今回でRQ2紹介の連載記事も最終回です。最後は精霊とシャーマンのルールについて説明します。
●生命と精霊
グローランサにおいて生命は「肉体(Body)」と「精霊(Spirit)」より構成されているとされています。この「肉体」と「精霊」が切り離された状態が死とされます。この離れた精霊に肉体に戻るよう説得するのが《蘇生》魔術だったりします。
精霊が切り離されたの肉体はただの物質に戻るのでやがて腐っていきます。何らかの魔術により精霊が離れたにもかかわらず活動を停止せず動き続けている肉体が「アンデッド(Undead)」です。
一方で肉体を離れた精霊は地界へと引きよせられて死後の世界へと旅立って行きます。この死者の精霊が地界へ行かず強い感情や魔術などによってこの世に留まり続けているのが「幽霊(Ghost)」です。そういう意味でグローランサでは幽霊(Ghost)は精霊の一種でありアンデッドではありません。それで幽霊は《精霊探知》に反応しますが《アンデッド探知》には反応しません。
この死者の霊以外にも精霊界には最初から肉体を持たない半生命である精霊たちが多数棲息しており魔術や契約などによりこの世界に召喚されます。
●精霊の能力値
精霊は肉体を持たないため STR, CON, SIZ, DEX の能力値を持たず能力値としては INT と POW を持ちます。精霊の中には CHA を持つものもいます。平均的な精霊は INT 3D6、POW 3D6+6 を持っています。精霊の DEX が必要となった場合は計算の上 20 とみなします。精霊も POW を成長させることができますが、その確率は固定で 5% しかありません。
●精霊の知覚
精霊は視覚や聴覚を持たないため物質界を感知することができませんが、独自の感覚を持っています。精霊は自分の POW×10メートル以内にいる他の精霊(生命)の POW の存在を感じ取ることができます。
POW×1メートル以内の近づけば、POWの大きさを10ポイント単位で知ることができます。さらに対象の POWが精神結合(Mind Link)しているかとか、どのルーン(Rune)と関連を持っているかなども知ることができます(カルトまではわかりません)。この距離ならば《精霊の言葉(Spirit Speech)》を使用して会話することもできます。
対象の精霊(生命)に接触することにより、その POW, INT, CHA の値を正確に知ることができ、所属するカルトなども知ることができ、対象に精霊戦闘(Spirit Combat)をしかけることも可能です。
精霊知覚は肉体を持たない精霊状態の時にのみ使用でき、クリスタルや動物に呪縛された精霊は精霊知覚を用いることはできません。
●精霊戦闘(Spirit Combat)
精霊は対象の精霊(生命)に接触することにより精霊戦闘をしかけることができます。肉体を持つ者が精霊戦闘をしたい場合には何らかの方法により精霊の正確な位置を知っている必要があります(通常はは司祭やシャーマンに見つけてもらいます)。そしてその位置に対して挑戦の意志を示せば、多くの精霊はそのオーラを読み取って精霊戦闘に乗ってきます。
精霊戦闘が始まると一時的に精神結合(Mind Link)等のつがなりは使えない状態になり、呪縛している精霊等も使用できなくなります。このため自分自身の生の POW だけで戦わなければなりません。
精霊戦闘中でも自分の精霊攻撃をあきらめて一方的に攻撃されることを受け入れるのならば、通常の戦闘行動や移動などを行なうこともできます。もし何らかの方法(テレポートなど)で精霊から遠くに逃げたり、精霊を制御しているシャーマンを殺すことができれば精霊戦闘は終了します。
精霊戦闘は同時にそれぞれが POW対POWの対抗ロールでを攻撃を行ないます。それぞれ対抗ロールに勝利すれば以下のうちから、いずれかの効果を選択できます。効果のうち番号の小さいものが先に効果を発揮します。
1. 離脱
精霊は対抗ロールに成功すれば精霊戦闘を終了して安全に離脱することができます。肉体を持つ者は移動速度が精霊に比べて遅いため逃げ切ることができず、この選択はできません。
2. ダメージ
対抗ロールに成功すれば相手の精神(POW)にダメージを与えて弱らすことができます。D100 を振って以下の表の値だけ相手の POW を減少させます。この POW ダメージは呪文の時と同じく一時的なもので時間がたてば回復しますが、もし POW がゼロになったらこの世から消滅します。
D100 | POW減少 |
01-10 | 3 point |
11-40 | 2 point |
41-00 | 1 point |
3. 捕縛
肉体を持つ者と精霊が戦闘している場合に、相手よりも自分の現在の POW が大きければ相手を捕縛する試みが行なえます。再度 POW対POW の対抗ロールを行って勝利するれば以下の効果を適用できます。
