Jeff Richard が Google+ の Glorantha コミュニティに投稿したところによると、 彼は現在、 新しい Gods Book の付録として完全版神名録(Complete Prosopaedia)を執筆中らしい。 『グローランサの神々』についていた神名録が240柱だったのに対して、 この新しいバージョンでは 530柱くらいになりそうとのこと。
パンテオンごとの内訳はオーランス(127柱)、 イエルム(113柱)、 マルキオン(50柱)、 フォンリット(42柱)、 ルナー(42柱)、... だとか。 Guide of Glorantha の例にならうと、 実物を入手できるのは大分先になりそうだけど、 超期待。
https://plus.google.com/108191783232173529938/posts/7LLvrEe9HKh
2014年7月24日
2014年7月10日
OpenQuest 2 Basic 無料
忘れないうちにこっちも紹介。 OpenQuest 2 Basic edition がリリースされて DriveThruRPG より無料で購入できるようになっています。
OpenQuest というのは D101 Games から出ている D100系のRPGシステムで、 いわゆるルーンクエストのクローンの一つです。 OpenQuest 2 はその二版にあたります。 二版が出ていることからもわかるように、 いくつかあるルーンクエストのクローンの中でも出来が良くて人気があるものです。 そういう意味で RuneQuest 6版の対抗馬といえそうです。
出版元の D101 Games は Hearts in Glorantha というグローランサの雑誌を作っていたり、 Gloranthan Adventures や The Book of Glorious Joy というグローランサ・サプリも出していることもからもわかるようにグローランサに詳しく、 OpenQuest 2 も汎用設定ながら比較的グローランサにも親和性のあるルールになっています。
この OpenQuest 2 から主要なルールのみを抜き出して、 お試し版としたのが OpenQuest 2 Basic edition です。 挿絵とかはありませんが全部で150ページあり一通り遊ぶのに十分なルールが含まれています。 RuneQuest 6版が RuneQuest Essentials を出したから対抗したわけではなくて、 前々から準備されて来たもののようですが、 両者を比べてみるのも面白いかもしれません。
購入(無料): OpenQuest2 Basic edition via DriveThruRPG
読んでみて面白そう思ったら Deluxe版の購入を検討してあげてください。 PDF版ならばたったの15ドルですし。
購入(PDF $15): OpenQuest 2 Deluxe
OpenQuest というのは D101 Games から出ている D100系のRPGシステムで、 いわゆるルーンクエストのクローンの一つです。 OpenQuest 2 はその二版にあたります。 二版が出ていることからもわかるように、 いくつかあるルーンクエストのクローンの中でも出来が良くて人気があるものです。 そういう意味で RuneQuest 6版の対抗馬といえそうです。
出版元の D101 Games は Hearts in Glorantha というグローランサの雑誌を作っていたり、 Gloranthan Adventures や The Book of Glorious Joy というグローランサ・サプリも出していることもからもわかるようにグローランサに詳しく、 OpenQuest 2 も汎用設定ながら比較的グローランサにも親和性のあるルールになっています。
この OpenQuest 2 から主要なルールのみを抜き出して、 お試し版としたのが OpenQuest 2 Basic edition です。 挿絵とかはありませんが全部で150ページあり一通り遊ぶのに十分なルールが含まれています。 RuneQuest 6版が RuneQuest Essentials を出したから対抗したわけではなくて、 前々から準備されて来たもののようですが、 両者を比べてみるのも面白いかもしれません。
購入(無料): OpenQuest2 Basic edition via DriveThruRPG
読んでみて面白そう思ったら Deluxe版の購入を検討してあげてください。 PDF版ならばたったの15ドルですし。
購入(PDF $15): OpenQuest 2 Deluxe
Guide to Glorantha 正式版PDFがダウンロード可能に
待ちに待った Guide to Glorantha の正式版がリリースされました。 Kickstarter で支援していた人たちや事前予約した人は glorantha.com のアカウントから PDF がダウンロード可能になっているようです。 書籍版の発送はまだ始まっていないみたい。
私は Kickstarter で支援したので Sneak Peak として事前にほとんど見せてもらっていたとはいえ、 正式版ということで感慨もひとしおです。 本当に長かった(ちなみに募集時のリリース予定は2月でした。 去年の!!)。
Guide to Glorantha は Vol.1 と Vol.2 の二分冊になっていて、 それぞれ400ページあります。内容的にはRuneQuest3版の『グローランサ』と『古えの秘密』を合わせて超増量したような感じです。 魔法関係や特定のゲームに依存したデータはありませんが、 グローランサ地誌完全版な感じで、 今まであまり語られて来なかったパマールテラ大陸や、 ヴォルメイン、 ジルステラ、 東方諸島などなどの島々の情報などもあります。 英語読めなくてもカラフルな地図や挿絵を見ているだけでも飽きません。
あとグローランサの詳細地図を地図帳の形で独立させた Argan Argar Atlas も同時に発売になっていますので、 こっちもお勧め。 グローランサを100以上に分割してヘックスマップになっています。 付録でついている時代ごとの文化圏別色分け地図も素敵です。
書籍版の方は重さ6kgと置き場所に困りそうですが PDF ならば置き場所には困りませんので、 グローランサ好きな人はPDFだけでも絶対に買うべきです。 グローランサそれほど知らなくても「ファンタジー」好きな人ならば世界創造の究極形の一つという意味で色々参考になるのではないかと思います。
私は Kickstarter で支援したので Sneak Peak として事前にほとんど見せてもらっていたとはいえ、 正式版ということで感慨もひとしおです。 本当に長かった(ちなみに募集時のリリース予定は2月でした。 去年の!!)。
Guide to Glorantha は Vol.1 と Vol.2 の二分冊になっていて、 それぞれ400ページあります。内容的にはRuneQuest3版の『グローランサ』と『古えの秘密』を合わせて超増量したような感じです。 魔法関係や特定のゲームに依存したデータはありませんが、 グローランサ地誌完全版な感じで、 今まであまり語られて来なかったパマールテラ大陸や、 ヴォルメイン、 ジルステラ、 東方諸島などなどの島々の情報などもあります。 英語読めなくてもカラフルな地図や挿絵を見ているだけでも飽きません。
あとグローランサの詳細地図を地図帳の形で独立させた Argan Argar Atlas も同時に発売になっていますので、 こっちもお勧め。 グローランサを100以上に分割してヘックスマップになっています。 付録でついている時代ごとの文化圏別色分け地図も素敵です。
書籍版の方は重さ6kgと置き場所に困りそうですが PDF ならば置き場所には困りませんので、 グローランサ好きな人はPDFだけでも絶対に買うべきです。 グローランサそれほど知らなくても「ファンタジー」好きな人ならば世界創造の究極形の一つという意味で色々参考になるのではないかと思います。
2014年7月9日
HeroQuest紹介(12) - ナレーティング
●ナレーターの仕事
ナラティブRPGである HeroQuest ではナレーターの仕事は一般的なRPGのゲームマスターのそれとは大きく違う部分があります。 この違いを理解することがとても大切です。 ナラティブRPGのゲームマスターの仕事はプレイヤーと対立することではありません(これはまあ普通のPRGでもそうですが)。 プレイヤーに何ができて何ができないかを伝えることでもありません。 間抜けなプレイヤーを罰したり、 逆に賢いプレイヤーにご褒美を与えることでもありません。 物語の筋書を決めるのも詳細な設定をつくるのもナレーターの仕事ではありません。
ナレーターの仕事はプレイヤーの物語に全面協力すること、 物語が停滞しないように動かし続けること、 物語が説得力を持ち魅力的であるように維持することです。
