このフェイズに接敵していないキャラクターとモンスターの移動を処理します。接敵している場合にはそもそも移動できません。特に移動の順番とかは存在せず行動宣言に従って移動する者全員が同時に移動します。一般的な遊び方ならだいたいの相対位置でそのラウンド中に接敵できるかどうかだけを問題にします。ヘックスやスクエアなどを使った詳細な移動処理は行ないません。

移動できる最大距離は移動クラス(Movement Class)につき3メートルまでです。人間の移動クラスは 8 なので最大24メートルまで移動できます。逃走する場合など周囲の状況を観察すらせず全力で走ることだけに専念するならばその2倍の距離移動できます。

最大移動距離の半分以下しか移動していないキャラクターは、次の行動解決フェイズで近接戦闘で攻撃したり、呪文の使用したり、行動参加ができますが、半分を超えて移動した場合にはこのラウンドは移動のみとなり受けしかできません。

この独立した移動フェイズが存在していることが、RQ3 との違いの一つです。このフェイズに接敵できるかできないかの移動を全て解決できるおかげで、次のフェイズの行動解決がシンプルになっています。

3. 行動解決フェイズ

近接戦闘、射撃、呪文などの行動をストライクランクの順に解決します。接敵している場合と接敵していない場合でできる行動に違いがあるので注意が必要です。

4. 記録フェイズ

ラウンドの最後にキャラクターの状態、消費したPOW、受けたダメージ、ダメージの回復、成功したスキルや呪文の経験チェックなどを記録して次のラウンドに進みます。遅延された毒などが効果を発揮したり、呪文の持続時間が切れるのもこの記録フェイズです。


●ストライク・ランク(Strike Rank)

文字どおり「打撃の順序」でラウンド内で誰が先に攻撃判定できるかを表す値です。他のゲームでの「イニシアディブ」や「行動順」に相当する概念です。

RQ3 ではストライクランクは 1〜10 ですが、RQ2 のストライク・ランク(SR)は 1〜12 の値を取ります。計算上では SR がゼロになる場合があるのですが、その場合は多くのレフリーが SR 1 の先頭として処理しているようです。

ホビージャパンが RQ3 に「1.2秒の攻防」などという煽りをつけたりしたせいか、ストライクランクを時間の単位と思っている人もいるみたいですが、RQ3 でも RQ2 でもストライクランクは時間ではありません。

ルーンクエストの近接戦闘中の各キャラクターはラウンドの頭からラウンド最後まで何度も武器を振ったり受け流したりの戦闘行動を続けており、1回の行動をするのにそれだけの時間がかかるわけでも、自分の行動順にだけ武器を振ったりしているわけでもありません。ストライクランクは時間の単位ではなく、あくまでも誰の行動を先に判定するかという有利/不利を表す抽象的な指標です。

ストライク・ランクが小さいというのは「早い」ことではなく「有利」なことを意味します。早いと有利は多くの場合は同じようなものですが厳密には別物なので注意してください。この辺の概念は RQ3 でも同じはずなのですが結構勘違いされているようです。


●ストライクランクの上限

ストライク・ランクは最大で 12 です。12を超える場合にはその行動は実行できません(そもそも行動宣言の時点で宣言できません)。ストライクランクは時間ではないので部分的に実行して、残りを次のラウンドに持ち越すようなこともできません。


●ストライク・ランクの計算

以下の全てを足した値が戦闘におけるストライク・ランク(打撃順序)になります。近接攻撃ならば主に最初の 3つ「DEX」と「SIZ」と「武器の長さ」によってストライクランクが決まるので、この合計をあらかじめ計算してキャラクターシートに書いておきます。遠距離攻撃は「DEX」のみによります。

ストライク・ランクが同じ値の場合には生の DEX を比べて大きい方が先に判定します。DEX も同じだった場合には同時に判定して両方の結果を同時に適用します。

1. DEX SR

速さは最も重要な値です。多くのシステムで DEX順で判定するのと同様に RQ2 でも基本は DEX順で、DEX の影響が最も大きい仕組みになっています。

DEX SR
19+ 0
16-181
13-152
9-12 3
6-8 4
1-5 5

2. SIZ SR

近接戦闘において身体が大きい方がリーチが長くて有利です。これを表現するため DEX順に対して SIZ で以下のような修正値が与えられます。

SIZ SR
22+ +0
15-21+1
7-14 +2
1-6 +3

射撃武器や呪文による攻撃の場合には SIZ は射程に影響しないため SIZ による SR は加算しません。

3. 武器の長さ SR

近接戦闘では相手よりも長い武器を持つ側は有利です。これを表現するために武器の長さにより以下のストライク・ランクに修正が与えられます。拳などの身体武器は長さ 0m とみなすため、SR +4 になります。

