コンテストで状況によりPCのアビリティに対して足したり引いたりする値を修正値(Modifier)と言います。 HeroQuest の修正値には特定アビリティボーナス、 拡大解釈ペナルティ、 状況修正値、 増強、 プロット増強などの種類があります。
HeroQuest ではこれらの修正値も主としてナラティブな考え方にもとづいて決めます。 それぞれの修正について少し詳しく説明してみます。
●特定アビリティボーナス
プレイヤーたちはアビリティを決める際にできるだけ多彩な面白いものにするように求められます。 ゲームの中で、 詳細なアビリティのうち一つが状況にピッタリ一致していて、 それを使うのはこの場面しかないということがあります。 この場合には特定アビリティボーナス(Specific Ability Bonus)といって +3 または +6 の修正を獲得します。
これは多彩で詳細化されたアビリティを設定したことに対するご褒美のようなものなので、 汎用的なアビリティに対しては与えられません。 とはいえナラティブRPGはプレイヤーが自分の思うようにストーリーを誘導できるので、 詳細化されたアビリティでもそれなりにボーナスを得る機会はあるものです。
逆に同じゲームに参加しているPCの中に特定の状況に対してよく一致したアビリティを持つキャラクターと、 明らかに広汎なアビリティを持つキャラクターが両方いる場合にはPC間のバランスを取るために、 広汎なアビリティを持つプレイヤーには -3 または -6 ペナルティが適用されます。 これはあくまでバランスを取るためで後述の拡大解釈とは違う点に注意してください。汎用的なアビリティでも、 今実際に行おうとして行為に関して自分より適切なアビリティを持つキャラクターがいないならばペナルティを受けるこはありません。
●拡大解釈ペナルティ
時々プレイヤーから不可能とまでは言い切れないまでも普通は有りそうにないアビリティの応用が提案されることがあります。 これを拡大解釈(Stretch)といいます。 例えば「英文学」のアビリティでイタリア語で会話しようとするような完全に無関係とは言い切れないけれども一般性の低いものです。
物語を進めていくためには場合によってこういった拡大解釈も必要になります。 ただしキャラクターの一貫性を維持するために拡大解釈をした場合には拡大解釈ペナルティとしてアビリティに -6 が適用されます。 さらにそのコンテストに完全勝利や大勝利したとしても通常勝利までとして扱います。
どこまでが通常の応用でどこからが拡大解釈になるか、 どこまでの拡大解釈が許されてどこから不可能になるかは物語のジャンル、 モード、 キャラクターの過去の経緯などによって様々です。 ナレーターが適宜判断することになります。
●状況修正値
状況による難易度の違いは通常は抵抗値を変化させることで表現しますが、 拡張コンテストの途中などでプレイヤーの行動に対する一時的な変化はアビリティへの修正として適用します。 これを状況修正値(Situational Modifier)といいます。
プレイヤーのとった行動によってそのラウンドのエクスチェンジが顕著に有利だったり不利だったりと判断した場合にはアビリティに -6, -3, +3, +6 の修正を適用してください。 全員に適用される永続的な補正は状況修正ではなく抵抗値の方を変化させます。
●増強
HeroQuest のコンテストにおいて、あるアビリティを使って別のアビリティの成功率を上昇させることができます。 これを増強(Augment)といいます。 増強は独立した単純コンテストを行って、 その勝利レベルにより対象のアビリティに以下の表のようなボーナスを得ることができます。
勝利レベル | ボーナス |
---|---|
完全勝利 | +W |
大勝利 | +9 |
通常勝利 | +6 |
ぎりぎり勝利 | +3 |
引き分け | 0 |
ぎりぎり敗北 | 0 |
通常敗北 | 0 |
大敗北 | 0 |
完全敗北 | -3 |
ナラティブな遊び方において増強も演出手段の一つです。 このため論理的に可能な増強全てが許されるわけではなく、 物語的に意味があるもののみが許可されます。 増強を行うためには以下のいずれかの条件(できれば複数)を満たす必要があります。
新鮮(fresh): 目新しい手段で読者に驚きを与えるような増強の使い方。 最近使った増強を繰り返すような退屈なことは認められません。
照明(illuminate): そのキャラクターやキャラクター間の関係性に照明をあてて、 読者にキャラクターの何かを明らかにしたり特徴を認識させる増強の使い方。 既にわかりきっていることはアビリティや抵抗値に含まれているものと考えます。
緊張(suspense): その増強を行うのに何らかのリスクをともない、 それによって物語の緊張感を高めその増強の成否に参加者全員が関心を持つような使い方。
感情(emotinal): その増強により全員が興奮したり、 心から笑ったり、 同情心を共有したりなどの何らかの感情的な反応を引き出すことができる使い方。
ナラティブRPGである HeroQuest では勝率を上げるためではなく、 物語を面白くするために増強を使います。 退屈な増強のために無駄な時間を使わないようにしてください。 原則として一つのコンテストにつき一回しかアビリティの増強は試みることができません。 ただしナレーターが指示して行う増強にはこの制限はありません。 また増強のために増強を行うような連鎖は許されません。
●プロット増強
冒険においてプロット上の障害を克服することにより得られる特別な増強をプロット増強(Plot Augment)といいます。 通常の増強と違ってそのサブシナリオをクリアするためには複数のコンテストで勝利する必要があるかもしれませんし、 場合によってはコンテスト全く無しで賢いロールプレイの結果としてプロット増強が与えられるかもしれません。