これらを行うためのナレーティングのコツを紹介してみたいと思います。 と言っても私もまだまだ未熟なナレーターなので大上段にこれがナレーティングのやり方だと教えることはできそうにないので、 ルールブックやその他で紹介されているやり方や経験を元に私なりに説明してみたいと思います。
●ナレーターはストーリーを語らない
一般的なRPGではゲームマスターは舞台やストーリー展開を予め決めておいて、 それに合わせて地図やモンスターやNPC等の数値や様々な仕掛けなどを準備しておきます。 ゲームマスターは準備した筋書から大きく外れると、 せっかく手間をかけた数値情報や仕掛などが無駄になるため、 できる限りこれを避けるのが普通です。 プレイヤー側もそのことを念頭において、 ゲームマスターの考えを読んでその筋を辿るのが礼儀正しいプレイとされ、 そこから外れて勝手な方向に進めるのは無作法とみなされがちです。
ナラティブRPGではここが逆でストーリーを語るのはプレイヤーの役目です。 ナレーターが物語の筋書を決めるのは御法度です。 ナレーターは舞台を準備する時に面白そうな筋書を考えついたりするものですが、 それは最初から捨てるつもりでいてください。 あらかじめ準備したストーリーにプレイヤーを誘導するようなことは絶対にしてはいけません。
単なるストーリー指向とナラティブの最大の違いはこのプレイヤーが物語を作るという点です。 ナラティブRPGでストーリーを語るのはプレイヤーの仕事で、 ナレーターはその物語に対して全面協力する立場です。 通常のRPGに馴れているプレイヤーにはこの点を何度でも説明してあげてください。 それでも最初は何をどう進めていいのかて戸惑うと思うので、 ナレーターは質問などの形でプレイヤーが物語を作るのように促して上げてください。
●「はい」と言おう
このプレイヤーの物語に全面協力するということを最もうまく表現したのが“「はい」と言おう”手法です。 ナレーターはプレイヤーの全ての質問に「はい」と答えてください。
ナラティブな遊び方に馴れていないプレイヤーたちは最初は大いに戸惑うと思いますが、 自分たちの作った設定が全て受け入れられるということを理解してもらえれば、 自然と自分たちで物語を作るようになるはずです。
●「はい、 しかし」と言おう
ナレーターの二つ目の仕事は物語が動き続けるように保つことです。 どちらの方向へ物語を動かすかを決めるのはプレイヤーの役目なので、 ナレーターはとにかく動かすことだけを考えます。 プレイヤーの議論が堂々巡りしているようならば決断を求めてください。 何をしていいか全く判らないようならば質問や新しい情報の形で支援してください。
そして、 PCの行為や結果描写が物語の流れを止めてしまいそうな時に使うのが“「はい、 しかし」と言おう”手法です。
時にプレイヤーたちは、 つまらない安易な方法で障害を克服しようとしたり、 せっかくの面白くなりそうな要素を台無しにするような提案をしてくるものです。 このような場合には単に「はい」と答えるのではなく、 「はい、 しかし」を使います。
●「いいえ」と言おう
ナレーターの三つ目の仕事は物語が説得力を持ち続けるように保つことです。 魅力的な物語は一貫性を持ちその世界観を維持しているものです。 これを実現するためにはナレーターは時々「いいえ」と言う必要もあります。
例えばファンタジー設定なのに火薬兵器を持ちだしたり、 勧善懲悪物なのにヒーローたちが一般市民を虐殺したら興醒めという他ないですよね。 このような最初に決めた物語の「前提」からの逸脱は阻止しなければなりません。
同様に既に語られた出来事や設定に反するような物語展開を認めてはいけません。 まだ語られておらずナレーターしか持っていない設定やプロットに関してはそちらを変えてしまえば良いのですが、 一旦語られた過去の物語との一貫性は維持しなければなりません。
このように物語が、 いかにも有りえそうな、 信頼できるもになっているかの確認する作業を信憑性テスト(Credibility Test)と言います。 プレイヤーの提案した行為や結果描写がその世界観で可能かどうか物語として納得いくものになっているかを読者の視点できちんと確認するのはナレーターの役目です。 信憑性テストに合格しないようならば「いいえ」といって止めてください。
●シナリオの準備
ナレーターの仕事の中でもシナリオの準備というのは難しい課題です。 ストーリーラインが全面的にプレイヤーまかせなために、 結局はアドリブにならざるを得ません。 そういう意味でベテランのゲームマスターならばアドリブで最初から最後まで全部進めることができるかもしれませんが、 普通はなかなか難しいものです。
ナラティブRPGでは一般的なRPGと違ってストーリーを準備してそれに関連する設定を詳細に決めておくという具合にはいきません。 かといって全てアドリブでは手が回りません。 ということで HeroQuest のシナリオとして以下のような物を準備しておくのが良いようです。
●マクガフィン
シナリオの準備はだいたい上記のような感じで済むのですが、 それだけで良いセッションになるかというと必ずしもうまく行くわけではありせん。 良いシナリオの作成には映画や活劇のシナリオ作成術が役に立ったりします。 そういうわけで少し例をあげてみたいと思います。
映画のシナリオ用語でマクガフィン(MacGuffin)という言葉があります。 ヒッチコック監督の言葉なので聞いたことがある人も多いかもしれません。 「それ自体には特別な意味がないけれども登場人物の重大な関心事になっているなっているアイテム」くらいの意味で、 スパイ映画でスパイたちが奪い合う書類がマクガフィンに当ります。 その書類が原爆の設計図なのか大統領のスキャンダルなのかといった内容は重要ではなく、 それを巡って物語を転がっていくことに意味があるものです。
ナラティブRPGのシナリオにおいてもマクガフィンはとても役に立ちます。 マクガフィンの登場により物語が始まり、 マクガフィンの運命を巡ってPCたちの物語が展開して行き、 その意味の消滅によって物語が終わるようにします。 ナラティブRPGはバラバラの指向を持つプレイヤーたちによって物語が発散しがちなのですが、 マクガフィンを導入することにより、 PCやNPCたちの注目を一点に集めてることができ、 シナリオが空中分解を起こさずに、 一つにまとめることができます。
●セットピース
もう一つ別のものも紹介してみます。 同じく映画の用語でセットピース(Setpiece)というのがあります。 これは「あらかじめ準備され綿密に練られた重要なシーン」を指します。 ファンタジー特有の壮大で幻想的な風景なのかもしれませんし、 手に汗握るアクションシーンかもしれませんし、 抱腹絶倒のコメディシーンかもしれません。 とにかく、 その映画を見た人たちの記憶に後々まで残ることを企図したシーンを言います。
ナラティブRPGでもこのようなセットシーンを準備するのは良い考えです。 ありきたりの展開だけではプレイヤーたちの記憶からすぐに忘れられてしまうかもしれませんが、 非常に際だった特徴的なシーンを設けることによりシナリオをより印象深く記憶に残るものにすることができます。
ナラティブRPGのストーリーはプレイヤーがつくるので必ずしも準備したセットピースが使えるとは限りませんが、 プロットではなく単発のシーンだけならば挟み込む余地があるものです。 準備したシーンにPCを誘導するのは避けなければなりませんが、 セットピースの方をプレイヤーたちの語るストーリーに合わせて変更することはできます。
●ナレーターの心掛け
最後になりましたが経験にもとづいてナレーター(とプレイヤー全員)の心掛けるべき点とかを書いておきます。 これは言われるまでもなく当り前の話なのかもしれませんが、 以下の二つはナラティブRPGでは特に重要と感じています。
●世界観の共有
ナラティブRPGを遊ぶ上において世界観の共有というのは非常に重要な意味を持ちます。 例えば海洋冒険小説を読んだり映画を見たりしたことがない人に航海物語をつくれというのは、 とても困難というのは判ると思います。
逆に参加者が全員がよく知っている物語世界で遊ぶのは簡単です。 例えば日本人ならば時代劇の「水戸黄門」で遊ぶのはとても簡単でしょう。 もちろん参加者全員がよく知っているアニメやコミックの世界を舞台に遊ぶのは、 大変遊び易いし面白いはずです。
世界観がわからないと登場人物に何ができて何ができないか、 物語展開のお約束や禁止事項など細かい事がわからないので遊ぶのが難しく面白くもないものです。 通常のRPGでもそういう面はあるのですがナラティブRPGでは特にそういう問題点が出易いので、 参加者の中に世界観に詳しくないプレイヤーがいる場合には、 他のプレイヤーやナレーターで時間をとって十分にフォローしてあげる必要があります。
●公平性
ナラティブRPGの目的は面白いストーリーを語ることなのですが、 当然ならがそれが得意なプレイヤーと不得意なプレイヤーがいます。 そのためにある程度(プレイヤーとしての)活躍に差が出るのは仕方がないのですが、 ナレーターとしてはプレイヤー間の公平性には気を配ってください。 これは結果としての公平性という意味ではなくて、 プレイヤーには平等に物語を語るチャンスを与えるべきという意味です。