精霊が肉体を持つ者の捕縛に成功した場合は、相手の魂を肉体から追い出して精霊がその肉体に憑依することができます。その後精霊は肉体を持った完全な生物として行動できます(レフリーがNPCとして行動させます)。追い出された方は精霊になります。
肉体を持たった者が精霊に捕縛に成功した場合には《精霊呪縛(Spirit Binding)》を使用して精霊をクリスタル等に呪縛することができます。
★ランタスの冒険
シャーマンのバリ=ダの手掛りを探して廃墟を冒険中だったランタスは、バリ=ダの仕掛けたブービートラップの精霊に襲われます。襲ってきた精霊の POW は 20、ランタスの現在の POW は 13 ですが、このような事態を想定していたランタスは予め《精霊盾(Spirit Shield) 3》 の呪文を自分にかけていました。このおかげで精霊の POW は 6ダメージを受けて 14 に減少します。
最初のラウンドはランタスの攻撃成功率は 45%、精霊の攻撃成功率は 55% です。両方が攻撃成功してランタスの POW が 1、精霊の POW が 1 それぞれ減少しました。
次のラウンドもランタスの攻撃成功率は 45%、精霊の攻撃成功率は 55% です。うまくランタスのみが攻撃成功しダメージのダイス目も 08、精霊の POW が 3 減少しました。これでランタスの POWが 12、精霊の POW が 10 になり逆転しました。
次のラウンドは双方失敗、その次のラウンドはまた両方が成功しランタスはの POW はまた 1減少しましたが、ランタスは精霊の POW を減らすかわりに捕縛を試みることにしました。再度 POW vs POW ロールを行ない 55%以下を出して勝利し、精霊をクリスタルの中に呪縛することに成功しました。
●精霊の呪縛(Bound Spirit)
上記のように精霊戦闘に勝利して精霊を捕縛すれば戦闘呪文の《精霊呪縛(Spirit Binding)》を使用して精霊をクリスタルやカルトで特別に育てられた聖なる動物の中に呪縛できます。
この精霊は術者の生命力で物質界に留められており、術者が死亡したり他の精霊に憑依された場合には精霊はただちに解放され精霊界に帰ってしまいます。例え神性介入などでただちに生き返ったとしても間に合いません。ただしシャーマンのみは死から自力復活できなかった場合にのみ精霊が解放されます。
一人が安全に呪縛可能な精霊の数は CHA÷3(端数切捨て)までです。それを超えた場合や何らかの理由で CHA が下がって足りなくなった場合には、最初にそれぞれの精霊を使用する際に CHA×5 ロールをする必要があり失敗すると精霊は術者を攻撃してきたり、術者より POW が少なければ逃げ出したりします。
●呪縛した精霊の能力
呪縛した精霊は術者とテレパシー的につながっていて、その接続は 5km まで保たれます。それを超えると切断され精霊は解放されてしまいます。この接続は術者か精霊のどちらかが精霊戦闘中は一時的に使えなくなります。
呪縛した精霊の INT を使って記憶できる呪文の数を増すことができます。誰でも自分の知っている呪文をテレパシー経由で呪縛している精霊に自由に教えることができ、教えた呪文は自分が記憶しているのと同様に使用できます。
呪縛した精霊の POW を呪文を唱える際の魔力として使用することができます。呪縛された精霊自身に呪文を使用させることはできませんし、呪縛された精霊は自ら精霊戦闘をしかけることもできません。
クリスタルに呪縛された精霊は外界を感知することはできませんが、動物に呪縛した精霊は使い魔(Familiar)として使用でき、呪縛者はその耳や目を通して知覚したり、命令して戦わせたりすることができます。呪縛した動物が死亡した場合には精霊は解放されます。
●シャーマンの弟子
シャーマン(Shaman)になるためにはまずその弟子(Apprentice)になって学ぶ必要があります。
シャーマンの弟子になる
シャーマンは自分の所属する部族やカルトのメンバーのみを弟子として受け入れます。弟子として受け入れてもらえるか抽象的に判定するのならば D100 で CHA×5 以下を出せば成功です。
シャーマンの弟子の義務
弟子は全ての時間をシャーマンに仕えて過ごさなければなりません。シャーマンに従って精霊の種類を学んだり、儀式を行なって精霊界に行ったり、部族やカルトでのシャーマンの役割を学ぶことに全ての時間を費やします。このため弟子はスキルや能力値を訓練する時間は一切取れません。
●シャーマン
シャーマンはフェッチ(fetch)という特別な精霊を持っている精霊使いの専門家です。
シャーマンになる
シャーマンに 1年以上仕えた弟子は、その価値があることを示せばフェッチを獲得してシャーマンになる試練に挑戦できます。価値があることを抽象的に判定する場合には D100で (CHA + POW)÷2×5 以下を出せば成功です。失敗した場合にはさらに 1年間弟子として訓練しなければなりません。