武器の長さSR
2.0m+ +0
1.5-1.9m +1
1.0-1.4m +2
0.5-0.9m +3
0.0-0.4m +4

射撃武器や呪文による攻撃の場合には近接武器に比べてリーチが十分に長いため武器の長さによる SR は 0 とみなします。

4. 呪文の消費ポイント

強力な呪文を使用するためにはエネルギーを集めるのに時間がかかります。この不利を表現するため POW の消費ポイントに従って以下のストライクランクが加算されます。RQ3 よりは 1 SR 低い値になっており、1ポイントの呪文の場合は加算はありません。

POW消費SR
1 +0
2 +1
3 +2
4 +3
5 +4
6 +5
7 +6

5. 不意打ち

敵から不意打ちを受けた場合の不利を表現するため、不意打ちされた時の相手との距離により以下の SR が加算されます。

相手との距離 SR
3メートル以内 +3
10メートル以内+1
10メートル超え+0

6. 武器や呪文の準備

武器の準備ができていなかったり、攻撃の前に武器を持ち換えたり、新たな矢を番えたりする場合には SR に +5 の修正を受けます。手に持っている武器を落とすだけなら準備の SR は必要ありません。

剣を収めて斧を抜くとか、武器と盾のように二つのものを準備するとか、弓を抜いて矢を番えるような場合は 2回分として +10 の修正を受けます。

同様に新たに呪文の準備する場合にも +5 の修正を受けます。これは多くの呪文では焦点具として魔法杖(ワンド)などを準備しなけれればならないためです。既に焦点具を準備している場合や焦点具の必要ない呪文は準備の SR は必要ありません。

7. 移動

3メートルの移動につきストライク・ランクが +1 されます。ただしこの修正は常に適用されるわけではなく以下のような条件があります。
  1. 互いに近接戦闘をする場合には移動によるストライクランク加算しません。最初から接敵しているキャラクターはそもそも移動できませんし、このラウンドに接敵した場合でも、どちらから接近したかは有利不利には影響しないからです。
  2. 一方で接敵していないキャラクターが射撃や呪文の前に別の場所に移動した場合には、移動しない者よりも行動が遅れて不利になるため移動の分のストライクランクが加算されます。
  3. また射撃や呪文投射しようとしている敵に対して近接攻撃をしかけようと突込む場合にも、その移動の分だけ不利になるため移動のストライクランクが加算されます。
  4. 同様に既に近接戦闘を行っている敵味方に対して、3人目以降として近接戦闘に新たに参加するため移動した場合にも、既にそこにいる者たちより不利なので移動の分のストライク・ランクが加算されます。
一見するとややこしいですが、頻発する 1対1の近接戦闘の場合には移動の SRを計算しない単純なルールで処理でき、それ以外の特別な状況の場合にのみ移動の SR を計算すれば良いという運用にとても優しいルールになっています。

★ランタスの冒険

新米冒険者のランタスのバスタードソードは DEX SR 2、SIZ SR 1、武器 SR 2 で合計 5 なので、通常の場合は SR 5 に攻撃できます。

剣と盾を構えて慎重に廃墟を探索していたところ、8メートル先の塀の陰から人間サイズの大きなカエルが飛び出してきて奇襲を受けました。カエルはなんと壁の裏に張りついていたのです。

戦闘ラウンドの開始です。宣言フェイズでカエルはそのとても長い舌でランタスを打ちつけようとしています。ランタスはカエルに走り寄って剣で切りかかり盾で受けると行動宣言しました。

移動フェイズでランタスは 8メートル移動してカエルに接敵します。移動は最大値(24メートル)の半分以下なのでランタスはこのラウンドに近接攻撃が可能です。カエルは移動せずにランタスを迎え撃つようです。