放っておくと話しが面白いプレイヤー、 アイディアが豊富なプレイヤー、 ともすれば声が大きなプレイヤーばかりが話している状況になりがちです。 共同作業というのはナラティブRPGの楽しみの一つですので、 あまり話していないプレイヤーがいるようならば他のプレイヤーやナレーターはその人のために時間をとって語ってもらようしてください。 特にナレーターは話を進める前に個々のプレイヤーの意見に十分に耳を傾けるようにしてください。
●最後に
以上で HeroQuest の紹介/解説の連載を終わりにしたいと思います。 ナラティブなRPGに馴染みがない人にわかるよう意図したため冗長になってしまい申し分けないのですが、 ここまで付き合ってくれた人は HeroQuest をプレイヤーとして遊ぶのに十分な情報が伝わっているものと思います。
ナレーターをする人は是非ルールブックを買って読んでください。 考え方やプレイの例が豊富ですし、 とどめの一撃、 離脱、 援助、 危険な賭け、 防御対応、 犠牲の上での勝利、 回復、 知人、 部下、 相棒、 共同体などなど色々な場面で使えるオプションのルールが記載されています。
この記事を読んでナラティブRPGに興味を持った人は Fate系(そういう名前のRPGシステムがあります。 Type-Moonとは関係ないです)とか、 Apocalypse World系などの他のナラティブなRPGを調べててみるのも面白いかもしれません。
個人的にはグローランサに趣味が寄っているので次は HeroQuest Glorantha が発売されたらその紹介を書きたいなとか思っています。 要望があるようなら上記のオプションとかを紹介するのもありかな。 それではまた機会があれば。
《以上》
ナラティブRPGである HeroQuest ではナレーターの仕事は一般的なRPGのゲームマスターのそれとは大きく違う部分があります。 この違いを理解することがとても大切です。 ナラティブRPGのゲームマスターの仕事はプレイヤーと対立することではありません(これはまあ普通のPRGでもそうですが)。 プレイヤーに何ができて何ができないかを伝えることでもありません。 間抜けなプレイヤーを罰したり、 逆に賢いプレイヤーにご褒美を与えることでもありません。 物語の筋書を決めるのも詳細な設定をつくるのもナレーターの仕事ではありません。
ナレーターの仕事はプレイヤーの物語に全面協力すること、 物語が停滞しないように動かし続けること、 物語が説得力を持ち魅力的であるように維持することです。
これらを行うためのナレーティングのコツを紹介してみたいと思います。 と言っても私もまだまだ未熟なナレーターなので大上段にこれがナレーティングのやり方だと教えることはできそうにないので、 ルールブックやその他で紹介されているやり方や経験を元に私なりに説明してみたいと思います。
●ナレーターはストーリーを語らない
一般的なRPGではゲームマスターは舞台やストーリー展開を予め決めておいて、 それに合わせて地図やモンスターやNPC等の数値や様々な仕掛けなどを準備しておきます。 ゲームマスターは準備した筋書から大きく外れると、 せっかく手間をかけた数値情報や仕掛などが無駄になるため、 できる限りこれを避けるのが普通です。 プレイヤー側もそのことを念頭において、 ゲームマスターの考えを読んでその筋を辿るのが礼儀正しいプレイとされ、 そこから外れて勝手な方向に進めるのは無作法とみなされがちです。
ナラティブRPGではここが逆でストーリーを語るのはプレイヤーの役目です。 ナレーターが物語の筋書を決めるのは御法度です。 ナレーターは舞台を準備する時に面白そうな筋書を考えついたりするものですが、 それは最初から捨てるつもりでいてください。 あらかじめ準備したストーリーにプレイヤーを誘導するようなことは絶対にしてはいけません。
単なるストーリー指向とナラティブの最大の違いはこのプレイヤーが物語を作るという点です。 ナラティブRPGでストーリーを語るのはプレイヤーの仕事で、 ナレーターはその物語に対して全面協力する立場です。 通常のRPGに馴れているプレイヤーにはこの点を何度でも説明してあげてください。 それでも最初は何をどう進めていいのかて戸惑うと思うので、 ナレーターは質問などの形でプレイヤーが物語を作るのように促して上げてください。
●「はい」と言おう
このプレイヤーの物語に全面協力するということを最もうまく表現したのが“「はい」と言おう”手法です。 ナレーターはプレイヤーの全ての質問に「はい」と答えてください。
「この塀は登れるかな?」 「はい。 なんとか登れそうです」
「この家に勝手口はないかな?」 「はい。 あるみたいですね」
「花鉢の下とかに裏口の鍵を隠してないかな?」 「おお、 よく見つけたね。 探してみると確かに小さな薔薇の鉢の下に鍵らしきものがあるよ」
「この裏口が突入すると犯人の不意をつけないかな?」 「はい。 多分うまくいきそうですね」プレイヤーが思いついたことに対して肯定することとにより、 プレイヤー側に物語の主導権を渡してください。 ナレーターとして予め決めておいた設定とかは無視して構いません。 それよりはプレイヤーの話しに合わせるのが重要です。 裏口なんか設定してなかった? いえいえプレイヤーが裏口について語ったのならそれはあるのです。 ナレーターの脳内設定も事前準備もいくらでも変更可能です。 それどころかプレイヤーの物語と公式の世界設定が矛盾するようならば世界設定の方を変えてください。 全面協力というのはそういことです。
ナラティブな遊び方に馴れていないプレイヤーたちは最初は大いに戸惑うと思いますが、 自分たちの作った設定が全て受け入れられるということを理解してもらえれば、 自然と自分たちで物語を作るようになるはずです。
●「はい、 しかし」と言おう
ナレーターの二つ目の仕事は物語が動き続けるように保つことです。 どちらの方向へ物語を動かすかを決めるのはプレイヤーの役目なので、 ナレーターはとにかく動かすことだけを考えます。 プレイヤーの議論が堂々巡りしているようならば決断を求めてください。 何をしていいか全く判らないようならば質問や新しい情報の形で支援してください。
そして、 PCの行為や結果描写が物語の流れを止めてしまいそうな時に使うのが“「はい、 しかし」と言おう”手法です。
時にプレイヤーたちは、 つまらない安易な方法で障害を克服しようとしたり、 せっかくの面白くなりそうな要素を台無しにするような提案をしてくるものです。 このような場合には単に「はい」と答えるのではなく、 「はい、 しかし」を使います。
「この塀は登れるかな?」 「はい。 登るのは簡単そうだけど、 上の方に何か仕掛けが見えるね。 赤外線センサーか何かかな。」
「この家に勝手口はないかな?」 「はい、 探すとすぐ見つかったよ。 でも大きな木の板が何枚も打ちつけてあって開けるのは大変そうだね 」
「打ちつけている板だけど頑張れば外せそうかな?」 「はい。 しかし大きな音を立てずに丁寧に外そうとすると、 それなりの工具とかが必要だろうね」
「この裏口から突入すると犯人の不意をつけないかな?」 「多分いけそうだけど、 犯人グループの中に猜疑心の強そうなのが一人いたよね、 そいつが何か準備してるかもね」このような工夫により、 プレイヤーの提案を拾った上で、 新たな別の問題へと展開させることにより物語の流れを止めないようにします。
●「いいえ」と言おう
ナレーターの三つ目の仕事は物語が説得力を持ち続けるように保つことです。 魅力的な物語は一貫性を持ちその世界観を維持しているものです。 これを実現するためにはナレーターは時々「いいえ」と言う必要もあります。
例えばファンタジー設定なのに火薬兵器を持ちだしたり、 勧善懲悪物なのにヒーローたちが一般市民を虐殺したら興醒めという他ないですよね。 このような最初に決めた物語の「前提」からの逸脱は阻止しなければなりません。
同様に既に語られた出来事や設定に反するような物語展開を認めてはいけません。 まだ語られておらずナレーターしか持っていない設定やプロットに関してはそちらを変えてしまえば良いのですが、 一旦語られた過去の物語との一貫性は維持しなければなりません。
このように物語が、 いかにも有りえそうな、 信頼できるもになっているかの確認する作業を信憑性テスト(Credibility Test)と言います。 プレイヤーの提案した行為や結果描写がその世界観で可能かどうか物語として納得いくものになっているかを読者の視点できちんと確認するのはナレーターの役目です。 信憑性テストに合格しないようならば「いいえ」といって止めてください。
●シナリオの準備
ナレーターの仕事の中でもシナリオの準備というのは難しい課題です。 ストーリーラインが全面的にプレイヤーまかせなために、 結局はアドリブにならざるを得ません。 そういう意味でベテランのゲームマスターならばアドリブで最初から最後まで全部進めることができるかもしれませんが、 普通はなかなか難しいものです。
