2015年6月15日

グローランサのエレメント対応

最近はグローランサ関係では大きなニュースがなくて更新をしていませんが、 そろそろ HeroQuest GloranthaKing of Sartar の実物が届くのではないかと心待ちにしているところです。 今週末にも 13th Age Glorantha の2回目の Playtest packet が支援者向けに公開されるということなので、 こちらも非常に楽しみにしています。

いや Greg Stafford と Sandy Petersen が Chaosium の CEO と VP として復帰という大ニュースがあったばかりなのですが、 これが今後にどう影響してくるのは不透明なので何を書いていいのか分らなくて。

最近のニュースとは関係ありませんがグローランサのエレメントの対応について書きたいと思います。

グローランサの元素(Element)にはそれぞれに対応する武器や金属や色などがあって、 そのエレメントに関連するカルトの司祭たちばそれを使用することを好むという設定があります。  ただこの対応は一定ではなくて資料によって微妙に異なっているのが困りものです。  昨日 twitter でも話題になったので手元の資料を元に過去からの変遷をまとめてみました。

●エレメント 対応の変遷

RuneQuest 1st ed. (1978) p.112
元素 色 金属武器
棍棒/岩
アルミ鞭/殻竿
爬虫類
火/天空槍/矢
哺乳類
--
エレメントの対応として初出と思われるルーンクエストの第1版のルールブックでは上記のような対応になっていました。 この頃には(当然ですが)まだ Cult of Prax すら発売されていなくて、カルトといえばサンプルとして記載されいるオーランス、 カイガー・リトール、 黒い牙の兄弟くらいだったのですが対応表はしっかり存在していました。


RuneQuest 2nd ed. (1979) p.101
元素 色 金属武器
棍棒/岩
アルミ鞭/殻竿
爬虫類
火/天空槍/矢
--
次のルーンクエスト第2版のものです。 第2版は第1版とほぼ同じ内容なのでこの表も全く同じと言いたところですが、 何故か「風(Air)」のルーンについて記載がありません。 「風」だけ書かない理由は思いあたりませんし何より第1版にあるのを削るのはおかしいので単に編集ミスの類いだと思われますが、 刷が増えてもボックスセットになっても訂正されていません。


Wyrm’s Footnote Vol.9 (1980) p.18
元素 色 金属武器精霊感覚
棍棒/岩シェイド聴覚
アルミ鞭/殻竿ウンディーネ味覚
爬虫類ノーム触覚
火/天空槍/矢サラマンダー視覚
オレンジ青銅哺乳類シルフ嗅覚
--ルーン平衡感覚
Chaosium社のサポート誌である Wyrm’s Footnote の第9号に記載された対応表です。 「風」のエレメントについての記述が復活しました。 が、色がオレンジに金属が青銅に変更になっています。


Gods of Glorantha (1985) Cult Book p.21
元素 色 金属武器精霊
棍棒/メイス/岩シェイド
水銀鞭/網/殻竿/三叉槍ウンディーネ
爬虫類ノーム
火/天空サラマンダー
剣/弓哺乳類シルフ
----ルーン
時期は飛んでルーンクエストの第3版時代ですが、第3版は汎用ルールになったのでエレメントの対応は「グローランサの神々」のカルトブックに記載されました。「風」の色が白に戻りました。「水」の金属がアルミから水銀に変わっています。 他に注目すべきは銀が「月」の金属から「風」の金属に変更されている点です。 「風」の武器に弓があるのは神話的におかしいので編集ミスですかね?


Elder Secrets of Glorantha (1988) p.35
元素金属神霊
 闇 黒/灰ナカーラ
水銀スラマク
ガータ
天空ズレサス(ダーゼイター)
アルミロウドリル
--ユーレリア
--青銅ウーマス
イーヒルム(イェルム)
第3版のサプリメント「古の秘密」に記載されたグローランサの金属についての記述からまとめたものです。一部は第1期のセシュネラの魔道師が書いた文献に初期の神知者が註釈を付けたという体裁になっています。 項目は分れていますがアルミと水銀は同じ金属と説明されています。 ここでの色は特殊でエレメントの直接の色ではなく金属の色なので注意が必要です。 アルミは赤色で水銀が緑色とか色々と変な感じですが。 「地/銅」と「天/錫」の合金が「風/青銅」であるという理論が導入されています。


HeroWars (2000) p.223
  元素    金属  
アルミ/水銀
光/火
光/天空
青銅
また次期が飛んで HeroWars 時代ですが、 エレメントと金属の対応しか記載がないので色とかは不明です。 火の金属と天空の金属が別になって天と地の合金が青銅という理論が維持されています。


HeroQuest (2003) p.78
  元素    金属  
アルミ/水銀
天空
真鍮
そして HeroQuest の第1版ですが、 こちらも金属についての説明しかありません。 HeroWars と同じに見えて何故か「風」の金属が真鍮(Brass)に変更になっています。 天と地の合金を作っても風になりません。どうしてこうなった(真鍮は銅と亜鉛の合金)。


Masters of Luck and Death (2004) p.66
元素 色 金属武器方角植物楽器感覚肉体
棍棒太鼓聴覚脂肪
水銀葦笛味覚
爬虫類穀草触覚
竪琴視覚
オレンジ西哺乳類角笛嗅覚筋肉
不明----平衡感覚?皮膚
HeroQuest のサプリメント Master of Luck and Death に記載されたもので、 第1期のペローリアの神秘家 Hepherones の哲学による対応表です。 彼の思想はナイサロール哲学や、 ベリンターの思想のもとになったと説明されています。 「風」に対応する色がオレンジ(WF9と同じ)とか、闇の色が紫というあたりが珍しい感じです。 第1期のものなので赤い月は存在せず不明となっていますが種として「人」が当てられているのも特徴的です。


The Guide to Glorantha (2014) p.16, p.148
  元素    金属    色  
 アルミ/水銀 
天空--
青銅
古の神々--
--
こうなると決定版百科事典であるところの Guide to Glorantha でどのように記載されているかが気になるところですが、 金属以外についての実質的な記載は全くありません。 敢えてエレメントのルーンの説明おける「ザブールの印(Zzabur's Sigil)」と呼ばれる図形で各エレメントが何色に塗られているかを拾ったのが上記の色です。 特に意味なく適当に塗り分けたようにも見えますが、この色は Jeff が個別に指定したらしいので示唆的なものかもしれません。 「古の秘密」の金属の色と微妙に対応している感じ。


HeroQuest Glorantha (2015) p.14-15, p.217
 元素  金属 武器精霊
棍棒/岩デホーリ
水銀鞭/殻竿/網/三叉槍ヴェレドシ
タロシ
槍/弓アーザニ
青銅コラーティ
最新版、発売されたばかりの HeroQuest Glorantha のルーンの説明と、精霊についての記述からまとめたものです。 真鍮はなかったことになったようで、とても無難な感じです。

●まとめ

結局このエレメントの対応も、統一神話と同じく、神知者が各地の伝承を収集したものやヒーロークエストによって得た知識をまとめたもの。さらには各地の神話や伝承が神知者の理論の影響を受けて変容したものという扱いのようですので、唯一の正解というものは存在せず、多くの人に受け入れられている共通解ではあるものの絶対ではなく地域や時代や集団によって例外が多数あるということなのでしょう。

将来のはなしになりますが13th Age Glorantha のキックスターターで募集のあった Glorantha Source Book にはエレメントについて記述もあるらしいので、 この対応の最新版が記載されるか気になるところです。