次に行動解決フェイズです。カエルの舌の攻撃 SR は 4 なのでまずはカエルの攻撃ですがカエルは攻撃を失敗しました。ランタスも〈中型盾受け〉に失敗していたので当っていれば危ないところでした。ランタスの攻撃は通常の 5 に奇襲の分の +1 を加えて SR 6 に判定します。近接戦闘なので移動の分の SR は加算する必要はありません。ランタスはなんとか攻撃を命中させ、カエルは受けようとしなかったため右前脚にダメージを与えることに成功しました。

記録フェイズに〈片手剣攻撃〉に経験チェックをつけて、次のラウンドに進みます。ランタスはその後も何度か危ない場面があったものの傷を負うことなくカエルの退治に成功しました。

後日、酒場で自分の倒した大きなカエルについて自慢していたランタスですが、先輩冒険者たちからそのカエルはクリフトードといって、彼の倒したのはその中ではとても小型のもので年経たものは家より大きくなると聞いて青くなるのでした。

●複数行動(Multiple Action)

各キャラクターは 1ラウンドに複数の行動ができますが、どのような行動が可能かは接敵状態によって異なります。

接敵している場合

接敵しているキャラクターはラウンドの最初から最後まで近接戦闘を行っているとみなすため原則として「攻撃と受け」1回づつのみが可能で他の行動はできません。近接武器による攻撃のかわりに呪文の使用がきるので「呪文と受け」を 1回づつとすることもできます。

両手にそれぞれ別の武器を持っている場合には、「攻撃と受け」のかわりにそれぞれの武器で「攻撃と攻撃」または「受けと受け」を選択することもできます。「攻撃と攻撃」を実行する場合には 2回目の攻撃は両方の近接攻撃の SRを足した SR に実施されます(12を超えるようならばその選択はできません)。

RQ2 では近接攻撃と呪文は同じラウンドには実行できません。また呪文は原則として 1ラウンドに 1回しか使用できないという制約があります。このため「呪文と攻撃」や「呪文と呪文」のような行動選択はできません。

RQ2 には〈回避〉スキルは存在せず、かわりに防御値(DEF)が存在しています。防御は独立した行動ではないため攻撃や受けに加えて毎ラウンド適用できます。

接敵していない場合

接敵していない場合にはストライクランクの範囲内で「遠距離攻撃」「呪文」「移動」などを自由に組み合わせて複数行動できます(このあたりが時間の概念っぽいので誤解の元なのかもしれません)。

これらはどの順番に実行しても構いませんし、呪文と遠距離攻撃を同じラウンドに実行することもできます。素早いキャラクターならば複数回射撃することもできますが、呪文は 1ラウンドに 1回までという制約があるため同じラウンドに複数回呪文をかけることは(原則)でません。

その他の行動

その他の行動をする場合は一般的にラウンドの間はずっとそれに専念しなければなりません。例えば〈聞き耳〉や〈隠れた物を探す〉のような知覚系のスキルを戦闘中に使用したい場合には、行動宣言でそれを表明する必要があり、そのラウンドはそれ以外の行動はできません。

会話

通常の行動に加えて会話をすることができますが、1ラウンドは12秒しかないので注意が必要です。掛け声をかけたり、味方の注意を促したり、簡単な指示を出したり程度の単純な会話しかできません。


●RQ3とRQ2の処理の違い

以上が RQ2 の戦闘ラウンドの処理なのですがいかがでしょうか。RQ3 と比べて全然別物と感じたでしょうか、それともほぼ同じと感じたでしょうか。全然違うと感じた人の中には RQ3 日本語版の微妙な訳に惑わされいる人もいるかもしれません。例えば英語版の直訳で
「攻撃は単に一回の打撃ではなく、武器が使用可能になったストライクランクに始まり戦闘ラウンドの最後までの間を占める一連のもしくは組み合わせた打撃です。」
となっている部分をホビージャパンの日本語版では
「一回の攻撃はただ一度の打撃を意味するのではなく、第1打撃を行なうストライク・ランクから始まる、一連の打撃あるいはその組み合わを指します。」
と訳しています。英語版は武器を抜き終ってさえいればラウンドの最初から最後まで打撃を行っているということを伝えようとしているのですが、和訳ではいつ打撃が始まりいつ終るのかさっぱり不明な訳になっています。

RQ3 と RQ2 のストライクランク処理の大きな違いは接敵時のルールと接敵していない時のルールが別々になっているかどうかです。逆にそこ以外にはほとんど差がありません。小さな違いとしては SR が最大10に変更されたこととか、呪文は 1ラウンドに 1回までという制限が無くなったとかあります。