ナラティブRPGでは一般的なRPGと違ってストーリーを準備してそれに関連する設定を詳細に決めておくという具合にはいきません。 かといって全てアドリブでは手が回りません。 ということで HeroQuest のシナリオとして以下のような物を準備しておくのが良いようです。
- 物語のきっかけ: これは解決すべき問題の準備です。 そして、 それを何故PCが解決しなければいけないかの理由と、 それがPCにもたらされる経緯を決めておきます。 物語の最初は比較的ナレーターが主導権を持って進められるので難しくないと思います。
- 物語の終り: どのような条件を満たせば物語が終るのかをある程度決めておきます。 一つだけである必要はなく複数でも構いません。 プレイヤーたちが全く違ったエンディングを指向したりするので役に立たないことも多いのですが、 全然決めずにおくとプレイヤーにアイディアがない時にみんなで途方に暮れることにもなりかねません。
- 対立関係: 物語内で誰と誰がどのような理由で対立する可能性があるかを決めておきます。 ドラマは対立と葛藤から生まれます。 これが問題が何故簡単に解決できないかの理由にもなります。 集団かもしれませんし個人かもしれません。 NPC対PCかもしれませんし、 NPCどうしの対立にPCが絡むかもしれません。 具体的な人物ではなく自然の脅威とか法律が立ちはだかるのかもしれません。
- 背景の流れ: 実際の物語を作るのはプレイヤーたちですが、 もしPCたちが物語に積極的に関わらなかった時に、 何が起こりどのような展開になるのかをある程度決めておきます。 これは悪い未来を予想させてPCたちの関与を引き出すための仕掛けにもなります。
- NPCの設定: 主要な登場人物(NPC)の名前(重要)、 外見、 性格、 人間関係、 得意な事、 欠点などを決めておきます。 敵(やライバル)は欠かせませんし、 潜在的な協力者も必要です。 HeroQuest では他のPRGのように数値的な詳細を決めたり戦力バランスを取っておく必要はないので、 その労力をNPCの性格や人間関係の設定に使います。
●マクガフィン
シナリオの準備はだいたい上記のような感じで済むのですが、 それだけで良いセッションになるかというと必ずしもうまく行くわけではありせん。 良いシナリオの作成には映画や活劇のシナリオ作成術が役に立ったりします。 そういうわけで少し例をあげてみたいと思います。
映画のシナリオ用語でマクガフィン(MacGuffin)という言葉があります。 ヒッチコック監督の言葉なので聞いたことがある人も多いかもしれません。 「それ自体には特別な意味がないけれども登場人物の重大な関心事になっているなっているアイテム」くらいの意味で、 スパイ映画でスパイたちが奪い合う書類がマクガフィンに当ります。 その書類が原爆の設計図なのか大統領のスキャンダルなのかといった内容は重要ではなく、 それを巡って物語を転がっていくことに意味があるものです。
ナラティブRPGのシナリオにおいてもマクガフィンはとても役に立ちます。 マクガフィンの登場により物語が始まり、 マクガフィンの運命を巡ってPCたちの物語が展開して行き、 その意味の消滅によって物語が終わるようにします。 ナラティブRPGはバラバラの指向を持つプレイヤーたちによって物語が発散しがちなのですが、 マクガフィンを導入することにより、 PCやNPCたちの注目を一点に集めてることができ、 シナリオが空中分解を起こさずに、 一つにまとめることができます。
●セットピース
もう一つ別のものも紹介してみます。 同じく映画の用語でセットピース(Setpiece)というのがあります。 これは「あらかじめ準備され綿密に練られた重要なシーン」を指します。 ファンタジー特有の壮大で幻想的な風景なのかもしれませんし、 手に汗握るアクションシーンかもしれませんし、 抱腹絶倒のコメディシーンかもしれません。 とにかく、 その映画を見た人たちの記憶に後々まで残ることを企図したシーンを言います。
ナラティブRPGでもこのようなセットシーンを準備するのは良い考えです。 ありきたりの展開だけではプレイヤーたちの記憶からすぐに忘れられてしまうかもしれませんが、 非常に際だった特徴的なシーンを設けることによりシナリオをより印象深く記憶に残るものにすることができます。
ナラティブRPGのストーリーはプレイヤーがつくるので必ずしも準備したセットピースが使えるとは限りませんが、 プロットではなく単発のシーンだけならば挟み込む余地があるものです。 準備したシーンにPCを誘導するのは避けなければなりませんが、 セットピースの方をプレイヤーたちの語るストーリーに合わせて変更することはできます。
●ナレーターの心掛け
最後になりましたが経験にもとづいてナレーター(とプレイヤー全員)の心掛けるべき点とかを書いておきます。 これは言われるまでもなく当り前の話なのかもしれませんが、 以下の二つはナラティブRPGでは特に重要と感じています。
●世界観の共有
ナラティブRPGを遊ぶ上において世界観の共有というのは非常に重要な意味を持ちます。 例えば海洋冒険小説を読んだり映画を見たりしたことがない人に航海物語をつくれというのは、 とても困難というのは判ると思います。
逆に参加者が全員がよく知っている物語世界で遊ぶのは簡単です。 例えば日本人ならば時代劇の「水戸黄門」で遊ぶのはとても簡単でしょう。 もちろん参加者全員がよく知っているアニメやコミックの世界を舞台に遊ぶのは、 大変遊び易いし面白いはずです。
世界観がわからないと登場人物に何ができて何ができないか、 物語展開のお約束や禁止事項など細かい事がわからないので遊ぶのが難しく面白くもないものです。 通常のRPGでもそういう面はあるのですがナラティブRPGでは特にそういう問題点が出易いので、 参加者の中に世界観に詳しくないプレイヤーがいる場合には、 他のプレイヤーやナレーターで時間をとって十分にフォローしてあげる必要があります。
●公平性
ナラティブRPGの目的は面白いストーリーを語ることなのですが、 当然ならがそれが得意なプレイヤーと不得意なプレイヤーがいます。 そのためにある程度(プレイヤーとしての)活躍に差が出るのは仕方がないのですが、 ナレーターとしてはプレイヤー間の公平性には気を配ってください。 これは結果としての公平性という意味ではなくて、 プレイヤーには平等に物語を語るチャンスを与えるべきという意味です。
放っておくと話しが面白いプレイヤー、 アイディアが豊富なプレイヤー、 ともすれば声が大きなプレイヤーばかりが話している状況になりがちです。 共同作業というのはナラティブRPGの楽しみの一つですので、 あまり話していないプレイヤーがいるようならば他のプレイヤーやナレーターはその人のために時間をとって語ってもらようしてください。 特にナレーターは話を進める前に個々のプレイヤーの意見に十分に耳を傾けるようにしてください。
●最後に
以上で HeroQuest の紹介/解説の連載を終わりにしたいと思います。 ナラティブなRPGに馴染みがない人にわかるよう意図したため冗長になってしまい申し分けないのですが、 ここまで付き合ってくれた人は HeroQuest をプレイヤーとして遊ぶのに十分な情報が伝わっているものと思います。
ナレーターをする人は是非ルールブックを買って読んでください。 考え方やプレイの例が豊富ですし、 とどめの一撃、 離脱、 援助、 危険な賭け、 防御対応、 犠牲の上での勝利、 回復、 知人、 部下、 相棒、 共同体などなど色々な場面で使えるオプションのルールが記載されています。
この記事を読んでナラティブRPGに興味を持った人は Fate系(そういう名前のRPGシステムがあります。 Type-Moonとは関係ないです)とか、 Apocalypse World系などの他のナラティブなRPGを調べててみるのも面白いかもしれません。
個人的にはグローランサに趣味が寄っているので次は HeroQuest Glorantha が発売されたらその紹介を書きたいなとか思っています。 要望があるようなら上記のオプションとかを紹介するのもありかな。 それではまた機会があれば。
《以上》
2014年7月8日
HeroQuest紹介(11) - ヒーローポイントと成長
●ヒーローポイントの入手
今回はヒーローポイント(Hero Point)と成長について説明します。 まず各プレイヤー・キャラクターは作成時に3ポイントのヒーローポイントをもらえます。 そして各セッションの終りに2〜4ポイントのヒーローポイントを獲得できます。 さらにセッションで最も面白いプレイをしたプレイヤーを投票して1ポイントのボーナスを与えるというオプションもあります。
2〜4ポイントと幅があるのはセッションの時間やその濃さによって変えるためです。 この時に欧米で毎週決まった曜日の夜に集まって数時間ゲームを遊ぶという習慣があるということを覚えておくと良いでしょう。 このため1回のセッションというのは2〜3時間程度というのを前提に計算して、休日に集まって1日遊ぶ場合には途中で切って何回かのセッションに分けて遊ぶと良いでしょう。
数セッションからなるシナリオの終りにさらに追加で3ポイントのヒーローポイントが配布されます。 オプションとしてシナリオ全体を通してのMVPを投票してその報奨を与えることもできます。