フェッチを獲得するにはシャーマンと部族の聖地に行って儀式を行ない精霊を召喚して同盟を試みます。召喚された精霊は INT 3D6 と以下の表の POW を持っています。
D100 | POW |
01-10 | 2d6 |
11-35 | 3d6 |
36-85 | 3d6+6 |
86-95 | 4d6+6 |
96-00 | 5d6+6 |
さらにもう一度 D100 をして召喚した精霊の友好度を決めます。
D100 | |
01-50 | 友好(friendly) |
51-90 | 中立(neutral) |
91-00 | 敵対(malign) |
召喚した精霊が敵対的だった場合にはただちに精霊戦闘で攻撃してくるため同盟はできません。友好的か中立だった場合には同盟してフェッチにする試みができます。候補者の POW+CHA と精霊の POW+INT で対抗ロールを行ない勝利すれば同盟してフェッチにできます。失敗し場合には友好的な精霊は立ち去りますが、中立の精霊は候補者の POW より大きければ精霊戦闘で攻撃してきます。どちらにしろ挑戦は一年に一度しかできず再挑戦のためにはもう一年弟子を続けなければなりません。
シャーマンの責務
1. 部族やカルトの職務
シャーマンは部族やカルトの職務を行なう義務があり、訓練をする時間を取ることができません。職務を放棄した場合には部族やカルトの神々はからフェッチと精霊界の POW を取り上げてしまいます。
それでシャーマンは訓練時間がないため戦闘スキルなどの DEXベースのスキルは DEX×5% まで低下します。訓練で上昇させることができず、経験によってのみ成長させることができます。能力値の訓練もできないので POW と CHA 以外の能力値は上昇できません。
2. 外見
シャーマン儀式用の派手な粧飾を身につけねばならず、魔術的にも強いオーラを放っているため、どこにいても非常に目立ってしまいます。
3. 部族やカルトへの献身
一度シャーマンになって精霊界と結びつけられると、部族やカルトから追放されて能力を失う以外の方法で辞めることはできません。
シャーマンの特典
1. フェッチ(Fetch)
シャーマンはフェッチという特別な精霊を持っており、その能力を使って精霊界を旅することができます。
2. POW の蓄積
シャーマンは POWを精霊界に蓄積しておくことができます。精霊界の POWはスキル修正値や HP などを計算する場合には無視します。
精霊界にある POWは 1ポイントにつき 5分間瞑想することで肉体に戻すことができます。呪文などで消費した一時的な POW は 「肉体のPOW + 精霊界の POW」 の速度でまず肉体、その後に精霊界の順に回復します。シャーマンが精霊戦闘をする場合や精霊と対抗ロールする場合は肉体のPOW と精霊界のPOW の合計使用することができます。
3. POW の成長
シャーマンは (25 - (肉体のPOW + 精霊界のPOW))×5 で POWの成長ロールを行なうことができます。さらに POW合計が 25 以上ある場合でも 5% の確率で成長させることができます。フェッチの POW も同じ確率で成長します。
4. 病気の治療
シャーマンは適切な儀式を行なって手をかざすことにより病気の治療を行なうことができます。シャーマンが D100 で(肉体のPOW + 精霊界のPOW)×5 以下に成功すればその病気を治すことができます(必ず 5%の失敗の可能性は残ります)。失敗した場合はシャーマン自身が病気に曝されることになります。
5. 死からの帰還
シャーマンは死後 1時間以内ならば自分の死体に《治癒(Healing)》呪文をかけて HP をプラスにまで回復できれば生き返ることができます。この時に呪文に使用した POWは永久的に消費され回復することはできません。死んでいる間にできるのは《治癒》呪文の使用だけであり、死体が焼かれたり食べられたりして治癒できない場合には復活することはできません。
6. 精霊と契約
シャーマンは精霊界に出掛けて行って精霊と取引して自分に従うようにすることができます。精霊界は非常に危険な場所ですがフェッチの能力により精霊戦闘中以外ならば、シャーマンはいつでも肉体に戻ることがきます。
どのような精霊と出会うかは以下の表で D100 をして決めます。
D100 | POW | INT |
01-10 | 1d6 | 1d3 |
11-20 | 2d6 | 1d6 |
21-35 | 3d6 | 2d6+3 |
36-75 | 3d6+6 | 3d6 |
76-90 | 4d6+6 | 3d6+3 |
91-95 | 5d6+6 | 3d6+6 |
96 | 6d6+6 | 3d6+6 |
97 | 7d6+6 | 3d6+6 |