ルールの読み解きが得意な人は色々と納得いくものがあったかもしれません。実は RQ3 のルールは RQ2 から個々のルールを大きく変更せずに、別々になっていた接敵時のルールと接敵時以外のルールを一つに統合しようと試みたものなのです。

個人的な意見として、ルールは統一が取れていた方が良いという意味でこの二つを統合しようというのは自然な流れでデザイナーの意図は良くわかります。しかしこれはあまりうまく行かなかったようです。RQ3 のルールは自由度が高くなったりしてうまく行っている部分もあるにはあるのですが、シンプルだった接敵時の運用が重くなってしまったりとか、細かい矛盾が取り切れていなかったりとか、新たな問題が発生して一長一短な感じになっています。

--
今回はストライクランクについてでした。次回は攻撃と受けについての予定です。

2016年6月8日

RQ2 紹介 - 第05回 スキル(技能)

ルーンクエストはスキル方式の RPG であり、ほとんどの行為判定はスキル判定として行ないます。スキルには戦闘で使用する攻撃スキル、受けスキル以外にも様々なものが存在しています。今回はスキルの全般的なルールについて紹介します。


●スキル

RQ2 が RQ3 や Call of Cthulhu などの  Basic Roleplay 系の RPG と大きく違うのはスキルが 1% 刻みではなく、5% 刻みになっている点です。つまり 5%, 10%, 15%... と成長して行き 17% とか 23% のような中途半端なスキル値は存在しません。ならば D100 じゃなくて、D20 判定でも良いんじゃないかと思うかもしれませんが、クリティカルやファンブルの計算は 1% 単位で行われるので、やはり D100 が必要となっています。


●基本成功率

たいていのスキルは学習や訓練をしなくてもある程度成功する可能性があり、基本成功率 05% を持っています。ただし外国語のような学習しないと使えない一部のスキルは基本成功率 00% です。逆に文化的に一般な武器などは最初からより高い 10% や 20% など基本成功率を持っている場合があります。この基本成功率に各分野のスキル修正値を足した値がキャラクター作成時のスキルの初期値になります。


●スキルの判定

スキル判定は D100 を振ってスキルの値以下が出れば成功、それより大きければ失敗です。ただしダイス目が 01-05 だった場合にはスキルの値によらず常に成功になり、ダイス目が 96-00 だった場合には必ず失敗になります。


●クリティカル命中

スキル値の 1/20 (端数切り捨て)以下が出た場合にはクリティカル命中になります。端数切り捨てなので計算は簡単でダイス目を20倍しても成功ならばクリティカルということになります。ダイス目 01 ならスキルの値によらず常にクリティカル命中になります。

余談ですが RQ2 では戦闘を中心にルールが記述されており、クリティカルは主に戦闘ルールに適用されます。そのせいで戦闘以外のスキルでもクリティカル成功ではなく「クリティカル命中(Critical Hit)」という用語が使われています。それで場所によっては「応急手当てがクリティカル命中した場合...」とか面白表現になってたりします。


●ファンブル

スキル値が 05-20%ならばダイス目の悪い方から 5% (96-00)がファンブル(Fumble)になります。スキルが20%成長するごとにファンブルの可能性が 1%づつ減っていきます。ただしダイス目が 00 の場合はスキル値によらず常にファンブルです。

計算上クリティカルの切れ目とファンブルの切れ目がズレているの、ちょっとだけ注意が必要です。まとめると以下のようになります。

スキルクリティカルファンブル
05-20 01 96-00
25-35 01 97-00
40 01-02 97-00
45-55 01-02 98-00
60 01-03 98-00
65-75 01-03 99-00
80 01-04 99-00
85-95 01-04 00
100 01-05 00

★ランタスの冒険

ランタスの〈片手剣攻撃〉のスキル値 40% です。それで彼がバスタードソードて攻撃した場合のクリティカル命中の確率は 2% (01-02)で、ファンブルの可能性は 4% (97-00)になります。


●スキルの訓練

RQ2 でスキルを成長させる方法には「訓練」と「経験」による2種類があります。いずれの場合も成長する量は固定で必ず 5% づつ成長します。

スキルの訓練を行なうにはまず師匠を見つける必要があります。スキル値が 90% 以上になれば師匠(マスター)として他人にsそのスキルを教えることができるようになります。 (アップルレーンにあれだけ有能な人々が集まっていたのは、実は師匠として訓練を提供できるようにというシステム上の理由だったり)