●アビリティの成長
セッションの終りにヒーローポイントを使用してキャタクターを成長(Improve)させることができます。 ヒーローポイントを1ポイント支払うことにより持っているアビリティのうち一つを +1 することができます。
一度に複数上げるのはより難しくなります。 +2 するためには 1+2 で3ポイント必要になります。 +3 するためには 1+2+3 で6ポイント、 +4 するためには 1+2+3+4 で10ポイント必要になります。
●キーワードの成長
アンブレラ型のキーワードはアビリティではなく、 キーワード自身を上昇させることもできますが、 それにはアビリティの2倍のヒーローポイントが必要になります。 +1 するために2ポイント、 +2 するためには6ポイント、 +3 するためには12ポイントといった具合です。
●新しいアビリティの獲得
ヒーローポイントを1ポイントを支払うことにより新しいアビリティを13で獲得できます。 これにはそのアビリティを獲得した経緯に関して合理的な説明が必要になります。
最も一般的な使い方はゲームの中での出来事に関連したアビリティを獲得することです。 逆に言うとセッション中で入手したアイテムや新しい友人などの人間関係をそのキャラクターの属性の一部として永続化した場合にはヒーローポイントを支払って新しいアビリティとして獲得しなければなりません。 これを経験の固定化(cementing an experience)と言います。
●キャッチアップ
有能な主人公たちは際だった能力を持っているものです。 これは多くのRPGでも同様で、 プレイヤーたちがそのキャラクターの最も得意な分野を一本伸ばしする強い動機になります。 HeroQuestも例外ではなく、 プレイヤーたちはPCの得意な能力を中心的に成長させようとするはずです。 そうすると時間が経つに従って得意なアビリティそうでないアビリティとの数値な差が大きくなってしまうためますます得意分野しか使用できなくなってしまいます。
この問題を補正するためにキャッチアップ(Catch-Up:追い上げ)というシステムが整備されています。 成長においてアビリティに新しいマスタリーを獲得する毎に、 成長してマスタリーを獲得したアビリティよりも5ポイント以上低いアビリティを最大5個まで選んで、 3ポイントづつ成長させることができます。 これにより主要な数個のアビリティを成長させていくだけで、 残りのアビリティもそれなりに成長する仕組みになっています。
アンブレラ型キーワードを使用している場合にはキーワードの中に含まれる個別アビリティをキャッチアップで上昇させたり、 個別アビリティの上昇ではキャッチアップは獲得できません。 そしてキーワード自身をキャッチアップで上昇させたい場合にはアビリティ2個分として計算します。
●指示成長
ナレーターはPCの特定のアビリティを指定して1〜3ポイント上昇させることができます。 これを指示成長(Directed Improvement)といいます。 これはセッション中でもその場ですぐに成長が適用されます。 多くの場合、指示成長は特に重要だたりドラマティックな物語上の障害を克服した報酬として与えます。 ナレーターはこれによりプレイヤーが通常は成長させないようなアビリティを成長させて、多彩なアビリティを維持することができます。
またナレーターは指示成長を使って物語中で獲得した能力や新しい人間関係やのうちの特に重要なものを新しいアビリティとして(たいては13で)獲得させることもできます。 これにより物語中での一貫性を推奨することができます。
●成長速度の補正
多くの物語において主人公たちは最初から完成された存在であり、 物語を通して大きな成長はありません。 これを表現するために HeroQuest においてはPCの成長速度はゆるやかなものになっています。 しかしながらファンタジーのような一部のジャンルではキャラクターの成長がテーマになっており早い速度で成長するのが普通です。 逆に例えばホラーやサバイバルやハードSFのような分野では主人公たちは弱い存在のままでほとんど成長することはありません。
これを表現するために成長に必要なヒーローポイントの量を調整することができます。 ファンタジーなどで成長を重視するならばより少ないヒーローポイントで成長させることができるようにします。 逆にホラー等で成長を遅くしたいならば成長に必要なヒーローポイントの量を増やします。
PCの成長速度を変更した場合には、 前回に紹介した抵抗の基本値も同様に修正してバランスを取るようにしてください。
●ヒーローポイントと成長のバランス
HeroQuest のヒーローポイントはコンテストにおける成功度の繰り上げと、 キャラクターの成長の両方に使用します。 ゲーム的には配布されたヒーローポイントの半数強をセッション内での繰り上げに使い残りを成長に使うバランスで設計されているようです。 前回に説明したセッション数による抵抗の基本値の表も半分未満を成長に使う感じになっています。
個人的な経験になりますが、ナラティブRPGに馴れていないプレイヤーの中には他のRPGのように成長を目的として、あまりセッションの中での繰り上げにヒーローポイントを使いたがらず温存する傾向を持つ人がいます。 ヒーローポイントを使用した活躍は HeroQuest の華であり、 キャラクターを生かし物語を面白くする最大の機会なのですが。
このようなプレイヤーたちにはナラティブRPGにおいてはキャラクターを成長させ強くすることは目的ではなく、 面白い物語を創ることが目的であることを再度強調して、 配布したヒーローポイントの少なくとも半分は成長ではなく、 セッション中の活躍に使うべきであると伝えてあげてください。
それでもプレイヤーたちが納得がいかず成長を重視してヒーローポイントの使用を渋るようならば、 いっそのこと成長用のヒーローポイントと繰り上げ用のヒーローポイントを別々に配布するようにするとうまく回るようです。 さらに繰り上げ用のヒーローポイントはセッションごとの使い捨てで余ったとしても成長には使えないことにすれば積極的に使うしかありませんね。
《続く》
簡単ですがヒーローポイントと成長について説明しました。 とても軽量なRPGである HeroQuest においてヒーローポイントは唯一管理すべきリソースで、 主としてプレイヤー間の活躍のバランスを取っています。 だいたい主要なルールは今回までで全て説明し終りました。 次回は最終回としてナレーターのテックニックについて説明できればと思います(私にうまくできるかな?)。
今回はヒーローポイント(Hero Point)と成長について説明します。 まず各プレイヤー・キャラクターは作成時に3ポイントのヒーローポイントをもらえます。 そして各セッションの終りに2〜4ポイントのヒーローポイントを獲得できます。 さらにセッションで最も面白いプレイをしたプレイヤーを投票して1ポイントのボーナスを与えるというオプションもあります。
2〜4ポイントと幅があるのはセッションの時間やその濃さによって変えるためです。 この時に欧米で毎週決まった曜日の夜に集まって数時間ゲームを遊ぶという習慣があるということを覚えておくと良いでしょう。 このため1回のセッションというのは2〜3時間程度というのを前提に計算して、休日に集まって1日遊ぶ場合には途中で切って何回かのセッションに分けて遊ぶと良いでしょう。
数セッションからなるシナリオの終りにさらに追加で3ポイントのヒーローポイントが配布されます。 オプションとしてシナリオ全体を通してのMVPを投票してその報奨を与えることもできます。
●アビリティの成長
セッションの終りにヒーローポイントを使用してキャタクターを成長(Improve)させることができます。 ヒーローポイントを1ポイント支払うことにより持っているアビリティのうち一つを +1 することができます。
一度に複数上げるのはより難しくなります。 +2 するためには 1+2 で3ポイント必要になります。 +3 するためには 1+2+3 で6ポイント、 +4 するためには 1+2+3+4 で10ポイント必要になります。
●キーワードの成長
アンブレラ型のキーワードはアビリティではなく、 キーワード自身を上昇させることもできますが、 それにはアビリティの2倍のヒーローポイントが必要になります。 +1 するために2ポイント、 +2 するためには6ポイント、 +3 するためには12ポイントといった具合です。
●新しいアビリティの獲得
ヒーローポイントを1ポイントを支払うことにより新しいアビリティを13で獲得できます。 これにはそのアビリティを獲得した経緯に関して合理的な説明が必要になります。
最も一般的な使い方はゲームの中での出来事に関連したアビリティを獲得することです。 逆に言うとセッション中で入手したアイテムや新しい友人などの人間関係をそのキャラクターの属性の一部として永続化した場合にはヒーローポイントを支払って新しいアビリティとして獲得しなければなりません。 これを経験の固定化(cementing an experience)と言います。