98 | 8d6+6 | 3d6+6 |
99 | 10d6+6 | 3d6+6 |
00 | 神 | 無限 |
さらにD100をして 96-00 が出た場合は敵対的なカルトや部族の精霊であり、精霊がシャーマンより大きな POWを持っていた場合はただちに攻撃してきます。精霊が敵対的でない場合は精霊の POW÷10(端数切上げ)以上の POW を与えることにより契約することができます。与えた分の POW は永久的に失われ、その分だけ精霊の POW が増加します。
シャーマンが契約して制御下におくことのできる精霊の数は精霊界に貯めている POW のポイント数までです。何らかの理由で精霊界の POW が減少した場合には足りない分の精霊は解放しなければなりません。シャーマンが死亡して復活できなかった場合には全ての契約している精霊が解放されます。
7. 部族やカルトからの援助
シャーマンは部族やカルトから全面的な支援を受けており、族長の次に尊敬されています。敵に捕えられれば救出や身代金などの手配をしてもらえます。
●契約した精霊の能力
取引して制御下においている精霊は呪縛した精霊と同様に、精霊の POW を呪文を唱える際の魔力として使用できますが、精霊の INT を呪文を覚えさせるために使用することはできません。
制御下にある精霊に呪文を使用させることはできませんが、精霊はクリスタル等に封じられているわけではないので命令して精霊戦闘をさせるこができます。
シャーマンが呪文に使用したり精霊戦闘でダメージを受けたりして制御している精霊の現在の POW が 3以下に減少すると取引が終了し精霊界へと帰って行きます。精霊戦闘で相手よりも POW が 5以上少なくなってしまった場合も同様です。
●フェッチの能力
シャーマンは呪縛した精霊と同様にフェッチの INT や POW を呪文を記憶したり呪文のための魔力として使用することができますが、それだけでなくフェッチ自身がシャーマンの感覚を使って物質界に呪文を投射したり、自ら精霊戦闘をしかけることもできます。
シャーマンが精霊界に出掛けている間、フェッチシャーマンの肉体を護るためにそれに宿って使用します。フェッチはスキル等も完全にシャーマンと同じように行動することができますが、呪文を唱える場合などの POW はフェッチ自身のものを使用しなければなりません。フェッチの POW がシャーマンの種族上限を超えている場合は肉体に宿っている間は種族上限までしか使用できません。
●フェッチの名前について
「フェッチ(fetch)」はホビージャパンの RQ3 の翻訳では「魔精」と訳されていました。魔精という日本語は一般的ではないと思うので訳者の造語なのでしょう。
"fetch" を辞書で引いても簡単な辞書だと「取って来る」のような意味しかないため「魔術の精霊」くらいの意味で意訳したのではないかと思われます。
大きな辞書には載っているのですが、実際にはこの
fetch はイギリスやアイルランドの民間伝承にある妖怪の名前です。より古い本来の呼び方では
fetch life らしく「生命を奪って行く者」のような意味です。伝承ではこの妖怪は「自分とそっくりな外見をしており出会うと死んでしまう」と伝えられています。そうですね。これはよく知られているドイツのドペルゲンガー(Doppelganger)と同様の妖怪です。
グローランサの
fetch はシャーマン本人と瓜二つの外見をした精霊なのでこのような名前で呼ばれているのだと思います。元が妖怪の名前なので、この連載ではカタカナで「フェッチ」としておきました。
●終りにあたって
今更ながらに RuneQuest 2版を紹介するという企画でしたが、どうにか予定していた最後まで書くことができました。どこまで詳しく書くか少し悩んだのですが古いゲームなので、かなり詳細に解説しても問題ないだろうと考え、プレイヤーとして遊ぶのに必要なルールのほぼ全てを紹介したつもりです。敢データ類や、モンスターや財宝などのゲームマスター向けのルールは書いていませんので、レフリーをする場合には是非ルールブックを買って読んでもらえればと思います。
今回は RQ2 の基本ルールブックにあるもののみの紹介でしたが、グローランサの楽しさを満喫するためには Cults of Prax が必須だと思います。レフリーなら Cults of Terror もあった方が良いでしょう。どちらもこれを書いている時点で入手困難なのが難点ですが、近々復刊されることが決まっているのでもう少し待つと入手可能になると思います。
それでは長い記事にお付き合いありがとうございました。良ければ感想など聞かせてください。
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以上、RQ2 やその他 RuneQuest や Glorantha が盛り上がることを願っています。