一般的にはギルド、組合、カルト、戦士団などの組織に所属する人々が有料で訓練を提供してくれています。一般的なスキルは部外者でもお金さえ払えば教えてもらえます。例えば〈忍び歩き(Move Quietly)〉スキルを訓練したい場合には、盗賊組合や森林協会に行ってお金を払えば訓練を受けることができます。

スキル値が 25% 以下の場合は連続して訓練を行なうことができますが、それ以後は訓練ごとに一度冒険に出て実践でスキルを使用して成功させなければ、さらなる訓練を受けることはできません。

全てのスキルは原則として 100% までしか成長させることができません。さらに実践的なスキルは訓練では 75%までしか成長させることができず、それ以後は経験によってのみ成長します。

スキルの訓練の価格はスキルが成長するに従って上昇していきますが、その価格はスキルごとにまちまちです。またスキルの訓練には 100ルナーにつき12時間(例えば1日2時間で1週間=6日間+休日)の訓練時間がかかります。訓練費用はカリスマによる値引きがあり、CHA が 12を超える1ポイントごとに訓練価格が 5% 値引きされます。価格が安くなっても訓練時間は短縮されません。

★ランタスの冒険

ランタスは最初の冒険で罠にはまったり落し穴に落ちたりで酷い目に合いました。それでお金ができるとすぐに盗賊組合を尋ねて、〈罠発見〉のスキルを訓練してくれるよう頼みました。〈罠発見〉は 5%成長させるのごとに以下のような費用と時間がかります。

成長後スキル訓練金額 訓練時間
05-25% 200ルナー 24時間(2時間×2週間)
30-50% 600ルナー 72時間(2時間×6週間)
55-75% 1000ルナー120時間(2時間×10週間)
80-100% 経験のみ

ランタスの〈罠発見〉の初期値は 10% です。これを +5% 訓練で上昇させるには普通200ルナーと24時間の訓練が必要ですが ランタスはカリスマによる 訓練価格 1割引があるため 180ルナーで訓練を受けるこができます。ランタスは3回分 540ルナーと72時間の訓練を行って 25% まで成長させました。次の 30% への訓練は価格が上がって 1割引でも 540ルナーかかりますし、まずその前に実践でスキルを使って成功させなければなりません。


●攻撃と受けの同時訓練

普段から組合わせて使用する〈攻撃〉と〈受け〉のスキルは同時に訓練することができます。そのためにはそれら両方をマスターしていて同時に訓練してくれる師匠を見つけなければなりません。師匠がいて同時に訓練した場合にはどちらか価格が高い方の訓練価格と訓練時間さえ払えば、もう片方のスキルも 5% 成長します。

★ランタスの冒険

ランタスの戦士ギルドの師匠はヒューマクトの剣士であり〈片手剣攻撃〉と〈中型盾受け〉の両方をマスターしています。それでランタスはその両方の同時訓練を受けさせてもらえます。このおかげで価格が高い方の〈片手剣攻撃〉の訓練費用の(一割引きで) 450ルナーを支払うだけで 〈片手剣攻撃〉を 40%から45%に、〈中型盾受け〉を 35% から 40% に同時成長させることができました。

●経験による成長

冒険中の緊張した場面でスキルの使用に成功した場合にはスキルにチェックをつけておきます。そのシナリオ終了後に 1週間程度の休息を取って経験について考察する時間が取れれば、経験によるスキルの成長を試みることができます。

D100 で (100 - 現在のスキル値) 以下をロールすることに成功すればスキルが 5%成長します。RQ3 ではスキルの値以上の大きな出目を振ると成長という逆ロールでしたが、RQ2 は通常の小さな出目の方を出すルールなのでちょっと違っていますが確率は同じです。

成長ロールには INT が 12 を越える 1ポイントごとに成長の可能性に +3% のボーナスがあります。逆に INT が 9 に足りない 1ポイントごとに -3% のペナルティを受けます。それとは別にスキルが 90% を超えているような場合でも成長の可能性はどんなに悪くても INT %以上が保証されます。

成長ロールに成功した場合には常に 5% 成長します。ただし経験による成長でも原則としてスキルは 100% までしか成長させることができません。スキルを 100% を超えて成長させるためにはルーンロードになる必要があります。