●キャッチアップ
有能な主人公たちは際だった能力を持っているものです。 これは多くのRPGでも同様で、 プレイヤーたちがそのキャラクターの最も得意な分野を一本伸ばしする強い動機になります。 HeroQuestも例外ではなく、 プレイヤーたちはPCの得意な能力を中心的に成長させようとするはずです。 そうすると時間が経つに従って得意なアビリティそうでないアビリティとの数値な差が大きくなってしまうためますます得意分野しか使用できなくなってしまいます。
この問題を補正するためにキャッチアップ(Catch-Up:追い上げ)というシステムが整備されています。 成長においてアビリティに新しいマスタリーを獲得する毎に、 成長してマスタリーを獲得したアビリティよりも5ポイント以上低いアビリティを最大5個まで選んで、 3ポイントづつ成長させることができます。 これにより主要な数個のアビリティを成長させていくだけで、 残りのアビリティもそれなりに成長する仕組みになっています。
アンブレラ型キーワードを使用している場合にはキーワードの中に含まれる個別アビリティをキャッチアップで上昇させたり、 個別アビリティの上昇ではキャッチアップは獲得できません。 そしてキーワード自身をキャッチアップで上昇させたい場合にはアビリティ2個分として計算します。
●指示成長
ナレーターはPCの特定のアビリティを指定して1〜3ポイント上昇させることができます。 これを指示成長(Directed Improvement)といいます。 これはセッション中でもその場ですぐに成長が適用されます。 多くの場合、指示成長は特に重要だたりドラマティックな物語上の障害を克服した報酬として与えます。 ナレーターはこれによりプレイヤーが通常は成長させないようなアビリティを成長させて、多彩なアビリティを維持することができます。
またナレーターは指示成長を使って物語中で獲得した能力や新しい人間関係やのうちの特に重要なものを新しいアビリティとして(たいては13で)獲得させることもできます。 これにより物語中での一貫性を推奨することができます。
●成長速度の補正
多くの物語において主人公たちは最初から完成された存在であり、 物語を通して大きな成長はありません。 これを表現するために HeroQuest においてはPCの成長速度はゆるやかなものになっています。 しかしながらファンタジーのような一部のジャンルではキャラクターの成長がテーマになっており早い速度で成長するのが普通です。 逆に例えばホラーやサバイバルやハードSFのような分野では主人公たちは弱い存在のままでほとんど成長することはありません。
これを表現するために成長に必要なヒーローポイントの量を調整することができます。 ファンタジーなどで成長を重視するならばより少ないヒーローポイントで成長させることができるようにします。 逆にホラー等で成長を遅くしたいならば成長に必要なヒーローポイントの量を増やします。
PCの成長速度を変更した場合には、 前回に紹介した抵抗の基本値も同様に修正してバランスを取るようにしてください。
●ヒーローポイントと成長のバランス
HeroQuest のヒーローポイントはコンテストにおける成功度の繰り上げと、 キャラクターの成長の両方に使用します。 ゲーム的には配布されたヒーローポイントの半数強をセッション内での繰り上げに使い残りを成長に使うバランスで設計されているようです。 前回に説明したセッション数による抵抗の基本値の表も半分未満を成長に使う感じになっています。
個人的な経験になりますが、ナラティブRPGに馴れていないプレイヤーの中には他のRPGのように成長を目的として、あまりセッションの中での繰り上げにヒーローポイントを使いたがらず温存する傾向を持つ人がいます。 ヒーローポイントを使用した活躍は HeroQuest の華であり、 キャラクターを生かし物語を面白くする最大の機会なのですが。
このようなプレイヤーたちにはナラティブRPGにおいてはキャラクターを成長させ強くすることは目的ではなく、 面白い物語を創ることが目的であることを再度強調して、 配布したヒーローポイントの少なくとも半分は成長ではなく、 セッション中の活躍に使うべきであると伝えてあげてください。
それでもプレイヤーたちが納得がいかず成長を重視してヒーローポイントの使用を渋るようならば、 いっそのこと成長用のヒーローポイントと繰り上げ用のヒーローポイントを別々に配布するようにするとうまく回るようです。 さらに繰り上げ用のヒーローポイントはセッションごとの使い捨てで余ったとしても成長には使えないことにすれば積極的に使うしかありませんね。
《続く》
簡単ですがヒーローポイントと成長について説明しました。 とても軽量なRPGである HeroQuest においてヒーローポイントは唯一管理すべきリソースで、 主としてプレイヤー間の活躍のバランスを取っています。 だいたい主要なルールは今回までで全て説明し終りました。 次回は最終回としてナレーターのテックニックについて説明できればと思います(私にうまくできるかな?)。
2014年7月3日
HeroQuest紹介(10) - 修正値と抵抗値
●修正値
コンテストで状況によりPCのアビリティに対して足したり引いたりする値を修正値(Modifier)と言います。 HeroQuest の修正値には特定アビリティボーナス、 拡大解釈ペナルティ、 状況修正値、 増強、 プロット増強などの種類があります。
HeroQuest ではこれらの修正値も主としてナラティブな考え方にもとづいて決めます。 それぞれの修正について少し詳しく説明してみます。
●特定アビリティボーナス
プレイヤーたちはアビリティを決める際にできるだけ多彩な面白いものにするように求められます。 ゲームの中で、 詳細なアビリティのうち一つが状況にピッタリ一致していて、 それを使うのはこの場面しかないということがあります。 この場合には特定アビリティボーナス(Specific Ability Bonus)といって +3 または +6 の修正を獲得します。
これは多彩で詳細化されたアビリティを設定したことに対するご褒美のようなものなので、 汎用的なアビリティに対しては与えられません。 とはいえナラティブRPGはプレイヤーが自分の思うようにストーリーを誘導できるので、 詳細化されたアビリティでもそれなりにボーナスを得る機会はあるものです。
逆に同じゲームに参加しているPCの中に特定の状況に対してよく一致したアビリティを持つキャラクターと、 明らかに広汎なアビリティを持つキャラクターが両方いる場合にはPC間のバランスを取るために、 広汎なアビリティを持つプレイヤーには -3 または -6 ペナルティが適用されます。 これはあくまでバランスを取るためで後述の拡大解釈とは違う点に注意してください。汎用的なアビリティでも、 今実際に行おうとして行為に関して自分より適切なアビリティを持つキャラクターがいないならばペナルティを受けるこはありません。
●拡大解釈ペナルティ
時々プレイヤーから不可能とまでは言い切れないまでも普通は有りそうにないアビリティの応用が提案されることがあります。 これを拡大解釈(Stretch)といいます。 例えば「英文学」のアビリティでイタリア語で会話しようとするような完全に無関係とは言い切れないけれども一般性の低いものです。
物語を進めていくためには場合によってこういった拡大解釈も必要になります。 ただしキャラクターの一貫性を維持するために拡大解釈をした場合には拡大解釈ペナルティとしてアビリティに -6 が適用されます。 さらにそのコンテストに完全勝利や大勝利したとしても通常勝利までとして扱います。
どこまでが通常の応用でどこからが拡大解釈になるか、 どこまでの拡大解釈が許されてどこから不可能になるかは物語のジャンル、 モード、 キャラクターの過去の経緯などによって様々です。 ナレーターが適宜判断することになります。
●状況修正値
状況による難易度の違いは通常は抵抗値を変化させることで表現しますが、 拡張コンテストの途中などでプレイヤーの行動に対する一時的な変化はアビリティへの修正として適用します。 これを状況修正値(Situational Modifier)といいます。
プレイヤーのとった行動によってそのラウンドのエクスチェンジが顕著に有利だったり不利だったりと判断した場合にはアビリティに -6, -3, +3, +6 の修正を適用してください。 全員に適用される永続的な補正は状況修正ではなく抵抗値の方を変化させます。
●増強
HeroQuest のコンテストにおいて、あるアビリティを使って別のアビリティの成功率を上昇させることができます。 これを増強(Augment)といいます。 増強は独立した単純コンテストを行って、 その勝利レベルにより対象のアビリティに以下の表のようなボーナスを得ることができます。
ナラティブな遊び方において増強も演出手段の一つです。 このため論理的に可能な増強全てが許されるわけではなく、 物語的に意味があるもののみが許可されます。 増強を行うためには以下のいずれかの条件(できれば複数)を満たす必要があります。