このようなシナリオ上の障害を克服することにより後の冒険において +3, +6, +9, +W のいずれかのプロット増強を得ることができます。 プロットの内容によっては一人ではなく複数のキャラクターのアビリティに増強を得ることができる場合もあります。 通常の増強と違ってプロット増強は同時に複数を獲得することができますし、 通常の増強と重ねることもできます。
これはゲームブックやコンピューターゲームにおけるフラグ立てによるボーナスと同じようなものだと考えると判り易いかもしれません。 以前に適切な冒険を行ってフラグを立てておくことにより後のコンテストで有利な修正を得るというものです。 ドラゴンを倒しに行く前に寄り道をして弱点を調べたりドラゴンスレイヤーを入手したりすれば良いというわけです。
●抵抗値の決め方
コンテストにおいて相手側の目標値となる数値を抵抗値(Resistance)といいます。 HeroQuest ではシナリオであらかじめ抵抗値を決めておくことはしません。 コンテストごとにその状況に合わせてナレーターがその値を決めます。
基本的な考えとして、その状況における成功および失敗の可能性にもとづいて難易度を決めます。 ただしここでいう可能性はシミューレション的な意味の可能性ではなく、 ナレーターの物語的な直感によります。 これまでの流れで物語的感覚で主人公が失敗しそうならば高い難易度を、 成功が予想されるならば低い難易度を設定します。 どうしてその抵抗値になるのかの具体的な理由は後付けで決めて構いません。
直感で決めるといっても馴れていないナレーターには難しいかもしれません。 そのため以下に紹介するようないくつか指針があります。 あくまで指針なので直感と指針が矛盾するようならば直感の方を優先してください。
●抵抗の基本値
まず以下の表を使ってセッションの回数から基本となる抵抗値を決めます。
セッション回数 | 基本抵抗値 | 増強抵抗値 |
---|---|---|
1〜2 | 14 | 14 |
3〜4 | 15 | 14 |
5〜6 | 16 | 15 |
7〜8 | 17 | 15 |
9〜10 | 18 | 16 |
11〜12 | 19 | 16 |
13〜14 | 20 | 17 |
15〜16 | 1W | 17 |
17〜18 | 2W | 18 |
この数値がそのセッションでの平均的な難易度になります。 この表はセッション回数が進んでキャラクターが成長するとコンテストの難易度が上がって行くことを示しています。 主要なアビリティは2セッションごとに+1、 増強に使うような補助的なアビリティは4セッションごとに+1される前提になっています。 PCが強くなれば障害もそれに合わせて手強くなっていくということです。
●抵抗クラス
次にコンテストの抵抗を「ほとんど不可能」「とても高い」「高い」「中くらい」「低い」「とても低い」の6段階の抵抗クラスのどれに当るか決めます。 そして上記の基本値を以下の表に従って補正します。
抵抗クラス | 抵抗値 |
---|---|
ほとんど不可能 | 基本+W2 |
とても高い | 基本+9 |
高い | 基本+6 |
中くらい | 基本 |
低い | 基本-6 |
とても低い | 基本-W (最高でも6) |
この抵抗クラスはキャラクターの行動や物語の展開によって以下のような感じで決めます。
- 絶対とはいえないまでもほぼ成功しそうにないことならば「ほとんど不可能」とします
- シナリオの山場ならば「とても高い」または「高い」を選択します
- つまらない方法で面白い障害が台無しになりそうならば「とても高い」にします
- 成功するよりも失敗する方が面白いようならば「高い」や「とても高い」とします
- 失敗した時の展開があるけれどもそれほど面白くないなら「とても低い」にします
- 失敗した時に面白い物語がないないようならば、 そもそも自動成功にします
- 成功した時と失敗した時の両方の展開が同じくらい面白いようならば「中くらい」にします
●成功/失敗サイクル
ナラティブなゲームではプレイヤーの発想で物語が進むため、 あらかじめ難易度を決めておくことはできません。それで予想もしないような展開により難易度を決めるのが非常に難しいことが多々あります。 プレイヤーたちがいきなり「井戸を掘る」とか「古道具屋を探す」とか言い出した時、 その難易度はどうすべきでしょうか? 特に理由がなく展開が想定できなければ「中くらい」の難易度を選ぶのが基本ですが、 それではコンテストの難易度が「中くらい」ばかりになってしまいそうです。
この時に参考にするのが成功/失敗サイクルです。 多くの小説、 映画、 昔話、 神話などにおいて主人公たちは成功ばかりではなく何度も失敗します。 成功と失敗を交互に繰り返すことにより徐々に最終目標に近付いていく形態を取ります。 これを成功/失敗サイクル(Pass/Fail Cycle)と呼びます。 成功と失敗の連鎖が物語を盛り上げる基本です。
このメカニズムを難易度の決定に応用することができます。 過去2回の主要なコンテストの勝敗を以下の表で参照して次のコンテストの難易度を決めます。 その際に完全勝利と大勝利は勝利2回分、 完全敗北と大敗北は敗北2回分として計算します。
過去2回の結果 | 次の抵抗値 |
---|---|
3〜4敗北 | とても低い(基本-W) |
2敗北 | 低い(基本-6) |
2引き分け | 低い(基本-6) |
1勝1敗 | 中くらい(基本) |
2勝0敗 | 高い(基本+6) |
3〜4勝 | とても高い(基本+9) |
これにより平板で同じような難易度が続くことなく物語にリズムを与えることができます。 覚えておいて欲しいのはこの成功/失敗サイクルというのは他の方法で抵抗値を決めることができない時に使用する予備の方法であるということです。 ナレーターの直感や物語の流れにより抵抗値が決まる場合はそちらを優先してください。
《続く》
今回はコンテストの要である修正値と抵抗値の決め方について説明しました。 通常のRPGと考え方が大きく違うことが伝わったでしょうか? 次回は残った成長に関するルールを紹介する予定です。
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