★ランタスの冒険

ランタスの最初の冒険は散々でしたが、二度目の冒険では首尾良くトロウキンを 1体仕留めて〈片手剣攻撃〉に経験チェックを得ることができました。彼の〈片手剣攻撃〉は現在 45% なので、100 - 45 で 55% に INT 15 による +9% のボーナスを加えた 64% が成長の可能性になります。ランタスは 43 をロールして成功し、彼の攻撃スキルは 50% に成長しました。


●スキルの一覧

RQ2 には固定されたスキルの一覧のようなものは存在しません。デザイナーの意図ではキャンペーンの内容やキャラクターの必要に応じて、レフリーとプレイヤーはスキルは自由に作成して追加して欲しいということのようです。またサプリメントでも、どんどんと新しいスキルが追加されており、 Cults of Prax と Cults of Terror だけでも40個の新しいスキルが追加されています。

例えば RQ3 で PC に人気のある〈応急手当(First Aid)〉は治癒の女神チャラーナ・アローイのカルトスキル、〈言いくるめ(First Talk)〉は盗賊神ランブリルのカルトスキルとして導入されています。

ここでは基本ルールブックに記載されている主なスキルだけ紹介します。主なと書いたのは基本ルーブブックにも〈楽器演奏(Play Instruments)〉とか〈帆走(Sailing)〉などのスキルは名前だけ挙げられていて、PC は普段は使いそうにないので内容省略、もし必要なら中身はレフリーが考えてくれとなっているようなスキルものもあるからです。


●戦闘スキル

戦士ギルドや傭兵団などでは以下のような〈攻撃〉および〈受け〉スキルを教えもらえます。一つのところで全てのスキルを教えてもらえるわけではなく、傭兵団やギルドごとに得意ないくつかのスキルがあり、それについての訓練を提供してくれます。

[片手武器] 基本 提供
拳(Fist)攻撃/受け 25% 戦士ギルド/傭兵団
蹴り(Kick)攻撃/受け 25% 戦士ギルド/傭兵団
頭突き(Butt)攻撃/受け 10% 戦士ギルド/傭兵団
挌闘(Grapple)攻撃/受け 25% 戦士ギルド/傭兵団
ダガー(Dagger)攻撃/受け 25% 戦士ギルド/傭兵団
ショートソード(Shortsword)攻撃/受け 15% 戦士ギルド/傭兵団
鎌(Sickle)攻撃/受け 15% 戦士ギルド/傭兵団
レイピア(Rapier)攻撃/受け 05% 戦士ギルド/傭兵団
片手剣(1H-Sword)攻撃/受け 10% 戦士ギルド/傭兵団
片手斧(1H-Axe)攻撃/受け 20% 戦士ギルド/傭兵団
片手メイス(1H-Mace)攻撃/受け 25% 戦士ギルド/傭兵団
片手ハンマー(1H-Hammer)攻撃/受け 20% 戦士ギルド/傭兵団
モーニングター(Morning Star)攻撃/受け05% 戦士ギルド/傭兵団
片手フレイル(1H-Flail)攻撃/受け 15% 戦士ギルド/傭兵団
片手槍(1H-Spear)攻撃/受け 10% 戦士ギルド/傭兵団
 
[両手武器] 基本 提供
両手剣(2H-Sword) 攻撃/受け 05% 戦士ギルド/傭兵団
両手斧(2H-Axe)攻撃/受け 15% 戦士ギルド/傭兵団
両手ハンマー(2H-Hammer)攻撃/受け 05% 戦士ギルド/傭兵団
モール(Maul)攻撃/受け 20% 戦士ギルド/傭兵団
両手フレイル(2H-Flail)攻撃/受け 05% 戦士ギルド/傭兵団
両手槍(2H-Spear)攻撃/受け 20% 戦士ギルド/傭兵団
パイク(Pike)攻撃/受け 10% 戦士ギルド/傭兵団
 
[盾] 基本 提供
小型盾(Small Shield)攻撃/受け 05%/05%戦士ギルド/傭兵団
中型盾(Medium Shield)攻撃/受け 10%/05%戦士ギルド/傭兵団
大型盾(Large Shield)攻撃/受け 20%/05%戦士ギルド/傭兵団
 