新鮮(fresh): 目新しい手段で読者に驚きを与えるような増強の使い方。 最近使った増強を繰り返すような退屈なことは認められません。
照明(illuminate): そのキャラクターやキャラクター間の関係性に照明をあてて、 読者にキャラクターの何かを明らかにしたり特徴を認識させる増強の使い方。 既にわかりきっていることはアビリティや抵抗値に含まれているものと考えます。
緊張(suspense): その増強を行うのに何らかのリスクをともない、 それによって物語の緊張感を高めその増強の成否に参加者全員が関心を持つような使い方。
感情(emotinal): その増強により全員が興奮したり、 心から笑ったり、 同情心を共有したりなどの何らかの感情的な反応を引き出すことができる使い方。
ナラティブRPGである HeroQuest では勝率を上げるためではなく、 物語を面白くするために増強を使います。 退屈な増強のために無駄な時間を使わないようにしてください。 原則として一つのコンテストにつき一回しかアビリティの増強は試みることができません。 ただしナレーターが指示して行う増強にはこの制限はありません。 また増強のために増強を行うような連鎖は許されません。
●プロット増強
冒険においてプロット上の障害を克服することにより得られる特別な増強をプロット増強(Plot Augment)といいます。 通常の増強と違ってそのサブシナリオをクリアするためには複数のコンテストで勝利する必要があるかもしれませんし、 場合によってはコンテスト全く無しで賢いロールプレイの結果としてプロット増強が与えられるかもしれません。
このようなシナリオ上の障害を克服することにより後の冒険において +3, +6, +9, +W のいずれかのプロット増強を得ることができます。 プロットの内容によっては一人ではなく複数のキャラクターのアビリティに増強を得ることができる場合もあります。 通常の増強と違ってプロット増強は同時に複数を獲得することができますし、 通常の増強と重ねることもできます。
これはゲームブックやコンピューターゲームにおけるフラグ立てによるボーナスと同じようなものだと考えると判り易いかもしれません。 以前に適切な冒険を行ってフラグを立てておくことにより後のコンテストで有利な修正を得るというものです。 ドラゴンを倒しに行く前に寄り道をして弱点を調べたりドラゴンスレイヤーを入手したりすれば良いというわけです。
●抵抗値の決め方
コンテストにおいて相手側の目標値となる数値を抵抗値(Resistance)といいます。 HeroQuest ではシナリオであらかじめ抵抗値を決めておくことはしません。 コンテストごとにその状況に合わせてナレーターがその値を決めます。
基本的な考えとして、その状況における成功および失敗の可能性にもとづいて難易度を決めます。 ただしここでいう可能性はシミューレション的な意味の可能性ではなく、 ナレーターの物語的な直感によります。 これまでの流れで物語的感覚で主人公が失敗しそうならば高い難易度を、 成功が予想されるならば低い難易度を設定します。 どうしてその抵抗値になるのかの具体的な理由は後付けで決めて構いません。
直感で決めるといっても馴れていないナレーターには難しいかもしれません。 そのため以下に紹介するようないくつか指針があります。 あくまで指針なので直感と指針が矛盾するようならば直感の方を優先してください。
●抵抗の基本値
まず以下の表を使ってセッションの回数から基本となる抵抗値を決めます。
この数値がそのセッションでの平均的な難易度になります。 この表はセッション回数が進んでキャラクターが成長するとコンテストの難易度が上がって行くことを示しています。 主要なアビリティは2セッションごとに+1、 増強に使うような補助的なアビリティは4セッションごとに+1される前提になっています。 PCが強くなれば障害もそれに合わせて手強くなっていくということです。
●抵抗クラス
次にコンテストの抵抗を「ほとんど不可能」「とても高い」「高い」「中くらい」「低い」「とても低い」の6段階の抵抗クラスのどれに当るか決めます。 そして上記の基本値を以下の表に従って補正します。
この抵抗クラスはキャラクターの行動や物語の展開によって以下のような感じで決めます。
●成功/失敗サイクル
ナラティブなゲームではプレイヤーの発想で物語が進むため、 あらかじめ難易度を決めておくことはできません。それで予想もしないような展開により難易度を決めるのが非常に難しいことが多々あります。 プレイヤーたちがいきなり「井戸を掘る」とか「古道具屋を探す」とか言い出した時、 その難易度はどうすべきでしょうか? 特に理由がなく展開が想定できなければ「中くらい」の難易度を選ぶのが基本ですが、 それではコンテストの難易度が「中くらい」ばかりになってしまいそうです。
この時に参考にするのが成功/失敗サイクルです。 多くの小説、 映画、 昔話、 神話などにおいて主人公たちは成功ばかりではなく何度も失敗します。 成功と失敗を交互に繰り返すことにより徐々に最終目標に近付いていく形態を取ります。 これを成功/失敗サイクル(Pass/Fail Cycle)と呼びます。 成功と失敗の連鎖が物語を盛り上げる基本です。
このメカニズムを難易度の決定に応用することができます。 過去2回の主要なコンテストの勝敗を以下の表で参照して次のコンテストの難易度を決めます。 その際に完全勝利と大勝利は勝利2回分、 完全敗北と大敗北は敗北2回分として計算します。
これにより平板で同じような難易度が続くことなく物語にリズムを与えることができます。 覚えておいて欲しいのはこの成功/失敗サイクルというのは他の方法で抵抗値を決めることができない時に使用する予備の方法であるということです。 ナレーターの直感や物語の流れにより抵抗値が決まる場合はそちらを優先してください。
《続く》
今回はコンテストの要である修正値と抵抗値の決め方について説明しました。 通常のRPGと考え方が大きく違うことが伝わったでしょうか? 次回は残った成長に関するルールを紹介する予定です。
コンテストで状況によりPCのアビリティに対して足したり引いたりする値を修正値(Modifier)と言います。 HeroQuest の修正値には特定アビリティボーナス、 拡大解釈ペナルティ、 状況修正値、 増強、 プロット増強などの種類があります。
HeroQuest ではこれらの修正値も主としてナラティブな考え方にもとづいて決めます。 それぞれの修正について少し詳しく説明してみます。
●特定アビリティボーナス
プレイヤーたちはアビリティを決める際にできるだけ多彩な面白いものにするように求められます。 ゲームの中で、 詳細なアビリティのうち一つが状況にピッタリ一致していて、 それを使うのはこの場面しかないということがあります。 この場合には特定アビリティボーナス(Specific Ability Bonus)といって +3 または +6 の修正を獲得します。
これは多彩で詳細化されたアビリティを設定したことに対するご褒美のようなものなので、 汎用的なアビリティに対しては与えられません。 とはいえナラティブRPGはプレイヤーが自分の思うようにストーリーを誘導できるので、 詳細化されたアビリティでもそれなりにボーナスを得る機会はあるものです。
逆に同じゲームに参加しているPCの中に特定の状況に対してよく一致したアビリティを持つキャラクターと、 明らかに広汎なアビリティを持つキャラクターが両方いる場合にはPC間のバランスを取るために、 広汎なアビリティを持つプレイヤーには -3 または -6 ペナルティが適用されます。 これはあくまでバランスを取るためで後述の拡大解釈とは違う点に注意してください。汎用的なアビリティでも、 今実際に行おうとして行為に関して自分より適切なアビリティを持つキャラクターがいないならばペナルティを受けるこはありません。
●拡大解釈ペナルティ
時々プレイヤーから不可能とまでは言い切れないまでも普通は有りそうにないアビリティの応用が提案されることがあります。 これを拡大解釈(Stretch)といいます。 例えば「英文学」のアビリティでイタリア語で会話しようとするような完全に無関係とは言い切れないけれども一般性の低いものです。
物語を進めていくためには場合によってこういった拡大解釈も必要になります。 ただしキャラクターの一貫性を維持するために拡大解釈をした場合には拡大解釈ペナルティとしてアビリティに -6 が適用されます。 さらにそのコンテストに完全勝利や大勝利したとしても通常勝利までとして扱います。
どこまでが通常の応用でどこからが拡大解釈になるか、 どこまでの拡大解釈が許されてどこから不可能になるかは物語のジャンル、 モード、 キャラクターの過去の経緯などによって様々です。 ナレーターが適宜判断することになります。
●状況修正値
状況による難易度の違いは通常は抵抗値を変化させることで表現しますが、 拡張コンテストの途中などでプレイヤーの行動に対する一時的な変化はアビリティへの修正として適用します。 これを状況修正値(Situational Modifier)といいます。