[射出武器] 基本 提供
スリング(Sling)攻撃 10% 戦士ギルド/傭兵団
スタッフスリング(Staff Sling)攻撃 05% 戦士ギルド/傭兵団
弓(Bow)攻撃 10% 戦士ギルド/傭兵団
クロスボウ(Crossbow)攻撃 20% 戦士ギルド/傭兵団
 
[投擲武器] 基本 提供
石投げ(Rock)攻撃 25% 戦士ギルド/傭兵団
投げダガー(Throwing Dagger)攻撃 15% 戦士ギルド/傭兵団
投げ斧(Throwing Axe)攻撃 10% 戦士ギルド/傭兵団
ジャベリン(Javelin)攻撃 15% 戦士ギルド/傭兵団


●戦闘以外のスキル

戦闘以外のスキルは以下のように、それぞれのギルドや組合から(有料で)教えてもらえます。スキルによっては複数のギルドから教えてもらえるものもあります。

[操作スキル] 基本提供
登攀(Climing) 15% 盗賊組合/森林協会/芸人ギルド
物を隠す(Hide Item) 10% 盗賊組合/芸人ギルド
ジャンプ(Jumping) 15% 盗賊組合/芸人ギルド
錠開け(Lock picking) 05% 盗賊組合
地図作成(Map Making) 10% 賢者協会
罠設置/解除(Trap Set/Disarm) 05% 盗賊組合/森林協会
鎧製作(Armor Making) 00% 武具師ギルド
武器製作(Weapon Making) 00% 武具師ギルド
盾製作(Shield Making) 00% 武具師ギルド
騎乗(Riding) 05% 馬匠ギルド
水泳(Swimming) 15% 水運協会
 
[知覚スキル] 基本提供
聞き耳(Listen) 25% 盗賊組合/芸人ギルド
隠れた物発見(Spot Hidden Items)05% 盗賊組合
罠発見(Spot Trap) 05% 盗賊組合
味分析(Taste Analysis) 00% 盗賊組合
追跡(Track) 10% 森林協会
 
[隠密スキル] 基本提供
偽装(Camouflage) 10% 盗賊組合/森林協会/芸人ギルド
物影に隱れる(Hide in Cover) 05% 盗賊組合/森林協会/芸人ギルド
忍び歩き(Move Quietly) 05% 盗賊組合/森林協会/芸人ギルド
掏摸(Pick Pockets) 05% 盗賊組合/芸人ギルド
 
[知識スキル] 基本提供
宝物鑑定(Evaluate Treasure) 05% 賢者協会
自国語読書き(Read/Write Own) 10% 賢者協会
外国語読書き(Read/Write Other) 00% 賢者協会
外国語会話(Speak Other) 00% 賢者協会
 
[交渉スキル] 基本提供
雄弁(Oratory) 05% 賢者協会/芸人ギルド


●錬金術(アルケミスト)能力

錬金術(アルケミスト)能力はは通常のスキルとは違う特別な能力ですがスキルと同じように錬金術師ギルドから学ぶことができます。半分化学的で半分魔法的なこの能力は治癒薬(ヒーリングポーション)や解毒剤(アンディドーテ)や刃毒(ブレードヴェノム)などの薬品を作成したり、飲むと特定の呪文が使用できる呪文薬(スペル・ポーション)を作成したりすることができます。

この能力はスキルのようなパーセント表示ではなく、作成できる最高の薬品のポイント数で示されます。例えば〈治癒薬作成 5〉ならば最高5ポイントの治癒薬(ヒーリングポーション)が作成できます。

細かいルールは省略しますが錬金術師ギルドから入手可能な薬品には以下のようなものがあります。

  • 酸(Acid)
  • 解毒剤(Antidotes)
  • 刃毒(Blade Venom)
  • 全身毒(Systemic Poison)
  • 戦闘呪文薬(Battle Magic Potion)
  • 治癒薬(Healing)
  • 魔力回復薬(Power Restoring)

主に NPC 用の能力ですが、錬金術師ギルドに加入すれば PC も学ぶことができ、材料費が結構かかるものの完成品を買うよりは安くポーションが入手可能になります。治癒薬はもちろん解毒剤とか魔力回復薬とかも便利なので余裕があった学んでみるのも良いかもしれません。

--
とりあえず、今回はこんなところで。次回から戦闘関係のルールを紹介する予定です。