プレイヤーのとった行動によってそのラウンドのエクスチェンジが顕著に有利だったり不利だったりと判断した場合にはアビリティに -6, -3, +3, +6 の修正を適用してください。 全員に適用される永続的な補正は状況修正ではなく抵抗値の方を変化させます。
●増強
HeroQuest のコンテストにおいて、あるアビリティを使って別のアビリティの成功率を上昇させることができます。 これを増強(Augment)といいます。 増強は独立した単純コンテストを行って、 その勝利レベルにより対象のアビリティに以下の表のようなボーナスを得ることができます。
勝利レベル | ボーナス |
---|---|
完全勝利 | +W |
大勝利 | +9 |
通常勝利 | +6 |
ぎりぎり勝利 | +3 |
引き分け | 0 |
ぎりぎり敗北 | 0 |
通常敗北 | 0 |
大敗北 | 0 |
完全敗北 | -3 |
ナラティブな遊び方において増強も演出手段の一つです。 このため論理的に可能な増強全てが許されるわけではなく、 物語的に意味があるもののみが許可されます。 増強を行うためには以下のいずれかの条件(できれば複数)を満たす必要があります。
新鮮(fresh): 目新しい手段で読者に驚きを与えるような増強の使い方。 最近使った増強を繰り返すような退屈なことは認められません。
照明(illuminate): そのキャラクターやキャラクター間の関係性に照明をあてて、 読者にキャラクターの何かを明らかにしたり特徴を認識させる増強の使い方。 既にわかりきっていることはアビリティや抵抗値に含まれているものと考えます。
緊張(suspense): その増強を行うのに何らかのリスクをともない、 それによって物語の緊張感を高めその増強の成否に参加者全員が関心を持つような使い方。
感情(emotinal): その増強により全員が興奮したり、 心から笑ったり、 同情心を共有したりなどの何らかの感情的な反応を引き出すことができる使い方。
ナラティブRPGである HeroQuest では勝率を上げるためではなく、 物語を面白くするために増強を使います。 退屈な増強のために無駄な時間を使わないようにしてください。 原則として一つのコンテストにつき一回しかアビリティの増強は試みることができません。 ただしナレーターが指示して行う増強にはこの制限はありません。 また増強のために増強を行うような連鎖は許されません。
●プロット増強
冒険においてプロット上の障害を克服することにより得られる特別な増強をプロット増強(Plot Augment)といいます。 通常の増強と違ってそのサブシナリオをクリアするためには複数のコンテストで勝利する必要があるかもしれませんし、 場合によってはコンテスト全く無しで賢いロールプレイの結果としてプロット増強が与えられるかもしれません。
このようなシナリオ上の障害を克服することにより後の冒険において +3, +6, +9, +W のいずれかのプロット増強を得ることができます。 プロットの内容によっては一人ではなく複数のキャラクターのアビリティに増強を得ることができる場合もあります。 通常の増強と違ってプロット増強は同時に複数を獲得することができますし、 通常の増強と重ねることもできます。
これはゲームブックやコンピューターゲームにおけるフラグ立てによるボーナスと同じようなものだと考えると判り易いかもしれません。 以前に適切な冒険を行ってフラグを立てておくことにより後のコンテストで有利な修正を得るというものです。 ドラゴンを倒しに行く前に寄り道をして弱点を調べたりドラゴンスレイヤーを入手したりすれば良いというわけです。
●抵抗値の決め方
コンテストにおいて相手側の目標値となる数値を抵抗値(Resistance)といいます。 HeroQuest ではシナリオであらかじめ抵抗値を決めておくことはしません。 コンテストごとにその状況に合わせてナレーターがその値を決めます。
基本的な考えとして、その状況における成功および失敗の可能性にもとづいて難易度を決めます。 ただしここでいう可能性はシミューレション的な意味の可能性ではなく、 ナレーターの物語的な直感によります。 これまでの流れで物語的感覚で主人公が失敗しそうならば高い難易度を、 成功が予想されるならば低い難易度を設定します。 どうしてその抵抗値になるのかの具体的な理由は後付けで決めて構いません。
直感で決めるといっても馴れていないナレーターには難しいかもしれません。 そのため以下に紹介するようないくつか指針があります。 あくまで指針なので直感と指針が矛盾するようならば直感の方を優先してください。
●抵抗の基本値
まず以下の表を使ってセッションの回数から基本となる抵抗値を決めます。
セッション回数 | 基本抵抗値 | 増強抵抗値 |
---|---|---|
1〜2 | 14 | 14 |
3〜4 | 15 | 14 |
5〜6 | 16 | 15 |
7〜8 | 17 | 15 |
9〜10 | 18 | 16 |
11〜12 | 19 | 16 |
13〜14 | 20 | 17 |
15〜16 | 1W | 17 |
17〜18 | 2W | 18 |
この数値がそのセッションでの平均的な難易度になります。 この表はセッション回数が進んでキャラクターが成長するとコンテストの難易度が上がって行くことを示しています。 主要なアビリティは2セッションごとに+1、 増強に使うような補助的なアビリティは4セッションごとに+1される前提になっています。 PCが強くなれば障害もそれに合わせて手強くなっていくということです。
●抵抗クラス
次にコンテストの抵抗を「ほとんど不可能」「とても高い」「高い」「中くらい」「低い」「とても低い」の6段階の抵抗クラスのどれに当るか決めます。 そして上記の基本値を以下の表に従って補正します。
抵抗クラス | 抵抗値 |
---|---|
ほとんど不可能 | 基本+W2 |
とても高い | 基本+9 |
高い | 基本+6 |
中くらい | 基本 |
低い | 基本-6 |
とても低い | 基本-W (最高でも6) |
この抵抗クラスはキャラクターの行動や物語の展開によって以下のような感じで決めます。
- 絶対とはいえないまでもほぼ成功しそうにないことならば「ほとんど不可能」とします
- シナリオの山場ならば「とても高い」または「高い」を選択します
- つまらない方法で面白い障害が台無しになりそうならば「とても高い」にします
- 成功するよりも失敗する方が面白いようならば「高い」や「とても高い」とします
- 失敗した時の展開があるけれどもそれほど面白くないなら「とても低い」にします
- 失敗した時に面白い物語がないないようならば、 そもそも自動成功にします
- 成功した時と失敗した時の両方の展開が同じくらい面白いようならば「中くらい」にします
●成功/失敗サイクル
ナラティブなゲームではプレイヤーの発想で物語が進むため、 あらかじめ難易度を決めておくことはできません。それで予想もしないような展開により難易度を決めるのが非常に難しいことが多々あります。 プレイヤーたちがいきなり「井戸を掘る」とか「古道具屋を探す」とか言い出した時、 その難易度はどうすべきでしょうか? 特に理由がなく展開が想定できなければ「中くらい」の難易度を選ぶのが基本ですが、 それではコンテストの難易度が「中くらい」ばかりになってしまいそうです。
この時に参考にするのが成功/失敗サイクルです。 多くの小説、 映画、 昔話、 神話などにおいて主人公たちは成功ばかりではなく何度も失敗します。 成功と失敗を交互に繰り返すことにより徐々に最終目標に近付いていく形態を取ります。 これを成功/失敗サイクル(Pass/Fail Cycle)と呼びます。 成功と失敗の連鎖が物語を盛り上げる基本です。
このメカニズムを難易度の決定に応用することができます。 過去2回の主要なコンテストの勝敗を以下の表で参照して次のコンテストの難易度を決めます。 その際に完全勝利と大勝利は勝利2回分、 完全敗北と大敗北は敗北2回分として計算します。
過去2回の結果 | 次の抵抗値 |
---|---|
3〜4敗北 | とても低い(基本-W) |
2敗北 | 低い(基本-6) |
2引き分け | 低い(基本-6) |
1勝1敗 | 中くらい(基本) |
2勝0敗 | 高い(基本+6) |
3〜4勝 | とても高い(基本+9) |
これにより平板で同じような難易度が続くことなく物語にリズムを与えることができます。 覚えておいて欲しいのはこの成功/失敗サイクルというのは他の方法で抵抗値を決めることができない時に使用する予備の方法であるということです。 ナレーターの直感や物語の流れにより抵抗値が決まる場合はそちらを優先してください。
《続く》
今回はコンテストの要である修正値と抵抗値の決め方について説明しました。 通常のRPGと考え方が大きく違うことが伝わったでしょうか? 次回は残った成長に関するルールを紹介する予定です。
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